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「終わりの始まり」に突入した岸田政権はマイナ健康保険証と抱き合って落ちてゆくのか?

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日本の抵抗勢力には変化を拒む高齢者と負担増を拒む現役世代がいる。現役世代は岸田政権のサラリーマンいじめに大きく反応するが、高齢者はマイナ健康保険証に不安を感じ始めているようだ。岸田政権の支持率がジリジリと落ちている。

ただこれは終わりではなく「終わりの始まり」になるかもしれない。次に控えているのが3,400の健康保険事務の統合問題だ。おそらく今の日本政府にはこの事務をきちんとこなせるだけの能力がないのだから、これは玉砕プロジェクトになる。

みずほ銀行は3つの銀行システムを統合するだけでも度々問題を起こしている。日本政府は3400ものシステムを全く止めることなく統合するプロジェクトに突入したといえる。急患にも対応しなければならない健康保険証にはATMのような一時休業は許されない。

マイナ健康保険証の問題を切り離さないかぎり、岸田政権そのものが「終わりの始まり」に突入することになる。日本には重要な諸課題が多い。ぜひ抱き合って落ちてゆくのは避けてもらいたい。誰も幸せにならないからだ。

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時事通信に続いて共同の世論調査でも内閣支持率は続落している。「内閣支持率34%で「続落」、不支持48%」によると支持から不支持に転じた人が7ポイント程度いるそうだ。この問題のインパクトの大きさがわかる。

特に高齢者は「ざっくりとした印象」で判断する人が多いようだ。マスコミでトラブルが報じられており「マイナ健康保険証はなんとなく危ない」と考える人が増えている。特に65才以上の高齢者の間には「今後も取得しないつもり」という人が多い。今持っている人も「更新はしないだろう」という。38.8%である。30才以下の若者は26.5%が持たないと言っている。つまり、今この問題に抵抗しているのは主に自民党を支えている高齢者である。

暗証番号を覚えら得ない高齢者が多いから写真で判定するという政府の説明はもはや成り立たない。受益者であるはずの高齢者が拒絶反応を示している。

とにかくネガティブな印象がついたため「もう説明を聞きたくもない」という人が多いのだろう。総点検に期待しないという人が74.7%になる。また撤回や廃止を求めるという人も76%いる。プロジェクトさえなくなれば問題は消えてなくなると考えている人が多いのかもしれない。

嫌なことには関わらないというのは日本人の伝統的な思考方法だ。

この問題は年金の問題に似てきたと言われる。実はどちらも統合問題なのだ。

日本の年金制度にはさまざまな制度があった。これを一つにまとめたところさまざまな記録の不整合が起きた。つまり年金記録問題は「統合」問題だった。

健康保険証も同じような状態にある。

問題の源流は外国人労働者を入れたことによって生じた不正受給問題だった。外国人だけを差別するわけにはいかないということになり写真付きIDの提示が検討された。おそらくここで「マイナンバーカードが良い」ということになったのだろう。だから全国民が一律でカードを持つ必要があるということになったのだ。だが、マイナンバーカードは義務ではない上に写真付き身分身分証明書は極めて限定的な使用しか想定されていなかった。事実上の仕様変更でプロジェクトに無理が生じ「デスマーチ化」していった。

しかし、問題は既にカードではなくなっている。現在の焦点はマイナンバーと健保データの統合問題だ。つまり今の問題はマイナカードではなくシステムの問題になっている。厳密にはマイナシステムの問題ではなく健康保険データの統合問題だ。今回の特徴は政府も気がつかないうちにこの壮大なプロジェクトに「特攻」を試みているという点に特徴がある。

全国にはおよそ3400もの組合がある。既に日経新聞が5月の時点で次のように書いている。日本政府はどういうわけか年金で大失敗した「統合」の問題に片足を突っ込んでいる。

今回問題になったのはマイナンバーの記載がなかったケースだが、申告していても他人とひも付いている可能性は残る。転職して加入する健康保険が変わった場合は再度、新しい保険者が正しく情報をひも付ける必要がある。マイナ保険証の利点の一つに「転職時にいちいち保険証が変わらない」が挙げられるが、全国およそ3400の保険者のノーミスあってこそ成り立つ利点。便利とリスクは背中合わせだ。

結果的にノーミスではなかったので問題が起きたのだから「このプロジェクトには無理があった」と気がついても良さそうだ。だが、岸田政権はそうしなかった。消えた年金問題の総括をしっかりして過去の教訓を共有していれば起きなかった問題だろうが、日本政府は過去の失敗は認めず総括もしない。だから教訓が継承されない。

そればかりか岸田総理は新しい約束をしてしまった。「プッシュ型で資格確認証を送付する」と国会で宣言してしまったのだ。これは基本的に全国に散らばる3400の健康保険組合に「ノーミス」をお願いするという壮大な賭けになっているがおそらく本人は気がついていないのではないだろうか。

中には「3400もあるのがいけないのだから一括で管理すればいい」と思う人もいるだろう。つまり国家が責任をもって資格確認証を管理するという方式がある。ただ、これは3400の健康保険組合にノーミスでの報告をお願いするということでありさらに難易度が高い。年金のように数年混乱し「結果的に収まるところに収まった」ということにあるかもしれないが、数人の総理大臣の首が飛びかねない。

高齢者は「自分さえマイナンバーカードの健康保険証を持たなければ問題とは無縁でいられる」と思っているのかもしれない。だが、政府の今後の作業によっては消えた年金記録問題と同様の問題が起きかねない。特に国や地方自治体が一括で資格者確認証を送るという制度はおそらく「玉砕プロジェクト」になるだろう。もっともいつかは起きる混乱が今起きただけという言い方はできる。

つまり秋の総点検は問題の終わりではなく「終わりのほんの始まり」に過ぎない可能性が高いといいうことになる。もちろん、世界の終わりではないが政権(一つだけではないだろう)は無傷ではいられないだろう。

統合には相当の覚悟がいる。

同じように混乱したケースにみずほ銀行の統合問題がある。全く違ったシステムを統合しようとしたが幹部の間に無理解と縄張り争いがあり預金者を巻き込んで度々問題を引き起こしている。みずほ銀行の場合3つの銀行を統合するというプロジェクトだった。政府は今3400を相手にしている。混乱しないわけがないのだ。

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