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日本の経済の実力と給与

「日本人の所得が下がったのは大企業が分配しないせいだ」などと言われることがある。また、為替レートが下がったために日本人は貧しくなった(あるいは、製造業に有利になった)などと言う人もいる。しかし、いろいろな分析をする前にまず実際の数字を確かめてみたい。
最初のグラフは2014年の名目GDPと2013年の購買力平価でみたGDP(どちらも一人当たり/出典はwikipediaから世界銀行の数値を引用した。)をプロットしたものだ。名目GDPが高くてもその国の物価が高ければ豊かだとはいえないだろう。
gdp一目りょう然なのは、産油国か金融センターの国(スイス・シンガポール・香港)などが超先進国クラブを形成しているということだ。日本より名目GDPが低くても物価が安く購買力が高い国がある。この図で見ると、台湾人は日本人よりは良い暮らしをしている。
日本は、イスラエル・イタリアとともに、ぎりぎり「先進国クラブ」の仲間入りを果たした。先進国クラブといっても、いくつかのグループがある。例えばオーストラリアは極めて経済が好調のように見えるが「オランダ病」にかかっていると言われるそうだ。資源が豊富で労働力が少ないために給与が高騰し、製造業が逃げ出しているのだそうだ。ヨーロッパの先進国とカナダは1つのまとまりを作っているのでこのあたりが一つの目標だと言えそうだ。
EUの中でもスペイン・ポルトガル・ギリシャは先進国クラブから脱落した。この中にはロシアや韓国が入っている。いわゆる「中進国」と言えそうだ。
さらに後進国の固まりが3つある。中国やインドなどがここに位置する。しかし、両国は人口が大きいので国として経済規模では日本と肩を並べる。
さて、国としてはぎりぎり先進国クラブ入りを果たした日本だが、給与の面ではどうなのだろうか。世界の平均年収というデータがあったので、購買力平価ベースのGPD(一人当たり)とプロットしてみた。
incomeこちらは残念なことに先進国クラブから脱落してしまった。イタリア・日本・イスラエル・スペイン・大韓民国・スロベニアが1つのグループを作った。
wage韓国は経済成長を続けており中進国から先進国へと移行しつつある。一方でスペインは1990年以降に住宅バブルが起きて2012年に崩壊した。失業率が20%を越えて、若年失業率は50%を越えているそうである。日本も資産バブルを経験しそのまま経済成長が止まった国であり、一人当たりの給与は下がり続けている。
ここから分かることは多くないかもしれない。どちらのグラフも一直線上に並んでいる。つまり、為替レートや労働分配率といった数字にはあまり意味がなく、結局のところ1人あたりのGDPを増やさなければ豊かにはなれないということである。そのためには、労働生産性が高い(つまり儲かる)セクターへと労働者を移動したり、労働生産性を上げるための投資(例えばITなど)を積極的に行うしかないということになる。
暮らしを良くするためには地道にがんばるしかないのだ。


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