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消費税議論 – これはヤバい

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軽減税率の議論がおかしい。財政健全化の議論をしているはずなのだが、いつのまにか「次の選挙のためにいかにバラまくか」という話に変わりつつある。増税議論なので税金を増えるはずなのだが、軽減税率なので財源が必要だという話になった。しかし、財源をどうしたらよいかよく分からないので棚上げにし(その前に選挙があるので決められない)1年の間に「財務省に決めてもらおう」という話でまとまりつつあるようだ。
安倍政権の歴史は国家収奪の歴史だと言ってよい。政権はまず、円安に誘導し、輸出企業への所得移転を行った。さらに海外への投資を行っている。最近ではインドに1.5兆円の投資枠を設定したばかりである。こうした投資や政策が悪いというわけではない。均衡を崩せば日本企業に仕事が回るからだ。しかしこうした政策が正当化されるのは、企業から国民に資金が再還流するときだけだ。しかし、企業は収益を貯め込んでいて、国民に還流するつもりはないらしい。
一方で、政府が積極的に財政出動すると政府の借金は膨らむ。それを「孫子の代までの借金だ」と、いかにも国民が借金したかのように装い、国民からさらにむしり取ろうとしているのが今回の消費税増税だ。そればかりか、増税に協力しなければ福祉の金を削るぞと恫喝まで始めた。
しかしながら、一連の消費税議論から感じる「ヤバさ」は、安倍政権の経済政策が間違っているというような類いの話ではない。例え間違った政策でもなんらかの意志があってのものならまだマシだといえる。
ところが、自民党の政治家には解決策を提示する意志がなさそうだ。つまり、政治家は解決策を提示するつもりがないらしいのだ。解決策を考えるのは日銀や財務省だ。これが一つ目の「ヤバさ」である。
二回目の安倍政権発足当時、政治家は「ソリューションは日銀に考えさせよう」と考えていた。そして今回は「財務省に丸投げ」した。政治家は、自分のお金(本来は国民から預かっているだけだがこう錯覚している)をいかに気前よく使うことだと考えている。選挙に勝ちさえすれば国民の税金の所有権が得られると考えているようなのだ。
バラマキを国際的なスケールで実行しているのが安倍首相だ。
二つ目の「ヤバさ」は安倍首相のリーダーシップの欠如だ。どうやら自分が何をしているのかよく分かっていなかったらしい。当初は党の幹部に対して「軽減税率は財源のメドが立つ枠内で」と指示していたのだが、官邸(これは、安倍首相ではなく菅官房長官のことのようだ)がひっくり返したとされている。
財務省からのレクチャーを受け「このままでは財政が破綻する」と言われ「ああ、そうなのか」と思ったらしい。しかし、官邸側から「このままでは公明党に選挙協力して貰えなくなる」と言われて「ああ、そうなのか」と思いなおした。そこで何か解決策を提示すればよかったのだろうが、そのままフリーズしてしまった。
この「官邸主導」の結果、党の税調の幹部が「もうどうにでもなれ」と言ったという話が伝わっている。つまり、やる気のあった人までやる気をなくしてしまったようだ。
三番目の「ヤバさ」は代替案の欠如だ。これは少し説明が必要かもしれない。野党は国民の支持がないと感じており、与党の間違いを証明しようと躍起になっている。その一方で、政権交代はまだまだ先だと感じているのではないかと思われる。そのため「今日、政権を取ったらどうしよう」という計画を立てられず、立てる意欲もわかないのだ。
与党政権は明日崩れるわけではない。もう崩れているのだ。最悪の場合財政破綻してから政権を委譲される可能性もある。だから、もう相手の間違いを指摘するフェイズにはなく、代替案を提示する必要がある。代替案が出ないのは、野党が「アイディアは官僚から得よう」と考えているからかもしれない。自称「政権を狙える」野党は政権に就けばバラマキ資金も得られるし、官僚の知恵を無料で使い倒せると考えているフシがある。
この図式は第二次世界大戦に突入する前の日本に似ているのではないだろうか。戦争突入期の国会議員には問題を解決する能力も意欲もなかった。にも関わらず「二大政党」の間で政争を繰り返した。そんな時に「知恵」を持っていて実際に行動したのが軍部だったのだが、本部から遠く離れた地で暴走が始まり、最終的に国民を巻き込んで破綻した。
この構図で軍部にあたるのが、日銀や財務省にあたる。もしくは年金を運営している機構などだ。大変優秀な人たちが集っているので問題が起きてもなんとかするだろう。裏を返せば彼らがどうしようもなくなってしまった時には誰も防げないような問題が露呈するのではないかと思われる。