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LGBT法案で「腹痛造反」の高鳥修一氏はなぜ徹底処分されなければならないのか

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LGBT法案が衆議院本会議を通過した。当事者からは逆に差別を生むとして反発されているのだが、「安倍保守」の側からは「安倍晋三氏が亡くなってから自民党の崩壊が始まった」として反発する声が上がる。板挟みになった高鳥修一氏はマスコミに取り囲まれトイレに籠城した。突然お腹が痛くなったのだという。同情の余地はあるが組織統治の観点からは処分されるべきだろう。今後の岸田政権の不安定材料になる可能性がある。こうした「裏の汚れ仕事」をやってくれる側近が岸田総理や茂木幹事長にはいないのだから、自分達でなんとかしなければならない。

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ではなぜ高鳥修一氏は処分されなければならないのだろうか。それは「党議拘束がかかっていてもトイレに駆け込めば処分されない」という前例を作ってしまったからだ。高鳥氏は保守団結の会の取りまとめメンバーである。参議院にも多くの「同志」がおり、おそらく何人かは党の方針と支持者の板挟みになっていると感じているはずだ。つまり彼らも同じような「腹痛」を起こす可能性がある。

もちろん1人が造反したからといって大きな騒ぎにはならない。だが「私一人くらい」は容易に「うちのグループくらい」になる。

この「うちのグループくらい」が大惨事に発展したことがある。それが1980年のハプニング解散である。1979年の自民党は主流派と非主流派が対立していた。そんななか、野党が内閣不信任案を提出した。常識的に考えればそれは否決されるはずだった。

だが一部の会派が突然本会議を欠席した。結局、不信任案反対の票が足りず内閣不信任案は可決されてしまい対抗措置として大平総理は解散を選択する。誰も予想していなかったことからハプニング解散と呼ばれる。

この解散は「ハプニング」なのだから当然大義のない解散だった。野党もまさか解散するとは思っておらず自民党も自分達の造反行為によって仲間の与党議員を巻き添えにして失職するとは思っていなかった。

結局衆参同日選挙が行われるのだが、大平総理は選挙期間中に亡くなっている。これが結果的に「大義」になり自民党は大勝したが、あとから香典票で勝ったなどと揶揄された。亡くなったのは6月12日だった。古賀誠氏が「大義を考えて解散する人などいない」と発言した背景にはこの「故事」がある。やれるものなら覚悟を見せてみろということなのだろうが、あまりにも恐ろしすぎるので真意を古賀さんに聞いた人はいない。

今回「腹痛造反」を起こした高鳥修一さんとはどのような人なのだろうか。早稲田大学を卒業後、企業勤務を経て高鳥修衆議院議員の秘書になっている。後継候補として新潟6区から出馬する。だが選挙には弱く、落選や比例復活などを繰り返してきた。2017年には2212票で辛勝したが2021年には130票で立憲民主党の候補に負け比例復活しているのだそうだ。

おそらく選挙に弱い高鳥さんが頼ったものが二つある。一つは安倍晋三氏を支持する保守票である。また一部の宗教票に頼っているのではないかという話も出ている。これはやはり選挙にはあまり強くない東京の萩生田光一政調会長に似ている。高鳥氏のTwitterを見ると最後まで保守団結の会としてLGBT法案に反対している。表向きの理由は「普通の女性」の保護だが実際の意図はあるのかはわからない。

「保守団結の会」の構成はさまざまななのだろうが、おそらく選挙に弱いという理由でこの会に参加している人は少なくないだろう。つまり岸田総理の支持率が低くなればなるほど「急進保守」のウェイトは大きくなってゆく。

しかしながら高鳥氏は自民党の公認がなければ勝てない。現在は新潟5区の支部長という立場だが選挙に負ければこの地位は危ういだろう。当然保守・宗教といった支持母体も手放せない。新潟県は統一教会との関係について確認しないとする12の県の一つであり、この地域で重要な票田になっていることがわかる。このためになんらかの「板挟みになったのであろう」ということは容易に想像ができる。

一方の岸田総理も処分が甘いことで知られる。今回は「財源先送り批判」が容易に予想できる少子化対策の発表で頭がいっぱいだったのだろう。実質的には国民が持っている財源の懸念には全く答えないゼロ回答だった。レストランで言えば値札を見せずに高級料理を並べてみたということになる。

防衛費財源の問題も先送りになっており会期延長の可能性まで取り沙汰されている。自民党の中には「解散時期」で頭がいっぱいになっている議員がいるが、執行部は執行部で支持率確保のことばかりを考えている。マイナンバーカード問題の解決や党のガバナンス危機にまでは考えが回っていない可能性が高い。

LGBT法案採決退席は一次トレンドワードに挙がっていた。既に参議院議員の中には「仲間たちとの間で何をすべきか話し合っている」というような議員たちがいる。これまでの自民党は二階俊博、菅義偉両氏のような地方議会出身者や「参院のドン」と恐れられた青木幹雄氏のような重鎮がこうした造反や反乱を裏から抑えてきた。安倍政権が安定していたこともあり、現在の岸田政権にはこのような修羅場をくぐりぬけたたちがいない。ここで表から押さえておかないと収拾がつかなくなる可能性がある。

中には外から「造反した議員たちを全力で支える」と言っているいさましい保守の人たちもいる。民主主義なのだからイデオロギーを持つ自由はある。だが、彼ら「保守」が単独で当選させることができる議員の数はおそらく限られているというのもやはり事実である。一部は「新党を作る」などと言っていたがこの動きは起こらないのではないかと思う。代わりに「LGBT法案に反対している議員はネトウヨ」と発言したと伝えられる古屋圭司議員などに矛先を向けており党内にとどまりつつ「活動」する可能性が高いのではないかと思われる。やはり与党の権威の中で「保守」を主張したい人たち。

つまり自民党執行部は処分を下せば下したでその後で党内の異分子をどう抑え込むのかという課題に直面する。

調整不足による混乱は岸田政調会長時代からお馴染みの後継だが、一人の腹痛造反が起こした波紋は決して小さくない。単なる高鳥氏の気まぐれであれば良いのだが背景にある構造が根深い。公認は得たいが極端な支持層にも応えたいという二律背反した気持ちがある。安倍政権を支えていた「保守」は岸田総理が本気で安倍路線を継承してくれるのかを疑い出している。またこれまで裏の仕事をしてきた人たちが岸田政権にはいない。だから強い反発が予想されたとしても表できちんと処断しておかなければ後々禍根を残すことになるだろう。特に岸田総理に菅官房長官のような人がいないのはかなり痛手なのではないか。

高鳥修一さんも新しい新潟5区という支部を預かる組織長として組織ガバナンスの重要さと大変さはよくわかっているはずである。

今後の高鳥さんの処遇と執行部の手腕に注目が集まる。

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