北朝鮮と韓国の間に軍事的緊張が高まっている。これについてネットで調べたところ「在韓米軍完全撤退」というブログ記事を複数見つけた。記事によると2015年にアメリカ軍は朝鮮半島から「完全に撤退」するのだという。よく調べると、あるブログの記事が出元になっているようで、その記事を完全コピーしたものが出回っていることが分かった。ネトウヨさんの間では広く出回っている情報のようで「韓国完全崩壊」とか「在日韓国人を送り返せ」などという主張と一緒に語られることが多いようだ。
新聞社や通信社が書いた記事はないので、これは「ガセ」なのだろうと思った。ところが、一概に「ガセ」とも言い切れない記事も混じっている。日高義樹という人が「2016年、米軍撤退でアジアの大混乱が始まる – 日高義樹のワシントン情報」で、アメリカ軍は東アジアから撤退するのだ、と主張している。
現在の集団的自衛権の議論は「世界で一番強い軍隊と手を組んでいるのだから負けるはずはない」という見込みのもとに成り立っている。この見込みのもとに「日本は自前の防衛戦略を持たなくても大丈夫だ」という結論が得られる。賛成派ほどこの傾向は強いだろう。この見込みが裏切られたときの衝撃は強いのではないかと思う。場合によっては不安に駆られた国民の反感が自民党に向かうこともあるだろう。
いくつかの情報を読み合わせると、アメリカ軍は自軍の兵力に被害が出る陸上線を行わず、離れたところからテレビゲームのように空爆をする作戦に切り替えている可能性が高いようだ。ところが、日本人はこれまでの安倍首相の説明から、日本の自衛隊は安全な場所におり、アメリカが前線で戦ってくれるように思っている。これは錯覚にすぎないことになる。
こうした観測は「現場の関係者に取材したところ」と、情報源を秘匿した形で語られることが多い。最近、アメリカ政府は政府予算の削減を進めている。予算が削られることを怖れた軍関係者や国防省の官僚が、こうした噂を広めて、不安を煽っている可能性は否めない。本を売りたい人たちも扇情的な「情報」をありがたがるだろう。
だが、一方で政府自民党の関係者も「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる人たちの情報源に頼って政策を立案している。彼らは提言を売り込んでくるので、日本政府は積極的に情報を取りに行く必要はない。ところが、ジャパン・ハンドラーは共和党よりに偏っていて、必ずしもアメリカ全体を代表しているのではない。彼らは当然のように「アメリカは日本を見捨てないから大丈夫だ」と言うだろうが、その言葉には何の保証もない。
こうした情報発信者たちは、何らかの期待があって日本に情報を流している。国防費予算の削減を怖れて情報を流している人もいるだろうし、兵器産業の為に情報を流している人たちもいるだろう。「長いつきあいだから」といって「腹を割ってくれる」ことはまずあり得ない。その裏には「日本に興味がない」人たちがいる。実際にはそうした人たちの意見がアメリカの意思決定に大きな影響を与えている可能性もある。
日本の野党はさらに情報の末端にいる。アメリカまで情報を取りに行く意欲はなく、国内の憲法学者の意見を参考にして、国内的な議論に終始している。いわゆる「神学論争」だ。神学論争は二極化したまま、膠着している。
もし、野党の議員が本当の意味で愛国心を持っているならば、日本政府が持っている情報に疑いを持ち、自前の情報ルートを通じて、日本が持っている情報を検証すべきだろうが、彼らのその意思があるかどうかは分からない。