インストラクション情報構築

今回のシリーズでは、インストラクション情報の構築について見てゆく。インストラクション情報構築について考察すると、たとえばこういうことができるようになる。

  • バラの育て方についてのウェブサイトを作ったり、本を書いたりすることができる。
  • 英語の勉強方法についての情報教材を作る事ができる。
  • 家電の操作マニュアルが作れる。
  • 新人教育のためのマニュアルを作る事ができる。

インストラクションとは「〜のやり方」という意味だ。たとえば、「モテるための服装改造」もインストラクション情報だ。そこからさらに発展させてゆくと「ファッション雑誌」全般もインストラクション情報ということになる。しかし、卵料理の作り方、英語の話し方、ファッション雑誌には、なんら共通点がないように思える。つまり、卵料理の作り方にはあって、ファッション雑誌にはないなんらかの情報があるのだろう。
このインストラクションの方法を構造化することで、次のような検討ができるようになる。

  • 本や雑誌に何を振り分けて、ウェブでどんな情報を与えることができるかを検討することができる。これを突き詰めて行くと、そもそも本にはどんな独自性があるのだろうかということを考えることができる。本当に紙の本はなくなってしまい、すべてが電子書籍に置き換わってしまうのだろうか。
  • ファッション雑誌の編集者は、卵料理の教材からヒントを得て、新しいコンテンツをつくることができるかもしれない。ニュース番組はファッション雑誌と同じ構造を持っているのだが、どうして池上彰さんがもてはやされているのかが分かる。
  • 「瓶入りオレガノ」のマーケティング担当者は、自分たちの製品を売るためのコンテンツを、独自で企画することができる。瓶入りオレガノは、トマト料理や卵料理にとってどのような意味を持っているのだろうか。

さて、インストラクションに入る前に、現在のウェブサイトやオンラインコミュニケーションの現状について見て行こう。流行したTwitterなどはアンビエントと呼ばれるようになった。アンビエントとは環境という意味だ。アンビエントを理解するためには、猿の群れについて観察してみるといい。敵を発見した猿は警戒音を出す。警戒音を聞いた猿は理性的な判断をする前に逃げる。群れが逃げはじめると動かなかった猿も後を追う。その内猿の群れは全体で警戒音をならしながら逃げて行くのである。このように社会性を持った動物は、他者の動向をモニターしながら暮らしている。オンラインコミュニケーションは、論文のようなインストラクション情報から始まったのだが、情報量が膨大になるにつれて、アンビエント情報を扱う事ができるようになった。
Twitterではタイムラインを通して他人が何に関心を持ち、どんな反応をしているのかを知る事ができる。個々の情報には意味がなく、情報の総体に意味があるのがアンビエントということになる。ソーシャルメディアにはこうしたアンビエントとしての特性がある。
しかし、ソーシャルメディアの特徴はアンビエントだけではない。インストラクション情報上でも重要な情報を持っている。インストラクション情報を扱う人は、アンビエントとしての特徴を理解した上でソーシャルメディアを組み合わせることができるようになるだろう。
今日のこの情報は、本でいうと「序章(Preface)」にあたる。全体を動機付け、どのような読者の関心をひくかを定義する部分だ。しかし、通常、ブログ記事にPrefaceが置かれることはない。ブログ記事は短時間で読まれることを前提としている。滞在時間が5分を越えることはないだろう。インターネットの記事はこのように断片化された情報を扱うことが多い。
これは必ずしもオンラインコミュニケーションが断片的な情報を扱うのに長けており、本は長時間読むのに向いているということではない。しかし、実際にはそのような使い分けがされることが多いのだ。
たとえば、ホームセンターでミニバラを買う。すると、顧客は本を買わずに、インターネットで「ミニバラの育て方」を検索する。いくつかのサイトがヒットする。ここで必要な情報を得る。肥料が必要だということが分かるとアフィリエイトリンクをたどって入手する。ミニバラを育ててしばらくするといろいろなトラブルに見舞われる。もしくはいろいろなミニバラを集めてみたいと考えるようになる。こうなると本の出番である。
本のよいところは、ミニバラについて体系的に学ぶ事ができるという点だ。大抵のバラの本は季節ごとに記事が並べられている。これは植物を育てるための作業が季節に固有のものだからだ。最後に基本的な情報(たとえば、肥料や土の種類など)が並べられている。しかし、これだけでは本のボリュームが足りないので、よく売られている有名なミニバラが図鑑としてつけられている。
ここに本の特質が表現されている。

