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スペインの総選挙は決着がつかず

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スペインで総選挙が行われた。当初、極右VOXが政権入りするのではないかと言われていたが、結果的に決着がつかなかった。まず今回勝利した国民党が組閣を行うがVOXを入れても過半数が取れない。その後第二党の左派勢力が組閣を試みそれでもうまくゆかなければ再選挙となりそうだ。

スペインは県を単位にした比例代表制をとっているため小選挙区制度よりも政権交代が起こりにくいようだ。だがフランコ政権の独裁を経験しているため極右に対する警戒心が強いのだそうだ。このため右派が大きく支持を伸ばすということがなかった。

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ドイツでは長年政権を担当してきたメルケル首相の陣営が負けた。フランスは格差が拡大しデモや暴動が頻発している。イタリアでは極右とされるメローニ政権が誕生した。スウェーデンでも左派が政権を失い右派政権ができた。イギリスではブレグジット後に経済が停滞しておりスナク政権が誕生した。オランダでも移民政策で合意ができずルッテ政権が崩壊した。このように西ヨーロッパの政治は常に何らかの混乱を抱えている。その中で比較的目立たなかったのがスペインである。左派政権でどちらかといえば進歩的で穏やかだという印象がある。だが、どうやらそうでもなかったようだ。

まず、左派が政権を失った理由について観察する。女性の権利拡大や安楽死の導入など進歩的な政策を推進し都市部では人気があったそうだが他の地域では反発されていた。CNNによれば一部の社会主義者ですら戸惑うほどだったという。

Far-right could enter government as Spain goes to the polls

時事通信も今回の争点は文化戦争だったとの識者の指摘を紹介している。つまりゆきすぎた改革が混乱を招きその揺り戻しが出たということになる。つまり進歩に対する揺り戻しだ。

間違ってはいけないのは、これはフランコ(総統)の復活ではないという点だ。VOXはかつての一党独裁を訴えているわけではない。「反フェミニズム」や「闘牛支持」を掲げるVOXが巻き起こしているのは、進歩主義者との衝突による「文化戦争」だ。

左派政権は自分達の進歩的な政策を実現するためにカタルーニャとバスクの分離勢力と閣外協力した。ところがこれが保守派を刺激する。しかしながらスペインにはフランコ独裁の過去がある。さらにEUに加盟することで暮らしが良くなったと感じる人が多い。このため「反EU」の声はあまり大きくない。だからイタリアのような極端な極右の台頭は起こらなかった。中央集権色の強いスペインと地方分権意識が強いイタリアの違いが現れたと言えるのかもしれない。

サンチェス首相は「敵陣営の準備が整わないうちに」総選挙を仕掛けた。当初は「これが裏目にでた」と言われていたのだが、結果的には負けを最低限に食い止めることができた。サンチェス首相には今のところ組閣の見込みはないが勝利宣言を出している。

選挙後のリアクションについてアルジャジーラがまとめていた。

当初は左派陣営が表を伸ばしていたが大きな自治体で表が開くと次第に互角になっていった。結果的に右派国民党が追いついたが国民党とVOXが連立しても過半数には届かないという結果に終わった。連立を組むためにはさらに味方を集めなけれならない。最終的に「国が二分されること」になった。つまり決定的な勝者が出なかったのである。左派のサンチェス首相は「左派の勝利」を主張し「自分達の政策は間違っていなかった」と国民に訴えた。

NHKによるとスペインの人たちの気持ちは揺れているようだ。行きすぎた改革や分離主義の動きには歯止めをかけたい。しかしながらVOXにあまり票を入れてしまうとかつてのフランコ政権のようなことになりかねない。結局、左派・急進左派、分離派、中道右派、反改革極右という選択肢で組閣を試み決着がつかなければ再選挙ということになる。

今回の選挙は政権選択選挙だったため国民の関心は高かったようだ。投票率は70.40%だったそうである。

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