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中谷防衛大臣の過大な約束

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アメリカ国防省から2つのドキュメントを拾ってきた。一つ目はアメリカ海軍のアジア太平洋地域での取り組みに関するドキュメントだ。国際協力を通じて緊張緩和の努力をすることを表明している。協力国の中には中国も含まれる。つまり、安倍政権支持者が願うような「中国封じ込め」というのは幻想だろう。
この文章を読むと、軍隊の役割が、戦争から情報の共有による紛争の未然防止に軸足を移しつつあることが分かるのだが、戦争に反対する野党ほど意識変革が必要なのではないかと思った。この意味で国会の議論は一回り遅れているのかもしれない。
もう一つは4月に中谷防衛大臣が表明したものだ。この中で中谷大臣は「地球のどこでもアメリカ軍に協力する準備をしている」と言っている。英雄然とした立派なインタビューだ。ただし、日本の現行憲法にはどこにも「日本が世界中で正義の味方として振る舞って良い」などとは書いていないし、日本の自衛とは全く関係がない。
「世界のヒーローになるために憲法改正させてください」くらいのことを言えば国民も説得されたかもしれないが、安倍首相の好戦的な普段の言動と、自民党改憲案のあまりにも復古的な内容のせいで国民の支持は得られなかった。

アメリカのアジア太平洋地域海軍安全保障方針の概要(2015.8.21)

アメリカは外交や国際機関との協同などを通じて、海洋の安全確保に努力する。東シナ海や南シナ海での領土要求に対していかなるポジションも取らないが、中国のスプラトリー諸島の人工島の建設を懸念している。
アメリカは、アメリカと同盟国の利益を守る為にアジア海上でのプレゼンスを維持し、紛争防止の為の能力を強化しつつある。また、その為に最新鋭の能力への投資を行っている。同盟国の海軍力強化にも取り組んでいる。
アメリカは、同盟国やパートナーとの間で、相互運用性(インターオペラビリティ)を構築中だ。中国指導者や地域当局との間でリスク回避手段を作成中である。船舶対船舶の合意はでき上がっており、年末までには航空機同士の遭遇に関する合意ができることを希望している。また、地域安全機関の強化を目指している。この点でASEANの重要性は増している。
http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/614488/us-outlines-asia-pacific-maritime-security-strategy

日本との戦略ガイドラインの見直しについて(2015.4.27)

日本の中谷防衛大臣がインタビューに応じて以下のように語った。
日本はアメリカのリバランス政策を歓迎し、日米戦略ガイドラインの見直しにより日米がより緊密に連携できるのを楽しみにしている。この見直しで、日本は世界中でアメリカと連携できるようになるばかりでなく、宇宙やサイバー空間でも協同できるようになる。このガイドラインは地域の紛争抑止と安定に役立つだろう。
この見直しの要点は、日本がこの地域だけでなく世界中でアメリカと協力できるということだ。そればかりか、宇宙やサイバースペースでも協力ができるようになる。
日米は調整メカニズムを作り、平時・有事の連携を強めるつもりだ。米国空軍と航空自衛隊の演習も充実させる。新しい法整備が整えば同盟国との間で兵站のサポートができるようになる。自衛隊は世界の平和維持に貢献することができるようになるだろう。
アメリカと協力するためには、二つの前提条件が揃う必要がある。国連決議などの国際的サポートと国会の承認だ。
新しいガイドドラインには、同盟間の調整メカニズムが必須だ。調整は内閣からコマンドレベルまでのあらゆる連携が必要である。日本を取り巻く安全保障環境は複雑なので、日米は新しい脅威に連携して対処する必要がある。
http://www.defense.gov/News/Article/604528


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