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ハンター・バイデン氏の司法取引不成立は共和党の正当性を証明しているとCNNのコラムが主張

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日本でアメリカの外交政策に疑問を呈すると「この人は反米・反体制派だ」と思われかねない。だがアメリカの政治を知っている人はそうは思わない。その時々の空気の変化を感じるからである。今回紹介するのはハンター・バイデン氏の司法取引の不成立問題である。アメリカの政治が本質的に持っているダブルスタンダードの事例と言って良いのだが、アメリカでも「ダブルスタンダードを容認すべきではないのではないか」という意見が聞かれるようになった。つまり今のアメリカの国際戦略に闇雲に追随しても梯子を外される危険がある。

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CNNが「バイデン氏次男の司法取引不成立、共和党の正当性を証明」というコラムを出している。極めて興味深い。CNNはもともと民主党支持のメディアなのに「結果的に共和党が正しかったのですね」と言っているからだ。媒体としての変化を感じる。

内容はざっと次の通りだ。

ハンター・バイデン氏の司法取引が成立しなかった。東部デラウェア州連邦地裁のマリエレン・ノレイカ判事が司法取引に疑問を呈したからである。この司法取引によって司法がトランプ前大統領にことさらに厳しくハンター・バイデン氏に甘いとと考える人は多かった。このためトランプ支持者たちはトランプ前大統領が政治的に迫害すると考える傾向がある。だからトランプ氏は共和党の有力な大統領候補であり続けるのだ。

つまりこのコラムの書き手はトランプ支持者ではないようだ。むしろトランプ氏を有力位な候補者にしないためにハンター・バイデン氏を公平に罰するべきだと考えている可能性がある。コラムは「ハンター氏はトランプ氏の生き残りを可能にしている理由の一つ」とまで言っている。

別のコラムはもっと直裁的にこれについて懸念を表明している。共和党はこのケースを「煙幕(smoke screen)」として利用するだろうと言っている。つまり自分達の不都合を覆い隠すためにことさらにこの司法取引の不成立を利用するのではというのだ。この司法取引の心理は単なる「 rubber stamp court hearing(ゴム印法廷聴取=つまり単に決済だけを行う場)」だったが政治的大惨事として利用されようとしているというのだ。

How a new twist in the Hunter Biden case and Trump’s possible third indictment are defining the 2024 campaign

特に「外国のロビー活動」が司法取引で保護されるかどうかは政治的に重要なテーマになっている。下院共和党では報復的なバイデン大統領に対する弾劾の動きがある。仮にハンター・バイデン氏がこの件によって有罪判決を受ければ「やはりバイデン大統領もこれに関与していたのではないか」と攻撃の対象になりかねない。さらに「本来有罪になるものをあってはならない司法取引で隠蔽しようとした」ことになってしまう。バイデン大統領は選挙キャンペーンが始まる前にこの問題をなんとかしておきたかったはずである。つまりハンター・バイデン氏は政治家ではないものの大統領選挙において極めて重要な「要素」になっている。

これまでCNNは共和党に対して批判的な論調で知られてきた。だがこの民主党寄りの姿勢は視聴者の離反を招いた。社長のクリス・リヒト氏は政治的ポジションを修正しトランプ氏のタウンホールミーティングを中継する。ただこれは「トランプ氏の主張を一方的に垂れ流している」などと批判され、リヒト氏は親会社から更迭されることになってしまった。

今回のコラムは民主党の立場に立ちつつ(正確には反トランプだが)ハンター・バイデン氏の処分に関しては民主党からも公正な扱いを求める人たちがいると仄めかしている。強烈なトランプ大統領の元で二極化した政治言論を正常化しないとアメリカは前に進めないという苛立ちがあるのだろう。一方で共和党陣営がこの問題で騒ぎ立てるのも面白くない。

ではこの一連のニュースは日本とどのような関係があるのだろうか。バイデン大統領は敵を設定して徹底的に罵ることで自分達の行き詰まりを見えなくするという戦略をとる。この戦略は前回の大統領選挙では極めて有効だった。「やはりこれくらいの人でないとトランプ氏には対抗できない」とみなされたからである。

しかしバイデン大統領はやりすぎた。結果的に共和党は反バイデンで結束し大統領選挙はおそらく泥沼化するだろう。

国際政治上の構造も極めてよく似ている。バイデン大統領の挑発的な姿勢は結果的にロシアを追い詰めており今でも追い詰めている。また現在は日本と韓国を巻き込んで台湾を支援するという方針を打ち出している。中国を敵視することによって極東でのプレゼンスを維持しようとしている。閣僚の中には中国との関係を維持しようとする者がいるがバイデン氏は「習近平氏を独裁者と言って何が悪い」という態度である。

おそらく日本の外務省はこの姿勢に「是々非々」で対応するのだろう。問題はなんでも聞きすぎてしまう「聞く力過剰症候群」の岸田総理である。8月にキャンプデービッドで日米韓首脳会談が行われる。異例の厚遇とされている。既にアメリカからは「台湾有事の際に自衛隊は具体的に何をしてくれるのかが聞きたい」とリクエストされている。防衛費増額についても確実な履行を求められるだろう。どれも国論を二分するような厄介なテーマだ。外務省は答えを引き伸ばしているようだがトップが口を滑らせればおそらく日本は台湾有事に巻き込まれることになるだろう。

既にアメリカでは身内から「敵を設定し二重基準で煙幕を張る手法はおかしいのではないか?」という声が出はじめているのだが「空気」として伝わるだけでニュース記事になるわけではない。

バイデン大統領の選挙戦略にお付き合いしても後で梯子を外されるだけに終わる可能性は高いが変化にはなかなか気が付きにくいのである。

アメリカの政治の「空気の変化」はなかなか日本には伝わりにくい。だから「安易にアメリカの国際戦略に追随しないほうがいいのではないか?」という主張は単に「反米」とみなされてしまうのだろうが何かが変わり始めていることは知っておいても良いと思う。

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