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ニジェールのクーデターが成功しチアニ将軍が国家元首宣言

ニジェールのクーデターが成功しチアに将軍が新しい国家元首就任を宣言した。ワグネルのプリゴジン氏が歓迎の意向を示しているという報道がありロシアの旗を掲げて歓迎している市民もいる。ではロシアの意向でクーデターがおこなわれたのか?ということになるのだが、これがどうもはっきりしない。ロシア政府は表向きクーデターを避難している。またチアニ将軍がロシアのプロキシー(傀儡)であるという報道もない

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ニジェールでクーデターが起きた。当初は大統領を警護する一部の人たちの反乱だと思われていたのだが軍が同調しクーデターは成功してしまった。ワグネルのプリゴジン氏が歓迎の意向を表明しロシアの旗を掲げる市民もいる。つまり、背景にロシアの影を感じる。

ではロシアがクーデターを起こしたのか?ということになる。どうやらそんなに単純なものではないようだ。2011年に就任したイスフ大統領の元で大統領警護部隊の隊長を務めていたチアニ将軍が新しい軍事政権のリーダーになった。だがこのチアニ将軍がロシアのプロキシー(傀儡)であるというような話は出てきていない。

バズム大統領はイスフ前大統領の元で大統領警護隊隊長を務めていたチアニ将軍を解任しようとしていたようだとアルジャジーラは書いている。ただしこれは憶測であり証拠は確認されていない。ニジェールのように政情が不安な国では軍の他に大統領の親衛部隊が置かれている。大統領が政権基盤を確実なものにするために「自分に近い人たちに入れ替えたい」と考えるのは当然のことだ。だがそのような部隊を新しく作ることは難しい。そこで居抜きで大統領警護部隊を温存したのだろう。部下が2,000人ほどいるということである。現地ではチアニ将軍が私利私欲のためにクーデターを引き起こしたという噂が立っているそうだ。

ただ、これだとチアニ将軍のクーデターが瞬く間に軍に指示された事情が説明できない。おそらくこの機をとらえて何らかの工作をした人たちがいるのではないかと思う。

フランスが撤退を始めてから西アフリカの政情は極めて不安定なものになっている。アルジャジーラによるとギニアで1件、ブルキナファソとマリでそれぞれ2件のクーデターが起きており、今回のニジェールのクーデターを含めると6件目のクーデターになった。また、ニジェールにとっては5回目のクーデターなのだそうだ。

この様子から見ると、ロシアがわざわざ仕掛けてクーデターを起こしているようには見えない。むしろ兆候を見逃さずに反乱勢力に支援を与えることによってロシアの影響力を拡大しているように見える。自由主義陣営の支援はお金を送りあとは遠くから眺めると言ったものが多い。ニジェールの人々はこうした支援が中間搾取され自分達の手元には届かないと感じている。

こうした間接支援がその場にいて機会を窺っている人たちに負けてしまうのは致し方ない。

BBCによると治安維持に不安を訴える市民たちが与党の本部に集まり怪気炎をあげている。与党本部には火がつけられた。中にはロシア国旗を掲げた人たちもいるそうだ。旧宗主国フランスはニジェールの市民を豊かにしなかったと考える人が代替勢力としてのロシアに期待を寄せている様子はわかる。

アフリカの首脳らはこのクーデターを非難している。首脳たちを集めて会合を行ったプーチン大統領も形式的にはこのクーデターを非難している。だが現実的にはロシア国旗を掲げた市民たちがいる。政府とは別の立場で動くことができる民間軍事会社がプーチン氏にとってどんなに便利な存在なのかがよくわかる。

テレグラムでは盛んに「これを好機にしてロシアとワグネルがニジェールに入り込むべきだ」と主張する親プーチン派のコメンテータたちの主張が流れているそうだ。ワグネルがモスクワに進軍したことは彼らの中ではすでに終わった話になっているようだ。

KGB仕込みのプーチン大統領の手法はアフリカでは成功しているといえる。実際に人を送り込んで機会を伺い権力闘争につけこんで勢力圏を拡大してゆくというやり方だ。プーチン大統領は自由主義諸国の作法が理解できなかった。だが自由主義社会の国民はクーデターによってしか政権が変わらない国の作法が理解できない。

アフリカとロシアの関係は明らかに西側のそれとは異なる。ロシアは植民地賠償を通じてアフリカと協力すると宣言した。西側を敵視し新しい枠組みを作りたいという気持ちがあるのだろう。

一方でアフリカ側はロシアの食糧支援には反発し、ロシアが穀物合意に復帰し停戦を進めることを強く求めている。言いたいことは言わせてもらうというアフリカの強い姿勢が伺える。

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