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「LGBT外圧解散」は起こるのか?

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今回の主題は国内政局だ。特に何か重要な課題が解決するわけではないうえにそもそ「LGBT外圧解散」など起こるかどうかもわからない。面倒なことが知りたくない人は読まなくても良いと思う。

自民党が選挙準備が整わないうちに岸田総理が解散を選択する可能性がでてきた。アメリカの外圧によって押された結果、急進化した左派・右派によって岸田政権が押されているという構図だ。プレートが両面から押されてマグマが噴き出すといったイメージである。マスコミでは解散報道が過熱ぎみになっており「勢いでつい解散」も起こり得ない事態である。

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岸田政権には三つ性質がある。保守本流宏池会系の財政再建派、安倍政権のレガシーを継承した少数派政権、アメリカの意向を第一に考える岸田外交の延長という三つの顔である。この奇妙な混合が問題を引き起こしてきた。

まず岸田総理はバイデン政権の国際戦略に寄り添う形で防衛費増額を決める。次に財政再建派という顔があり「国債は使わない」として国債発行という選択肢を封じてしまった。

党内の最大派閥は保守派の安倍派だ。安倍派は防衛費増額には賛成だが増税には反対という立ち位置である。このため岸田政権は防衛増税の議論をまとめることができていない。

難民対策に関しては保守派の意向を汲み「スリーアウト制」の導入を目指している。立憲民主党はこれに反発している。現在迷走を続けている立憲民主党は無党派を取り込まなければならないとしつつも支持基盤のリベラルにも配慮を示さなければならない。対決姿勢を示すために内閣不信任案提出の検討に入った。

自民党には、麻生政権や菅政権が解散時期を見誤ったために短命に終わったという教訓がある。このため岸田総理は早期解散に前のめりのようである。麻生副総理も「早期解散派」だったのだが最近の記事を読むと「大義のない解散はできない」などと後ろ向きになっているようだ。となると「名前は出せないものの早期解散に前のめり」なのは本来専権事項として解散権を持っているはずの岸田さんということになる。麻生派と茂木派(昔の竹下派)がそれを抑えているという構図だ。

しかしながらここで思わぬ不確定要素が出現した。それがLGBT法案である。岸田総理はあまり中身には関心がないと言われている。にもかかわらずこれを押したのは「バイデン民主党政権が多様性擁護だから」なのではないかという観測がある。これが本当なのかはわからない。G7では主要テーマにはならなかったが事前の検討段階で猛プッシュを受けていたのは間違いがないようだ。これが安倍派の支持基盤を動揺させている。

安倍派の支持者にはアメリカは好きだがリベラルな民主党は嫌いという人たちが多い。声の大きい支持者たちの一部が現在「外圧に負けた」とか「自民党は変質した」などと騒いでいるようである。執行部は「造反もあるかもしれない」として維新と国民民主党の案を丸呑みしたが、会期末まで時間がなかったために自民党の党内では議論を行わなかった。

安倍派でも世耕弘成氏などはこの案を評価している。つまり安倍派を中から抑えようとしている。一方で外にいる「識者」たちはこの案に猛反発している。つまり安倍派の中にいる人たちが党内情勢を優先するか「保守世論」を気にするかで情勢が変わる。もちろん立憲民主党などのリベラルも反発している。おそらく党内から一定数の造反が出れば「岸田総理の求心力」が問われるだろう。これを一掃するためには議会を解散するしかない。

立憲民主党も埋没を恐れているが実は安倍派も党内で埋没しかかっている。埋没すればするほど声が大きくなるというのは左派も右派も変わりはない。立憲民主党の内閣不信任案が「ボタンを押してしまう」可能性が出てきたということになる。

これまでの事例を見ると党内保守派も最終的には抑え込まれて執行部の意見に従う可能性が高い。選挙で公認してもらえなければ元も子もないからだ。つまり造反は起こらず、内閣不信任案もスルーされる可能性が最も高いと言える。

この時点で解散を選択されても困る。国民は全く何について判断を求められているかわからない

冷静に考えるとLGBT法案に関心を持っている人たちは完全に埋没してしまっている。まず自民党には安倍系保守からの揺り戻しを期待してこの法案を長い間勉強してきた人たちがいる。この運動は過激化する立憲民主党に失望した「リベラル系女子」を引きつけていたという指摘がある。「リベラル系女子」は穏健な政治姿勢を求めているのである。だが、今回の動きを見て「自民党は実際には課題に興味がない」ということがわかってしまった。真面目に政治について勉強している人たちほど戸惑ったのではないだろうか。

一方でハイテク系男子は、なぜマイナンバーカードがこれほどドタバタするのかについて疑問を感じているはずだ。しかし大人たちの議論は「不安だから全部止めてしまえ」とか「これからは気をつけて作業するから大丈夫です」というどこか漠然としたものばかりだ。それどころかさらに適用範囲を広げようとしている。原因もわからないまま範囲を拡大すればおそらくもっと混乱が広がるだろう。「大人たちはどうしてこんな簡単なことがわからないのか?」と感じている人たちは多いはずだ。

最終的には河野太郎大臣が「俺が俺を処分する」と言っている。いうまでもなく河野太郎大臣が処分しても問題は解決しない。最も重い処分は更迭だが河野さんは総理大臣ではないから自身を更迭する権限はない。河野さんが今行うべきなのは原因を特定し議論のための素材を提供することのはずである。

どの政党も「無党派を取り込む」と言っている。だが、政治に真面目な人たちが政治について勉強すればするほど「いやここから何かを選べと言われても」と戸惑うばかりのはずである。

とりあえず次のヤマはLGBT法案が衆議院本会議を無事に通過するかである。なぜこれがヤマになってしまうのかはよくわからないがとにかくそういうことだ。13日の段階で「事前に色々と心配したが杞憂に終わったなあ」ということになってほしいと思う。

政治報道はなぜか解散一色になっていて「天皇が外国訪問するから解散はない」とか「いや皇嗣殿下でもOKのはずだ」などという憶測が広がっている。自民党OBは「大義なんか後からどうにでもなるんだ」と嘯(うそぶ)き、立憲民主党は「解散と不信任案は関係ない」と支離滅裂だ。総理の辞任の対抗手段として解散が選択できるのだから「関係おおあり」なのである。

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