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女性の敵 – 菅義偉官房長官

もともと菅さんは政府の観光政策を宣伝しにやってきた。ビザの緩和措置もあり、めずらしく成功している政策だ。その席で安藤優子が、気を利かせて福山雅治の結婚について聞いたのだ。普段、めったに笑わない人なので、親近感を感じさせようとして「よかれ」と思って聞いたのだろう。そこで菅さんは「子供を産んで国家に貢献して欲しい」というようなことを発言した。
子供を産めない(あるいは作らない)夫婦というものもあるので、決めつけるのはいかがなものかとは思ったのだが、何ぶん「ついで」の会話なので、これほど炎上するものとは思わなかった。テレビのニュースになり、ネットニュースにも話題を提供した。女性識者たちはTwitterで「国家に貢献」にあからさまな嫌悪感を見せた。政権に対する女性の敵意はかなりのレベルに到達しているといえるだろう。
政治家にとって女性は道具だ。安保法制の参議院での攻防の際の出来事を見ればわかるだろう。野党の女性議員たちは徒党を組んで盾になった。与党側は女性の衛視を盾にした。「女に暴力を振るったからけしからん」というような罵り合いもあった。これが国会が範になった「女性の活躍する社会」の実態だった。
自民党で偉くなろうと思った女性は、男性顔負けのヘイト発言をしなければならない。稲田議員などを見ているとよく分かる。これは白人に認められたい黒人が、ことさら白人のアクセントとマナーを求められるのに似ている。差別を超克したつもりで、差別の道具にされてしまうのだ。道具にされた女性は見れば分かる。男の政治家と同じように目が死んで行くのだから。
女性はまた労働力としても期待されている。男性のように経済的に家を支える必要のない格安の労働力だ。今後労働力が減って行くので、女性も外に出て(できれば男より安い金で)働くことが期待されているのだ。経団連は外国人労働者にも同じことを期待している。企業と政党にとって女は外国人労働者と同じように見えるのだろう。安倍首相は国連での記者会見で悪びれることなく「日本は移民を受け入れる前に、女性と高齢者を活用する」と言い放った。
自民党の新憲法案には「家族は支え合うべきだ」という条項が儲けられている。家族に相互扶養義務を課す事ができれば、国家は福祉から堂々と撤退できる。もちろん男性が子育てや介護をやってもよいのだろうが、実際に担い手になるのは女性だろう。
つまり、女性は外で安く働き、家の中では家族の面倒をみなさいというのが、政治家のメッセージなのである。ついでに子供を産んで、国家の繁栄に尽くすべきだという考え方が、菅さんの「子供を産んで国家に貢献」という発言につながっている。だが、この認識は親戚の寄り合いでも語られるくらいありふれたメッセージだ。
有権者の半分は女性なので、あまり女性を怒らせる発言をしないほうがいいのではないかと思う。しかし、これも心配はいらないのかもしれない。まず、男が言いにくいことは女性に言わせればよい。「共感力」の高い女性は分かってくれるだろう。それでも納得しなければ、お目こぼし程度の補助を出して「女性が活躍できる社会を目指す」程度のことを言っておけばよいのだ。問題を解決する必要はない。活かさず殺さず程度のところに置いておけば、女性は却って政治に期待してくれるに違いない。
その上で改めて思うのだが、菅官房長官に対して単なる言葉狩りをしても意味がない。


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