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宮沢税制調査会会長が「サラリーマン増税など考えていない」と釈明するが説得力は皆無

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自民党宮沢税制調査会会長が「サラリーマン増税など考えていない」と記者たちに釈明した。非常に問題の多い発言だった。背景には岸田総理の説明の不在がある。代わりに土居丈朗さんが「なぜ今回の件はサラリーマン増税と言えないのか」について説明している。土居さんは一生懸命に政府を援護している。おそらく良かれと思ってなのだろうが、これを聞くとますます不安になる。

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宮沢氏によると、首相は面会時に「自分が全く考えていない、サラリーマン増税うんぬんといったような一部報道がある」と指摘。宮沢氏は「個別の税制は党の税調で決めるが、そういう議論をしたことは一度もない」などと説明した。

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問題点は二つある。一つは「サラリーマン増税」のきっかけになった答申を受け取ったのは岸田総理である。NHKにも答申を掲げて見せている。にもかかわらず「そんな議論があるのか?」と聞いている。これが正しい会話だとすると結論は一つだ。

  • 岸田総理は自分が受け取ったレポートの内容を理解していない。

次に宮沢さんは説明として「自分が考えたことが最終方針になる」と言っている。具体的には自民党税制調査会の決定が最終決定になるのでこれは間違いではない。「ギョーカイ」では当たり前のこととされている。政治を知っている人は「何だそんなことも知らないのか」というだろう。

だがこれは実はインナーと呼ばれる一部の人たちが非公式で実質的に国会議論も政府へのアドバイスも無視して最終方針を通すということを意味するに過ぎない。

自民党税制調査会(宮沢洋一会長)は13日、党本部で非公式幹部会(インナー)を開催した。

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本来なら岸田総理が問題を整理し説明すべきだが「そもそも頭身の中身を理解していない」とすればそれは期待できそうにない。炎上しそうな案件から距離を置き「そんな話があるのですか?」と言っているだけのような気もするがここでは内容を理解していなかったようだということにしておこう。

偶然識者の声を見つけた。土居丈朗さんの解説である。一生懸命に政府を援護しているので「話は聞いてあげよう」と読んでみることにした。

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土居さんは「税制について理解できない人が分かりやすく想起できるように具体例を挙げただけ」と言っている。どうせ国民には難しいことはわからないだろうから具体的に教えてやろうといっている。記事にはこう書かれている。

しかし、それは当答申が税制の知識がなくても読めるようにするために記したものであって、「増税」すべきだから列挙したのではない。

土居さんは「支出を削るか負担を増やすしか選択肢はない」と言っている。この点に問題はない。極めて真っ当な議論ではある。

増税を避けたいなら、国民にとって優先度の低い歳出を削るしかない。しかし、削減対象となる歳出が多くは見つからないなら、何らかの増税は甘受せざるをえない。

高齢者を中心に現状維持バイアスが強いのだから当然「何らかの増税を甘受せざるを得ない」ということになる。高齢者から取り立てるわけにもいかないのだから当然現役層の負担は増える。つまり支出を削らないなら「将来は通勤手当からも税金を取りますよ」と分かりやすく解説しているのですと言っている。何の慰めにもならない。

これを聞いて「ああ安心だ」という人がいるのだろうかと却って心配になる。

自民党は高齢者の多い地方で主に支持されていると仮定すると、おそらく歳出削減の圧力は強まらないだろうと合理的に類推でできる。となると国民が今の政権を選択する以上は将来的に「具体的に分かりやすく書いた」ことが実施される可能性は極めて高いということになる。

岸田総理は増税を訴える令和臨調でも噛み合わない会話を見せていた。

ポピュリズムに陥って仕事(増税の推進)を怠けていると主張する共同代表に対して噛み合わない会話で応答していた。今回の政府税調の答申も総理大臣に負担増を迫る内容になってた。つまり自分がセッティングした装置によって増税を迫れられているが選挙を目前に控えてそれを言い出せないでいるという状態だ。

国民にも「今の医療福祉水準を維持すべきだ」とか「それでは生活が立ち行かなくなる」などそれぞれ意見があるのだろう。納得ゆくまで議論して最後は総理が責任を持って決めればいいと思う。それが民主主義だ。

だが岸田総理は「え、そんなハナシがあるんですか?」と他人事を決め込み勝手にこれらの板挟みになっているといえる。自らが仕掛けたものに囚われジタバタともがいているようにどうしても見えてしまうのである。

実に不思議な光景だ。

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