世間が沸騰しているために「どうでもいい」といえばどうでもいいことなのだが、共同通信にやや問題があると思われる記事を見つけた。2015年に「マイナンバーの紐付け」に問題が生じたのだが報道では説明のためにマイナンバーカードが提示されている。有権者はこの二つの問題を混同する傾向があるので混乱を助長しかねないと思う。つまりマイナンバー関連の問題をマイナンバーカードの問題として誤認してしまう可能性がある。不安を煽るのには有効だが問題の解決にとっては有害だ。ただ調べてみると「マイナンバーカード」を提示してこの問題を伝えているニュースは意外と多かった。メディアもこの2つの問題の区別がついていないかあまり深く考えていないのであろうと思う。
マイナンバーで初の誤送金が確認された。共同通信はこう表現している。間違いが起きたのは2015年であり問題は「マイナンバーの紐付け」である。マイナンバーカードの問題ではない。
所沢市によると、80代女性に支給する約5万7千円を別人に振り込んだ。2015年12月に女性のマイナンバーと後期高齢者の保険情報をひも付ける際、同姓同名で生年月日が同じ別人の情報を登録していた。
問題の原因はわかっている。本来4情報(名前、生年月日、性別、住所)で確認すべきところを名前と生年月日だけで確認していたという職員のミスである。
だが最初の報道では「マイナンバーカード」が提示されている。記事にはマイナンバーカードがという記述はないのでなんら間違いはないのだが、おそらく記事だけを読んだ人は「これもマイナンバーカード問題である」と誤認するだろう。
有権者の主な関心事はおそらくマイナンバーカードを健康保険証にすることの是否だ。このようなイラストを付けたくなる気持ちはわかるのだがただでさえ混乱している認識をさらに混乱させかねない。
気になって調べてみたところ、FNNのニュース(YouTube)も「2015年の問題だ」としながらマイナンバーカードを使って説明をしていた。おそらく探せばこのような事例はいくつも出てくるのだろう。デジタル庁の立ち入り検査と併せて報じている記事もあった。実は報道機関もあまりマイナンバーカードの問題とマイナンバーの問題を区別して扱っていないことがわかる。とにかく「大変だ」「不安だ」というような扱い方に(結果的にではあるが)なっている。
河野太郎大臣らは「マイナカードの総点検をやる」と言っている。だがこれはマイナンバーカードの無理な普及事業によって起きた事務の点検だ。つまりそれ以前の間違いについて点検するとは言っていない。だが実際に誤登録ではなく誤振込が起きてしまったのだから、そもそもマイナンバーを使ったシステム全体も点検し間違いを早期に検知できるシステム作りなどをやらなければならないということになる。
お金の問題は厄介だ。「誤送金なので返還してください」といっても相手が応じてくれない可能性がある。阿武隈町で起きた誤送金では送られた相手が詐欺容疑で逮捕され最初の裁判では執行猶予付き有罪判決が出ている。
日本共産党は引き続き閉会中審査を求めている。国民の不安を自分達の支持率向上につなげたいという野党の気持ちはわかるのだが今の状況で政権を責め立てても単に不安がますばかりだ。まずはある程度調査が形になるまで待つべきなのだろう。
今回のケースはマイナンバーシステムの問題も関係しているが厳密には事務処理の問題である。本論に集中するためにも厳密に分けて考えるべきなのではないかと思う。