  • 本はリニアプレゼンテーションである。つまり、最初から最後まで読み進めて行く。リニアプレゼンテーションにはいくつかの利点がある。まず必要な情報を網羅することができる点だ。たとえば、インターネットで調べると剪定の情報が漏れるかもしれないのだが、本は最初から最後まで読み進めてゆくことが必要なので、情報に漏れがない。
  • ある程度のボリュームが必要である。物流コストがかかり、取次店を通すので、ある程度の価格で販売する必要がある。ミニバラ図鑑を付け加えたり、バラの育て方の一部としてミニバラの育て方が解説されていたりするのはこのためだ。

ミニバラの育て方は、もうすこし大きな分野の一つのセグメントを形成している。バラの育て方の一部であり、ガーデニングの一部でもある。ミニバラ、バーベナ、アイビーと同じような情報を集めて行くと花壇を作る事ができる。花壇を作るためにはレンガを扱う必要がでてくるかもしれない。ミニバラは花壇を作るための一つの要素だ。
花壇を作ることは一つの目標だ。この目標に沿って要素を集める。要素を集めて行くと共通する部分がでてくる。土の作り方や肥料のやり方などは一つにまとめることができる。ミニバラとハーブでは土の作り方が違うのだが、これをいちいち覚えるよりも基本的な土の作り方を覚えてから、ハーブ用のアレンジを覚えた方が早い。
このように、ある目標を最初に設定してから、その目標を達成するための要素を集めていく方が効率的だということがいえる。目標は、個別の要素を束ねるための約束事ということになる。ここでは「バンドル」と呼ぶ。束という意味だ。
バンドルには、様々なものがある。たとえば「イングリッシュガーデンを作る」はバンドルだし、「簡単に育てられる植物だけで気軽にベランダーガーデンを作る」もバンドルだ。バンドルは限られたセットの要素からなっている。イングリッシュガーデンを作るためのセットは、芝の育て方、レンガの積み方、イングリッシュローズの育て方などだ。この要素一つひとつをツールボックスと呼ぶ。バラの育て方は「ツールボックス」だ。この道具箱の中には肥料のやり方や剪定の仕方などの個別の要素がつまっている。バンドルは、作業レベルを定義したり、スタイル(イングリッシュ風の庭やシノワズリの庭)などを定義する。
ツールボックスを前提にバンドルを組む事もできる。たとえば「直線縫いだけで作るスカート」のバンドルでは、曲線や立体裁断を行なわない。曲線縫いは難しいので、限られた道具だけで、目標を達成することができるように作られている。
このバンドルが優れていると、その本には値段をつけることができる。つまり情報が希少でなくても、バンドルの仕方によっては価値を生み出すことができるのである。本には「編集力」が必要だというのは、情報のバンドル方法には価値があるというのを出版業界的に表現した言葉なのだ。
いったんバンドルが形成されると、そこにスタイルが生まれる。一度スタイルが形成されると、そのスタイルに沿って情報を足して行くことができる。「基本のトマトソースで作る簡単料理」というバンドルで本を出版する。その読者向けに基本のトマトソースで作る料理のレシピをウェブサイトで案内することができる。
このレシピはツールボックス程のオリジナリティはない個別の要素だ。これをバリエーションと呼ぶ。バリエーションは無料で公開してもよい。そもそもの本を売るための宣伝になるからだ。本だけでなく追加素材(たとえば乾燥オレガノなど)を売る事もできる。
基本的なインストラクション情報のツールボックスは、ツールボックス・バンドル・バリエーションだけだ。これを組み合わせることで情報の設計ができてしまうのである。この詳細を具体例を見ながらさらに考察してゆく。

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