一説によると7月は12万年ぶりの暑い夏になったそうだ。日本も含め北半球では気象災害クラスの温暖化が進んでいる。アントニオ・グテーレス事務総長が「地球は沸騰化の時代に入った」と宣言した。アントニオ・グテーレス氏は社会主義インターナショナルの議長を務めた経験もあるリベラル左派である。だが中進国は「自分達も成功したい」と考えており足元のヨーロッパでも右傾化が進む。
どうやら世界各地で高温が定着しているらしい。CNNは各地の異常気象を伝えつつ2023年7月は12万年ぶりの暑さになることが確実になったと伝えている。樹木の年輪、サンゴ礁、深海の堆積物などで推計ができるのだそうだ。
グレーテス事務総長は「沸騰化の時代に入った」と表現し、世界に対してすぐさま行動するように呼びかけた。BBCの記事はこの沸騰化について「化石燃料の使い過ぎによって地球温暖化が進んでいる」と解説している。つまり、今地球温暖化を食い止めなければ、今後夏の災害級の暑さは定着してしまうと言っている。
もちろんこの話題は日本でも報道されている。だが、ヨーロッパの報道とは大きな違いがある。
日本では地球温暖化の問題はSDGsの一環として取り上げられる。一方で気象の話は気象の話として分けて取り扱われることが多い。地球温暖化の問題は「今世界ではSDGsが流行っているから我々もそれに乗らなければならない」とお天気そのものとは別枠で語られる傾向がある。あくまでもファッションの領域なのだ。
一方で、気象現象は「エルニーニョ現象」と「インド洋の正のダイポールモード現象」が同時に発生しており、高気圧が二枚重ねになっているのが暑さの原因であるなどと解説される。その後に熊谷や八王子などお馴染みの町に中継が出て「いやあこの暑さはいつまで続くのでしょうねえ」などと気象予報士が解説するという構成になっているものが多い。
台風や夏の暑さについてあれこれ言ってみても自然災害なので仕方がないという気持ちが強いのだろう。
抗議運動に対する認識の違いもある。
スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが始めたデモが日本にも伝播すると、グレタ・トゥンベリさんや同調者を批判する人たちが大勢現れた。同調圧力が強い日本人は突出した自己主張をする人たちを本質的に嫌いバッシングする傾向にある。2019年には盛んに「なぜトゥンベリさんは嫌われるのか?」という考察がなされた。現状変更を迫るものを嫌い潰してしまおうとするムラ的な防衛本能が働くのだろう。
ヨーロッパの環境運動も一部過激化していった。こうした過激な運動はエコテロリズムと言われているそうだ。
グテーレス事務総長は社会主義インターナショナルの議長を務めていた。つまり元々地球温暖化などのリベラル色の強い主張を展開する人だ。だが、実際の反対運動は一部過激化している。反移民感情が高まりリベラル色が後退しているヨーロッパにおける環境運動は今後厳しい状況に置かれるかもしれない。
いずれにせよ、気候災害は先進国であろうが発展途上国であろうが平等に襲いかかる。また保守主義者であろうがリベラルであろうが暑さの前では平等だ。
新興国では元々民主主義が不安定だったところで気象災害が起こると農地と水の奪い合いに発展し政情不安を誘発する。気象災害と政情不安が重なると難民が発生する。世界銀行のレポートによると2050年までに2億人以上の気候難民が生まれるそうである。
難民がヨーロッパに押し寄せると右派の台頭につながる。右派の台頭は気象災害に対する対応を呼びかける左派を抑制する。すると気象災害を防ぐための地球温暖化の取り組みは阻害され、ますます気象災害が増え、難民が増え……ということになる。
この問題を「地球温暖化」と呼ぶか「沸騰化」と呼ぶかは別にして、21世紀になっても人類は合理的に問題を解決する方法を見つけることができていない。むしろ混乱が拡大し悪いサイクルが生まれていると言えるのかもしれない。