ざっくり解説 時々深掘り

アメリカの景気は引き続き好調だが、ドイツと中国の経済に翳り

FOMCの結果は予想された通り利上げの一回お休みになった、市場の予測と異なっていたのは「年内にもう2回程度利上げをやるであろう」と当局が示したことだ。これにより利上げ水準の予想が引き上げられ「年内の利下げはなさそうだ」ということになった。一方でドイツ経済がリセッション入りし、中国経済も引き続き危険な状態にある。日本では円安が進行し割安感の出た株価が「バブル後最高値」を更新している。

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FOMCの6月会合が終わり当初の予想通り「今回乗り上げはなし」ということになった。物価が落ち着いたとは言えまだ上昇が続いている上に労働市場も引き続きタイトなため「年内にさらに利上げをやる」ということになっている。図の中に2つの点が示されたことから「年内にもう2回り上げをやるのでは」と予想されているようだ。市場関係者の間では「意外とFOMCはタカ派だった」という認識が広がっている。

株価はこのところ事前の予想とは逆の方向に進むことが増えている。今回も株価は大きく上がっていた。ところがFOMC後はニューヨークの株価が下がっている。

基軸通貨を持つアメリカ合衆国は経済の中心地であり利上げが起きると周辺新興国などから資金が逆流してくる。このため新興国で経済不調が起きても中心部のアメリカには影響がでにくい。

一方で少なくとも二つの地域では影響が出ている。それが中国とヨーロッパだ。

中国経済はじわじわと危険な状態が悪化

中国経済は危険だという指摘は前々からあったのだが緊迫度はかなり高まっているようだ。ただ信頼できる国家統計がなく内情がわからない。

中国は当局の関係者が企業関係者と会合を繰り返しているとBloombergが書いている。「会合での当局者の口調はいつになく切迫したものだった」とのことだ。中国にはアメリカから流れ込んできた需要を背景に地方政府が借金をして景気を刺激するという構造があった。地方政府の借金は制限されているはずだが「融資平台」と呼ばれる仕組みを使い隠れ債務を積み上げていると言われている。中国の経済規模は日本を超えているが地方政府が負っている借金は急速に膨らみ1100兆円程度あるとされている。

中国経済減速の特徴は消費者物価などの「川下」よりも「川上」の物価下落の影響が激しいという。投機を制限することによりバブルの崩壊が起きている可能性がある。

ドイツはテクニカルリセッション入り

ヨーロッパの経済もかなり厳しい状態が続いている。中でも問題児とされているのがドイツである。

ドイツではテクニカルリセッションが起きている。テクニカルリセッションとは2四半期(六ヶ月)連続でGDPが落ち込むという状態だそうだ。

アメリカは「リセッション入りするのではないか」という観測があるがいまだにリセッションは確認されていない。中国ではバブル崩壊によるリセッションが起きている可能性もあるが元々投機的な性格が強い上に国家統計が信頼できないために現状がよくわからない。

アメリカ人は「ビジネス」に非常に熱心である。また中国人も政府をあまり信頼せず「投機」に熱中する傾向がある。だがドイツ人は非常に堅実だ。この堅実さがリセッション入りの理由となっている。ドイツ人は用心深く将来への安心感が持てない限り消費には積極的にならないとしている。経済紙の立場からみればこれは問題である。ドイツは「ユーロ圏最大の問題児」ということになっている。

ロイターが例示する停滞ムードの理由は次の通りである。

  • ロシア産天然ガスの依存度が他国より高かった
  • 政府のエネルギー価格補填の政策が他国より後ろ向きだった
  • ドイツ人は慎重でディスカウントストアに慣れてしまっている

ドイツは「ディスカウント業態」発祥の地なのだそうだ。元々倹約志向が根付いており経済の先行き不安が個人消費を冷え込ませるという日本に似た特徴がある。

日本では株価の上昇も

アメリカの金融市場の状況が悪化しドイツや中国でも経済の変調が報告されている。つまり日本の金融政策は出口を失ってしまった。ところが皮肉なことにこれが日本の株価を押し上げている。

まず金利差が意識されて円安が進行する。現在は一ドル141円といったところだ。しばらく金融政策が変わらず日本の金利は安いままということになり円安で割安感も出ている。さらに「日本は買いだ」とする投資家も現れ株価が上昇している。

円安は輸入物資の値上げを意味する。また中国とヨーロッパの景気減速によって輸出企業は稼げなくなり日本に入ってくる子会社の利益も減るだろう。だが、株価=経済の高調査の証と誤認する人は多いのではないだろうか。

現在貿易収支は22ヶ月連続の赤字になっており国民生活は厳しい状況が続いている。かろうじて「第1次所得収支の黒字」が日本の経済収支を黒字に保っていることを考えるとヨーロッパや中国の原則の影響は小さくないはずである。

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