ざっくり解説 時々深掘り

ワグネルは存在したが法的には存在しなかった。だからワグネルは存在しなかった。

Xで投稿をシェア

プーチン大統領がついに訳のわからないことを言い出した。ワグネルは存在した。だがワグネルを規定する法的根拠はなかったからワグネルは存在しなかった。今後議会がワグネルの法的根拠を規定するのだろうという。普通の国では国家元首が議会に対して説明責任を負うのだがロシアではこれが成り立たないようだ。ロシア国内では軍幹部の間に大きな動揺が走っているようだが、これが必ずしも終戦に向けた動きになっていない。アメリカはさらに支出を余儀なくされ、ヨーロッパは東にある不安定要素にさらされ続けることになる。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






これまでプリゴジン氏とワグネルは「愛国的存在」だった。しかしながらプリゴジン氏が直接前線に赴きさらに愛国的な存在になりプーチン氏の人気を脅かすことになる。オリガルヒも影から支援するようになっていたという。結果的にプリゴジン氏は「更なる称賛と存在確認」を求めるようになり、軍を敵視しモスクワを目指すことになった。事態収拾を図ったロシア軍はワグネルを軍の傘下に収めようとする。

つまり最初の混乱は「プリゴジン氏のキャラ変」だった。便利使いできる影の存在から表に出ようとしたのが嫌われたことになる。

ロシアがワグネルを処分するためには、まずワグネルの法的な地位を確定しなければならない。だが、プーチン大統領はおそらくアフリカからワグネル経由で利益を得ている。ついにどう扱っていいのかがわからなくなってしまったようだ。そこで思いついたのが「議会に言い訳を考えさせる」作戦だ。ロシアならではの解決策と言える。

存在したが存在しなかったので政府に説明責任はない。とにかく色々と複雑なので簡単には説明できないというわけだ。だが、ロジックは既に破綻している。ワグネルはあった。だが法的には規定がない。だからワグネルは存在しなかった。今後ワグネルなどの軍事会社がどう位置付けられるかはわからないが大統領に忖度しそれなりの理屈を見つけるのだろう。

議会だけでなくロシア軍もかなり混乱しているようだ。西側からさまざまな情報が出ている。これを戦争と呼ぶか紛争と呼ぶか特別軍事作戦と呼ぶかは別にして「幹部が突然姿を消す」動きが出ているようだ。幹部が消えているにも関わらずウクライナへの抵抗は続いているというかなり異常な状態になっている。

特に注目されているのは参謀の地位を奪われたスロビキン氏だ。交代させられたことに対してかなり複雑な気持ちを持っていたのだろう。収容は免れたものの繰り返し尋問を受けていると書かれている。

ロシア、ワグネル進軍直後にスロビキン氏ら拘束(ウォール・ストリートジャーナル)

西側から「ロシア軍の混乱」に関する情報が盛んに流れてくるのは、我々の支援のおかげでプーチン政権は追い詰められていると主張したいためだろう。特にバイデン大統領はは議会から強い歳出削減圧力にさらされているため、費用対効果を明確にし大統領選挙に打ち勝たなければならない。バイデン大統領は「ロシアはウクライナの戦争で負けた」という楽観的な認識を示した。

 米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は「ロシア軍はかなり混乱している」と主張するが、同時に今後の展開は読めないという。

内部は相当動揺しているにも関わらず以前戦況に変化はない訳だからそもそも最初から壊れていた国を刺激し特別軍事作戦にまで追い詰めた可能性が高い。

日本も長年そもそも国家としての体裁を成していない国と北方領土交渉をしていたことになる。日本はロシアを刺激するのを恐れて一時ロシアに対して「北方領土は我が国固有の領土である」と主張するのを控えてきた。こうした微妙で繊細な言い回しが問題解決に大きく寄与すると考えたのだろう。おそらくこうした配慮は全て無駄だったということになる。

NATOにとってはかなり深刻な事態だ。ロシアは既に壊れていたがその崩壊ぶりが日々露呈されてゆく。これはつまり仮にプーチン大統領がこの地域から取り除かれたとしても、事実上崩壊してはいるが核兵器を持ち安全保障理事会に議席を持つ「ロシア」という国が存続し続けることを意味している。主権国家体制の悪夢である。

ヨーロッパは南にも北アフリカ・東アフリカという不安定な地域を抱える。こちらの状況もかなり混乱している。スーダンの内戦は収まらず、気候難民や経済難民がヨーロッパに押し寄せてきかねない事態になっている。NATOのステートメントは混乱するサヘル地域などにロシアの影響が及んでいると言っており、ロシアの混乱とアフリカの混乱はある程度リンクしている。既に気候難民の北上が圧迫となりオランダの政権は崩壊した。

フランスのように既に国内に多くのイスラム系移民の子孫を抱えている国もあり、ヨーロッパは今後しばらくは東と南からの圧力にさらされ続けることになるのかもしれない。その対策はあらゆる意味で「壁」を建設しそれを維持しつづけることだ。経済的聖域を維持するためのコストはかなりのものになるのではないかと思う。

これは台湾という似たような地域を近隣に抱える日本にとっても人ごとではない。台湾(中華民国)には主権国家格がない。つまり軍事同盟を他国と結べないだけでなくそもそも国連の安全保障の傘からも外れている。出口戦略なく中華人民共和国を刺激するのがいかに危険で無謀なのかということがよくわかる。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です