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大阪万博の海外パビリオンの申請ゼロの理由を散漫に考える

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Twitterを見ていると「大阪万博の海外パビリオンの申請がゼロだった」などとちょっとした騒ぎになっていた。最近お馴染みの光景である。何だかよくわからないが「兆候」は出ていたが、問題が解決されないままで「ああやっぱり」ということになり周囲が慌て出す。そして収拾不能になるとみんなが騒ぎ出し責任者は誰だ?ということになる。オリンピックの時は準備委員会が批判されたので今回は「維新が悪い」ということになるのかもしれない。

これについて散漫に考えていて日本ではもう「新規産業」が作れなくなっているのかもしれないなあと思った。原因は維新の不手際ではなく企業の消極的なマインドセットだ。

大したエビデンスはないのだがメモ程度に考えをまとめておきたい。

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ニュースは大阪万博において海外パビリオンの申請がゼロだったというものだ。なぜか産経新聞が「黄色信号だ」と焦っているのが興味深い。

だが記事を読んでもなぜ海外パビリオンの申請ゼロの理由がよくわからない。

工事が難しいからできないという指摘もあれば、建築費が高騰しているのだろうという指摘もある。例えば「埋立地だから工事が難しい」のかもしれないし、少子高齢化で建設作業員が集められないのかもしれない。単にデザイン画を示されても設計図に落とせる能力があるゼネコンが消えてしまっている可能性もある。ゼネコンは普段から似たようなプレハブのお店ばかり作っているからだ。

「大変だ大変だ」ばかりで論点が整理されないのも今風である。日本人はよほど退屈しているのだろう。

既に費用の高騰が問題になり始めている。関西の財界には「奉加帳」が回り不満が高まっているそうだ。

これについてオリンピックとの連想で「費用が高騰するのではないか」と心配している人がいる。オリンピックの時は「事務局のやり方が悪かった」と総括された。だから今回はプロジェクトを主導した維新が悪いということになるのかもしれない。

だがここで「待てよ」と思った。

前回「経済産業省が主導する顔認証システム」の問題を取り上げた。国主導で「松竹梅」が選べないため医療機関は高い買い物を迫られている。結局「高すぎるから今は導入できない」という話になった。マイナ健康保険証の場合は国が無理やり健康保険証を廃止して切り替えるという暴挙に出たために大騒ぎになっている。

マイナ健康保険証のケースの根底には「よほど儲かる事業でなければ企業が参入しない」という問題がある。つまりリスクのある新しいことをやりたがる人が減っており、どうしてもという場合には過剰なプレミアムが要求される。だから「何もしない」と「極めて高い」という極端な選択肢だけが残る。マイナ保険証では読み取り装置が複雑化して価格が高騰した。さらに官主導で需要を作ったために開発者や導入担当者が逼迫している。

構造が非常によく似ている。整理してみよう。

  1. 日本は民間が自発的に新しい産業を起こすことができなくなっている。リスクがあるプロジェクトには課題なプレミアムを要求するからだ。
  2. そこで官主導で無理やりに大きなプロジェクトを通す。
  3. 追随する企業は「確実に儲かるもの」でないと実施しない。このためソリューションの価格が跳ねあがる。
  4. さらに急激に需要を作るので人や資材の不足が起こる。

つまり、日本の産業構造は永遠の停滞と官主導による混乱の二択ということになる。企業が極端に新しいことを嫌がり、どうしてもという場合に過剰なプレミアムを要求するのが原因だ。

その意味では今回の提案は妥当なものかもしれない。

つまり最初に「オプション」を準備してそれを機械的にあてがうことによって費用を抑えようとしている。プレハブに慣れた日本のゼネコンにはこちらの方が取り組みやすいだろう。あとは表側だけ何となくおしゃれに取り繕えばいい。

読売新聞はこう書いている。

外観のデザイン案は簡素なものを複数示し、建設業者は責任を持って確保するとした。建設費は参加国側に負担を求める方向だ。

このようなやり方をすればおそらく国道沿いのよくある光景のような建物が大阪湾の埋立地に乱立することになるだろう。どの地域に行っても同じようなフランチャイズの同じようなプレハブ店舗が並んでいるような光景をわざわざ万博まで見にゆくことになる。

昭和の万博は「カスタムメイドのお祭り感」の強いものだった。だがおそらく今の日本の建築業界はデザインから起こすような本格派オーダーメイドには対応できなくなっているのかもしれない。

何となくつまらない万博になりそうだが週末に地域のAEONに出かけるのが最大の贅沢になっている今の日本人にはそれ相応の万博だろう。大人の入場料は7,500円ということである。

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