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マイナカード問題はついに「笑えないギャグ」の領域に突入した。

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閉会中審査を前に「暗証番号のないマイナカード」の話が出てきた。事実上の電子キー配布プロジェクトの断念だが、Twitterでの反応を一通り見る限り「だったら健康保険証でいいじゃん」というものが多かったようだ。

だが、これに関する「一部の国民」の反応もまたズレている。「暗証番号のないマイナンバーカードなんかができたら情報がダダ漏れになってしまう」と指摘する人がいる。もう乾いた笑いしか出てこない。

ちなみに「顔写真ベースの認証」にもすでに問題があることがわかっている。次には「マイナンバーカードで手書きで健康保険証番号を書き込む」というソリューションが提案されるに違いない。

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国民がずっこけている理由は単純だ。わざわざ高い税金をかけてそんな面倒なことをする必要はない。今のままの健康保険証で十分だ。また「今までのあの面倒な手続きは一体何だったんだ」という気分にもさせられる。

実は「今まで何だったんだ」問題は報道のリードを書き換えるだけで簡単に払拭できる。

政府は電子キー機能のついたマイナンバーカードの普及を事実上断念した。認知症などを抱える高齢者や支援団体の懸念が払拭できなかった。今後は、電子キー機能のついたマイナンバーカード(マイナンバーカード甲種)と電子キー機能のないマイナンバーカード(マイナンバーカード乙種)が流通するが、甲種と乙種に外見上の違いはない。今後「保険者番号が記載されない新しい健康保険証」に切り替わることになり保険者番号が書かれた従来の健康保険証は原則廃止となる。将来は「運転免許番号が記載されない新しい運転免許証」なども計画されている。

政府は「失敗しました」とは言えないので「容認する」という言い方にしているのだろうが、これは事実上の敗北宣言と言って良い。「無理でしたごめんなさい」ということになる。

そもそもマイナンバーカードも電子証明書も実は任意である。カードの更新期限は10年だが電子証明書の更新期限は5年だ。つまり「電子証明書が切れたマイナカード」というものの存在は想定されている。まあ、騒ぐような話でもない。

ただ「この国民にしてこの政府あり」「この政府にしてこの国民あり」という気もする。

Twitterの反応に

  • 暗証番号がないカードをバラ撒いたらいよいよカードの中にある個人情報がダダ漏れになる

というものを見つけた。割と多くの人がそう誤解しているようだ。

そもそもカードそのものに銀行口座の内容や健康データなどが入っているわけではないのだが「巨大な個人情報がびっちり書き込まれたメモリーカード」と認識している人が多いのだろう。スマホを落として暗証番号でロックしていなければ写真も口座情報も抜き取られるというような感覚だ。政府がいくら説明しても当初の思い込みが抜けない。これではどっちもどっちである。

今回のニュースで最も気になったのは「ではどうやって保険者番号とマイナンバーを照合するのか」だった。報道には記載がない。なぜか河野太郎氏の代弁をしている山口健太氏がヤフコメで次のように書いている。

そうだ。嫌に断定的に書いているが取材はしているのだろうかと思うが、取材をして書くと「田崎史郎さん状態」になってしまう。立ち位置が難しいところである。

ただ「顔写真ベース」にするとさらに面倒なことになる。おそらく山口氏は「デジタルは正確だ」と思い込んでいるのだろう。あるいは誰かにそう言い聞かされているのかもしれない。だが実際には認証精度は人の手で変えなければならない。指紋や顔認証はチューニングが非常に難しい。

既に「顔写真のマッチングが甘すぎるシステムがある」ことがわかっている。別人でも易々と認定されてしまうほどだ。このため顔認証機能を使わないと宣言しているクリニックがある。このクリニックは暗証番号利用が前提である。

東京、千葉、京都の各保険医協会から報告があった。21日に都内で会見した保団連幹部によると、千葉県のクリニックでは、カードリーダーの顔認証ができない状態が続き、休診日にスタッフの1人がマイナ保険証をセットし、別のスタッフが顔をカメラに向けると認証されたという。
この不具合はオンラインによる保険資格の確認が義務化された4月以降に起きており、クリニックでは受付に「顔認証はできません」と張り紙を掲示。マイナ保険証持参の場合は暗証番号の入力を促し、番号が分からなければ従来の保険証で確認しているという。

大阪府保険医協会のアンケート調査では、「顔認証の読み取りがうまくいかない。何度もやり直し、時間がかかる。勝手に電源が落ちる」「『接続を確認しています』という画面が出たまま、数時間も変化なく使用できない」といったトラブル事例が報告されている。

ただ、顔認証がうまくいかない理由はよくわかっていない。認証精度が厳しすぎて通らないのかもしれないし別の理由かもしれない。さらに医療機関側が不慣れで認証されないのかシステムの不具合なのかもよくわからない。取材する側にそこまでの知識がないのだろう。

つまり「保険者番号が記載できない健康保険証」を作るために、人の手では正しいのか間違っているのかが判別できない電子データをキーとして採用するというようなことを政府はやろうとしている可能性が高い。

だがそもそもこれは炎上プロジェクトなのでこの辺りのことを真面目に議論してもあまり意味はなさそうだ。

問題の解決は簡単である。電子的に保険者番号や運転免許証の番号は記載できないが「ユーザーが勝手に書く分には」構わない。おそらく空白のメモ欄を作ってそこに番号を書いて貰えばいい。もうそれをFAXで健康保険組合に流して確認をして貰えばいいと思う。

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