ざっくり解説 時々深掘り

ネアンデルタール人(Neanderthal)

カテゴリー:

AERAの記事を読んだ。我々の遺伝子の中にネアンデルタール人由来のものが少しだけ含まれているのではないかというものだ。4%程がネアンデルタール由来で、中東で交雑したあと、世界各地に広がったのだそうだ。母系から伝わるミトコンドリアを使った解析ではネアンデルタール人の痕跡は見られないということだ。すると父系がネアンデルタール人だったということになる。
5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まったによると、人類は150人程の集団が一回だけアフリカを出た。その子孫が中東を経て世界各地に広まったのだそうだ。
これ以上、膨らませようがない話題なのだが、なぜか気になる。ネアンデルタール人は脳がいまの人間よりも大きく、体も発達していた。肌の色は白く、顔はいまのコーカソイドのように凹凸があった。しかし、言葉を使う能力が発達していなかったとも言われている。どうして絶滅したのか、現世人類との競争に負けてしまったのかという点にはいろいろな論争があり、はっきりとしない。あまり群れの人数が広がらず、遺伝子的なバリエーションが増えなかったのが原因なのではないかという説がある
なにせ何万年も前の話なので、いろいろな説が飛び交う。しかも父系だけがネアンデルタールだったとすると、少ない集団で、たまたま何回か、あまり言葉が話せないネアンデルタール人の男が、ホモサピエンスの女性を押し倒したというような光景が浮かぶ。
ネアンデルタール人が滅んだ(あるいは現世人類に吸収されてしまった)のに我々が滅びなかったのは、社会性の有無だったという説がある。しかしアフリカから出るのに成功したのは150人の小集団だ。しかし、この数が人間が自然に組むことができる集団の最大数だ。現在では60億人いる人類も一度は10000人から2000人程度に減ったのだという。
ここまで大きなスコープでみると、人類の格差というのは我々が考えているほど大きなものではないことが分かるし、もともと10000人程度の集団にまでさかのぼることができるのだから、父系で2000年程度つながっている家系というのも、さほどの純粋さではないということが分かるだろう。また、人種的な違いというのも我々が考えているほどおおきなものではないということが分かる。
ほんの小さな遺伝子的な差違が、ちょっとした性質の違いを生む。そこから社会性が生まれることで、いったんは絶滅しかかったものの、我々は生きのび、ある時期から人口を増やした。中には「遠くまで行ってみよう」と考えるほんのわずかな集団が生まれる。それがたまたまライバルが少ない新天地を見つけ、異質な人類との交雑も行いつつ、世界各地に広まって行ったのである。
私たちの社会を分析すると「どうして人を殺してはいけないのか」「なぜ人は嘘をつくのか」「どうして我々は着飾るのか」といった疑問を持つ事がある。理論的にこの問いに答えることはできないかもしれない。たぶん「たまたまその方が都合が良かったから」だけかもしれないし、どうしてもそうしたいと思ったからだけなのかもしれない。故にこれが正義であるかどうかは分からないのだ。


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です