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景気対策のためには消費税を毎年上げろ

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アベノミクスの異次元の金融緩和政策はインフレを起すのに失敗した。全く教訓が得られなかったのかといえば、そんなことはない。明確なルールさえ提示すれば動くのだ。キーになっているのは「限定」だ。
第一に、消費税増税による駆け込み需要が起きた。これは消費者に「今買い物をしないと後で損をしますよ」という明確なメッセージを送った。企業は大幅な需要の増加が臨めるので設備投資をし、消費者は値上げを予想して買いだめした。つまり、消費税の増加は人工的で強制的なインフレを起したのだ。ここから得られる洞察は簡単だ。つまり、毎年消費税を上げれば、人々は消費を活性化させるかもしれないということだ。
もし、インフレが人々を幸福にすると政府が考えるなら、政府は毎年のように消費税を増税すべきだ。4月に増税すれば、毎年3月には大規模なセールが開催できる。
もう一つの成功した政策は地域振興券だった。これも売る場所を限定して割引を行うというものだった。割当数が限られているので市町村役場や地域振興券売り場には多くの市民たちが殺到し「もっと売れ」と罵り合いも起きた。銀行では頼まれていた分をこっそり懐に入れる職員まであらわれる始末だった。
地域振興券は割安の通貨のようだが、実際の原資は税金だ。つまり、人々は期限が来たら紙切れになってしまう「二流通貨」を、自分たちの負担で喜んで買い入れたのである。これは、出かけて行って地域振興券を買えば、それで2割を稼いだような気分になったからだろう。
これほど人気があるのなら、給料や年金を地域振興券にして配れば良い。つまり、期限付きの通貨Aと貯蓄用の通貨Bができることになる。例えば、給与を通貨Aを100円貰って、貯蓄したい人だけが通貨Bを90円分貰うのだ。通貨Aで収益を得た企業も期限内に投資をせざるを得ないので、儲けを設備投資に回ることになるかもしれない。
消費者は<賢く>消費するのだが、その賢さはその人が持っているフレームによって左右される。ゲームのように期間を限定してやれば、かなり設計通りに動いてくれるようだ。
逆にいうと、そうまでしないとモノが売れないほど、消費意欲は減衰している。それが政策のせいなのか、マインドの変化によるものなのかはよく分からない。人々は外からの動機付けが強くなればなるほど、内発的な動機付けを失って行くものなのかもしれない。
ところで、長期に渡って消費税増税による値上げが起こる事が予めわかっている場合、駆け込み消費が増えるのかという疑問は残る。消費者が将来の可処分所得の減少を予想すれば、買い控えが起こることだろう。住宅や耐久消費財などの分野では特に影響が顕著になるのではないかと思われる。
企業も消費者も買い物を控えるのだから、政府だけが大きな支出の担い手になるだろう。政策判断の比重が増えるので、企業は利益を誘導しようとして企業献金などの支出を増やすかもしれない。これは汚職の源泉になるだろう。企業は市場に働きかけるよりも政府に働きかければ潤うので、国際的な市場競争力を失うに違いない。
結局のところ、暮らし向きがよくなる希望がなければ、日本人の消費意欲はますます減退し、企業は国際的な競争力を失うだろうという月並みな結論に落ち着いてしまった。