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マイナカード運転免許証には原理的に「無免許認定」の危険性があるのではないか?

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国のマイナンバーカード対策が発表された。チェックリストを作り誤交付を防ぐ方針なのだそうだ。また健康保険証が照合できない場合は自己申告により3割負担とし最終的に加入が確認できなかった場合は誰か(おそらく税金だと思うのだが)が肩代わりすることになるそうだ。このニュースを読んでふと思った。運転免許証の場合にも「自己申告」で免許があると認めてもらえるのだろうか。マイナンバーカード事業は一度立ち止まって考えるべきなのではないかと感じた。

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国のマイナンバーカード誤交付対策が発表された。チェックリストを作って自治体に配るようだ。おそらく現場はチェックリスト以外のチェックはしなくなるだろう。つまり新しい問題が生じるたびにチェックリストが増えてゆくことになる。さらにチェックリストやマニュアルがいくつも作られ矛盾が生じるようになるかもしれない。国の対策というのはいつもこんな感じだ。

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ただ、これは大した問題にはなならないだろう。ポイント付与などを使った強引なキャンペーンはもう行われないはずだ。窓口の多忙が問題の根幹と考えると事故が起きる確率はずいぶん減るはずだ。

次の問題は保険証の紐付けである。確認できなくても自己申告で3割だけ支払ってもらうことにするそうだ。仮に無保険だとわかっても後で国が補填するのだという。国民皆保険なので「加盟していない人はほとんどいないだろう」という前提なのだろう。場当たり的とは思うがこれはこれで実効的対策としては問題がないように思える。

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だがここでふと現在のマイナンバーシステムにおいては「間違いをゼロにするのは原理的に無理なんだな」と気がついた。仮に間違いをゼロにできるのなら論理的に明快な対策が出て終わりになるはずである。

そもそも紙の健康保険証ではなぜ間違いが起きないのか。それは保険番号が直接確認できるからである。マイナンバーカードもそうすればいいではないかと思えるのだがマイナンバーカードはマイナンバーと保険番号を手動で紐づける仕組みになっている。結局ここでヒューマンエラーをゼロにすることができないのだろう。河野太郎大臣は問題の根幹はヒューマンエラーなのだから「頑張って気をつければなんとかなる」といっている。

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ここでふと「では運転免許証はどうなんだろうか?」と思った。おそらく制度上は運転免許証には個別の番号がふってあるはずだ。最高裁判決の「縛り」のためマイナンバーは共通番号として使えない。

日経新聞はこれを「分散管理がアダ」と表現する。

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運転免許証の番号をマイナンバーに置き換えることができずどうしても原理的に別の番号と紐づける必要がある。つまり、運転免許証とマイナンバーカードが紐づいていない可能性や本人も知らないままに別の人の運転免許証が紐づいている可能性が排除できない。

仮に検問で「あなたは無免許でした」ということになった場合に警察は「自己申告」でOKを出してくれるだろうかという問題が生じる。おそらくそれは無理だろう。ずいぶんと面倒なことになるはずである。

今回の一連の騒動を見ていると割と簡単な論理的推論ができない人が多いという印象がある。どういうわけか大手メディアも論理的推論をもとにした質問はしないので後になって「あれは想定外だった」と慌てることが多い。つまり先回りして対策が立てられない人が多いのだ。

健康保険証の場合は既にシステムに多額の投資をしておりサンクコスト(埋没費用)の問題がある。いったん着手してしまうと埋没費用が無駄になることを恐れてプロジェクトを止めるのが難しくなる。

だが運転免許証の紐付けはまだ行われていない。ここは勇気を持って止めるべきなのではないかと思う。調査を含め一旦投資してしまうと中止の判断が難しくなる。

政府は前のめりで運転免許証の身分証明書としての地位を剥奪してマイナンバーカードに統合しようという構想を打ち出しているそうである。立憲民主党の蓮舫氏が「是非止めなければ」といっている。

身分証明書として機能するならばマイナカードでも構わないと思う。反対のためだけの反対は憚られる。だが今機能しているものを廃止して機能しないかもしれないものに置き換えるのは反対だ。

アンマッチの問題が「健康保険証では起こっても運転免許証では起こらない」という論理的な説明があれば聞いてみたいものだが、おそらく「各健康保険組合は忙しくて間違えてしまうが警察はそんなことはしない」程度の回答しか得られないように思える。あるいは健康保険証にはたくさんの組合があるが警察は47(各都道府県)しかないというような回答だろう。

ただ「健康保険証で起きて免許証で起きない」理由を政府に説明させるとおそらく「なぜ健康保険証で問題が排除できないのか」を知ることができるだろう。つまり健康保険証の置き換えは無理だったという結論が得られる可能性が高い。

反対のための反対をするつもりはない。単に「誰か論理的に落ち着いて政府与党に質問をしてくれないだろうか?」と願うばかりだ。この記事が立憲民主党に届くかどうかはわからないのだが、ぜひ立憲民主党の誰かに閉会中審査でこの問題についてできるだけ冷静で論理的な質問をしてもらいたいと思う。国民一人ひとりの安全に関係する重要な課題である。応援してくれる有権者は少なくないだろう。

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