Twitterを見ていたら、ヒラリー・クリントン氏がTPPに反対していた。要旨はざっとこんな感じ。
為替操作の禁止が盛り込まれているかや製薬会社にばかり有利になり患者が置き去りになっていないかなどを注意深く見ていたが、これまで知りうる情報ではTPP合意には賛成できない。
TPP合意はアメリカに仕事をもたらし、給与を増やし、国防に利するものでなければならない。この数年間、アメリカ人は裏切られ続けてきた。被害者はアメリカの勤労家庭で、必要な支払いができるほどの給与がえられていない。共和党はアメリカの競争力を削ぐような反対ばかりしている。オバマ大統領の提案した、インフラ・教育・クリーンエネルギー・イノベーションに対する投資に反対し、最低賃金を上げたり、労働者の権利を守ったり、職業訓練に投資したりすることを拒んだ。結果、アメリカの競争力は削がれ労働者は必要な保護を得られなかった。貿易の恩恵は消え、ネガティブな効果ばかりが募った。
私は、かつて私が国務長官時代に推進していたように、強くて公平な貿易合意が可能だと信じている。オバマ大統領とチームのハードワークには感謝しているし、これまでの歩みも知っている。しかし、現在の合意が望まれるような高い水準に合致しているとは思えない。
自由貿易に反対しているのではなく、要するに「もっとアメリカに有利な合意を」ということらしい。中段ではTPPに反対しているのか共和党に反対しているのかよく分からなくなっている。製薬会社に有利すぎるのではという批判を日本ではよく聞くがアメリカ人にも反対している人がいるというのは面白い。
アメリカの給与水準はかなり高水準でヨーロッパの大抵の国よりも高い。にも関わらず「まだ足りない」と思っているという点が興味深い。失業率もヨーロッパと比べると格段に低い。ヒラリー・クリントンはスペイン語での情報発信にも力を入れているようなので、経済発展に取り残されたと感じている層に働きかけているのかもしれない。支持基盤の労働組合がTPPに反対しているという報道もある。
大企業の経営者層はTPPに賛成しているが、一般庶民は不安を募らせているという図式は、日米に共通するものらしい。トリクルダウンなどと言っても、黙っていて恩恵が振ってくる訳ではないので、どのようにして分配させるかということを真面目に考えるべきなのかもしれない。
「十分な暮らしができるほどの給料が得られていない」という不満は本来ならば大企業に向けられるべきだが、代理として共和党や貿易協定(および相手国)が非難の対象になっている。これは「将来が不安だ」という感情を自民党や「戦争をするかもしれない」安倍政権に向けているのに似ている。
一方で「公平なルールならば必ずアメリカの利益になるはず」という思い込みはアメリカ特有のものだと考えられる。シボレーが売れないのは日本政府が妨害しているからというトランプ氏のコメントにも見られる考え方だ。日本人はソニーのテレビが売れないのはアメリカ政府が陰謀を巡らせているからだとは考えないだろう。英語の「It’s not fair」というのは、自分たちに有利ではないくらいの意味なのかもしれない。