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電力自由化と左翼運動

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原発をなくす早道は消費者が原発電力を使うのをやめることだ。そのためには原発に依存しない電力会社を選べばいい。4月から電力の小売りが自由化される今は絶好の機会と言える。実際にグリーンピースは「電力会社を選べ」というようなキャンペーンをやっている。
ところが日本の左翼からはそうした声は聞こえない。彼らは安倍政権を打倒することに夢中だ。環境よりも敵を打倒することの方が重要なのだろう。
それも当然のことかもしれない。「原発反対」は社会主義という大義を失った左翼勢力の最後の砦の一つだ。電力が自由に選べるということになれば、結集する動機がなくなってしまう。悪役がいなくなって「興行的」に困るのは左翼団体なのだ。
彼らにとってもう一つ不都合なことがある。「電気を選べる」といっても、消費者は「いくら節約ができるか」に夢中で中身には関心を寄せない。左翼勢力は「市民の味方」を標榜しているのだが、実際の市民は生産地が核汚染の脅威にさらされても他人事にしか思っていない。福島の除染ができないと分かっても「ああ、かわいそうに」というだけだ。左翼運動の参加者は身近にいる人たちを説得すべきなのだが、意見の合う仲間同士で行動する方が心地よいのだろう。左翼勢力としては市民が自発的に選んでいるのではなく政府が押しつけていることにしたいのではないだろうか。
民主党に至っては原発そのものに反対できない立場にある。民主党政権が反原発政策に舵を切った時、労働組合の幹部は「報復してやる」というような意味のことを言った。民主党議員にとって東京電力は支持基盤の一つなのである。
もっとも経済的には原発は淘汰の方向に向かいそうだ。東京電力は高コスト体質でこれまで営業努力を行ったことがない。だから東京電力が価格競争力を持つことはないだろう。確かに原発は「効率的な」電源なのだが、初期費用が高い。原発建設のコストばかりでなく、政治的に地元を懐柔するのにも資金が必要だ。とても民間会社が手を出せるような産業ではない。しばらくの間、民間会社が原発に依存するようなことは考えにくい。
もっとも、東京電力などの旧地域会社のシェアが奪われると、なりふり構わぬ値下げ競争が始まるかもしれない。すなわちコストの高い火力発電を原子力発電に置き換えるという動きだ。東電などが「原子力は安い電気だ」と売り出せば多くの消費者が旧地域会社になびくだろう。そうなると反原発団体は「安い電気の購入を妨害する人たち」というレッテルを貼られるかもしれない。
さらに中東情勢が緊迫すれば石油価格が高騰することもあり得る。すると原発への期待はますます高まるだろう。そんな中「(核爆弾を持っていても)北朝鮮は脅威にならない」とか「高くても原発依存は止めるべきだ」などと言い続ければ、野党勢力は総崩れとなるだろう。
左翼性力が市民から信頼されるためには、堅実な行動を通して環境に優しい電力を推進すべきだ。左翼流に言えばテレビは国民を「洗脳」しようとしている。「料金が安くなる」「サービスが良くなる」という点は熱心に伝えるが、電源構成にはできるだけ触れないようにしている。NHKは安倍チャンネルだなどと言っている暇があったら、電源構成についても選択基準にするようにプレッシャーをかけるべきではないだろうか。