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選挙制度改革でわかる各政党の憲法改正の本気度と本音

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萩生田政調会長が「憲法改正によって選挙制度を見直す必要がある」と訴えている。詳細は明らかにされていない。この選挙制度の改正と憲法について観察すると各政党の憲法に対する本音がわかる。自民党の多数派はおそらく憲法改正にはそれほど本気ではない。おそらく野党もそれほど護憲には本気ではない。ただ「例外」もいる。それが萩生田さんに代表される自民党内の急進派と野党の急進的な「護憲派」だ。野党サイドでは憲法の問題が楔となり野党共闘を妨げている。一方で与党サイドも「利害関係」の問題を憲法と結びつけてしまうとそれが楔になりかねないということを理解している。

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萩生田政調会長は「憲法改正」を前進させたい。憲法改正によって安倍晋三氏の後継であるということを力強く証明したいのだろう。幸いなことに萩生田政調会長にはそれほどのカリスマがない。このため萩生田発言は自民党や自公連立政権を分断するWedge Issueにはならない。さらに自民党の主流派も実は憲法改正にはそれほど前向きではない。

選挙制度改革には2つの異なるイシューがある。参議院の合区問題と小選挙区の区割り問題だ。

自民党議員のうち地方に地盤がある人たちは合区の問題を喫緊の課題と考えている。このため「憲法改正が間に合わないのであればまず法改正で」と訴える。是が非でも憲法改正を阻止したい立憲民主党は「国会法と公選法を変えれば都道府県単位の議員選出は可能だ」と言っている。

つまり、自民党はおそらく「憲法改正など当分実現するはずはない」と考えている。また立憲民主党は「とにかく憲法改正はしたくない」という立場でしかない。つまり実はどちらも憲法改正にはそれほど興味がない。彼らが興味を持っているのは憲法改正が選挙にどんな影響を与えるかである。つまり基本的には「損得」の問題なのだ。

この件で別の主張をしている政党がある。それが公明党・維新と共産党である。公明党と維新はそれぞれブロック単位の選挙制度を提案している。中規模の政党が議席を得やすい制度である。共産党は比例代表制を主張している。これも小選挙区では勝てない政党に有利な制度だ。

萩生田政調会長の所属する安倍派清和会は現在は最大会派になっているが党内では徐々に非主流派に追い込まれている。追い込まれれば追い込まれるほど憲法改正に前のめりになってゆくだろう。萩生田氏にも安倍派にもそれほどの政治的影響力はない。これは自民党にとっては幸いなことだ。

萩生田政調会長の今回の発言は10増10減を踏まえたものだが実は衆議院の区割りは10年ごとの国勢調査の結果を反映して決めることになっている。つまりこの問題は今後10年は出てこない。つまりこれを憲法改正に結びつけるのはそもそも無理筋だ。

加えていうならば、区割りについて政党の立場から憲法改正を主張するのはあまり好ましくない。自民党もその辺りはわきまえている。政治家の我田引水批判を避けるために有識者の中から「衆議院議員選挙区画定審議会」の委員が策定するというのが今の制度だ。実質的には総務省が主導しているなどとも言われるようだが政治家の利権とは関係がない官僚が仕切っていることで「あからさまな党利党略」批判を避けている。アメリカ合衆国では各州の政権に有利な区割りが行われることがある。これをゲリマンダー(ジェリマンダー)という。ジェリマンダーが横行すると議論による問題解決が難しくなり深刻な国内分断が起こる。

一方で自民党と公明党が抱える選挙制度に対する違いは分断の要因になる可能性がある。

憲法を改正するためにはまずはそもそも何が公平になるのかという議論をしなければならない。地域ごとの公平性を優先するならば当然現役世代には不利になる。高齢者は地方に多い。一方で全ての世代の公平性を優先するならばおそらくは選挙区を広くとって多様な意見を代表する人たちを選出した方がいいだろう。どうせ数では負けてしまうかもしれないがそれでも全国からの声を集めればかなり大きな力になる。

現役世代の漠然とした不満を代表する維新が「ブロック制」を提案しているのはそのためだ。実は公明党もブロック制を求めている。山口代表は踏み込んで「実は最初から小選挙区制には反対だった」と言っている。

自民党の主流派が憲法改正と選挙区制度の問題を分けて考えたい理由の一つはおそらくこの辺りにあるのだろう。本気で選挙制度と憲法を絡めてしまうと、この問題が自公連立政権を分断する楔になりかねないと分かっているのである。

既にTBSが「自民党支持者の57%が公明党との連立を解消すべき」というアンケート結果を報道している。まだ「ごく一部の報道機関」の調査に過ぎないがこれが一人歩きしてしまえばおそらく自公連立政権にとっては大惨事になるだろう。

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