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政治の恩師の古賀誠氏が岸田総理に「いいからいちど飛び降りてごらん」とささやく

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どういうわけか週末の政治報道は「解散」一色だった。立憲民主党は不信任決議は出したいが解散してほしくない。一方で自民党は解散の理由は見つからないが今のうちに解散したい。そんななか岸田総理の政治の師である古賀誠氏が「解散の大義など後からついてくる」と言っている。大義なき解散を迷う岸田氏の背中を押す形で「恩師とはありがたいものだなあ」と思う。

だが飛び降りた先は崖かもしれない。

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もともと総理大臣の解散権は議会に対する抵抗手段として憲法に組み入れられた。これが拡大解釈され「総理大臣が好きな時に解散してもいい」と解釈されるようになる。安倍元総理が解散を上手に使って長期政権を実現したことから「解散をうまく使って政権を維持しなければならない」というプレッシャーが岸田総理の肩にずっしりとのしかかる。

一方で立憲民主党は政権に挑戦するという意欲を示し続けるためだけに内閣不信任案を出し続けてきた。つまり今回も止めるわけにはいかない。ところが候補者選定が終わっておらず今は総選挙はやりたくない。そのため「解散と内閣不信任案は別物である」などという不思議な議論を振りかざしはじめた。もともと総選挙をやって信を問うのが不信任案の目的なのだから理屈としてはめちゃくちゃであるがそう言わざるを得ないのだろう。

解散を選択すると岸田総理は国民に解散の理由を説明しなければならない。これを「解散の大義」という。ところがこれが見つからない。もともと党利党略だからである。そこで立憲民主党の不信任案を利用しようとしていることになる。立憲民主党も不信任の理由が必要だ。つまり、立憲民主党が出した不信任の理由がそのまま解散の大義になる可能性がある。

立憲民主党の安住国対委員長はこれがよくわかっていないようで「解散の大義はなんですか?」と言い続けている。それを決めるのは実は立憲民主党だ。つまり「不信任の大義はなんですか?」ということになる。

そんな中で助け舟を出してくれた人がいる。それが岸田総理の「師」である古賀誠氏である。9名の岸田派の議員を連れて宏池会の中高の祖とも崇められる大平正芳氏の墓参りをしたそうだ。大平総理は党内造反の結果として衆参同時選挙に追い込まれ選挙戦の途中でなくなっている。大義なき選挙だったが大平さんの弔いということになり「香典票」を集めた自民党が勝っている。

その大平さんが亡くなったのが6月12日だったそうである。

大平氏は「同日選挙」に殉じている。つまりそれくらいの覚悟を持てと言っているのである。TBSが「エール」と書いているのはそのためだろう。ただしそのエールは鉤括弧の中に入っている。

実は古賀誠氏と岸田総理は半ば絶縁状態にあった。以前のTBSのインタビューで「総裁選に出てから連絡は一度も取っていない」などと語っている。つまりTBSは古賀さんと岸田さんの関係を知っているのだ。

古賀誠氏は麻生太郎氏と仲が良くない。さらに平和主義者としても知られており岸田総理が防衛費の拡大に突き進むのを好ましくないと考えてもいるようだ。さらに「宏池会は林外務大臣が引き継ぐべき」とも考えている。岸田総理が今でも岸田派の領袖の地位を手放さないのはおそらくは派閥内造反を恐れているからなのだろうが、背景にはライバルの林氏と古賀誠さんの存在がある。

このように「大義なき解散に踏み出してごらん」という政治の師の発言の意図が果たしてどこにあるのかはよくわからない。あるいは「崖から踏み出してごらん」と背中を押しているようにすら感じられてしまう。政界はとても怖いところなのである。

古賀さんのいう「大義を考えて解散している人はいない。解散の後に大義がついてくる」の「大義」は少なくとも大平さんの故事に従えば「大平総理の急死」だった。

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