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日本テレビが声高に「早期解散」を連呼するも岸田政権は身動きが取れない

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国会も会期末にさしかかっている。そんな中「岸田総理は早期解散に前向きなのでは」と声高に主張するテレビ局がある。それが日本テレビである。ただ日本テレビが騒いでいるだけという印象になっておりネットを含めた世論がこれに追従している様子はない。さらに三つの問題があり早期解散は難しい情勢になっている。

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国会が終盤戦に差し掛かっている。防衛増税議論や入管法改正など国民的議論が十分に尽くされたとは言えない積み残し課題があるため最後まで重要法案に集中してほしいところだ。そんな中で一部の放送局が前のめり気味に「早期解散」を煽っている。それが日本テレビである。「岸田総理は解散に前向きである」と自民党幹部の一人が言っていると書いている。「一人」の声を「解散論」に仕立てようとしているのだ。

おそらくこの「幹部の一人」は麻生太郎副総理なのではないかと思う。解散時期を逃したことが最終的に下野につながったという経験を持っており常々早期解散を主張していた。また公明党とは距離があるため公明党の牽制があまり気にならない。

ところがいくつかの事情が重なり解散は難しい状況になっている。

一つは公明党の抵抗だ。10増10減で変更される小選挙区の候補者調整でギクシャクしている上に創価学会を疲弊させかねない度重なる選挙運動には後ろ向きである。特に今は連立にとっては良い時期ではない。自民党ではいまだに「公明党の言いなりになるな」という声がある。例えばTBSがアンケートを取っているよう自民党の57%は「連立を解消すべきである」という回答だったそうだ。

立憲民主党支持者には根強い「共産党嫌い」の人がいた。これまで「政権維持のために」と目を瞑ってきた自民党支持者の中にも「本当は公明党が嫌いだ」という人が大勢いたようだ。今回の一連の騒動で公明党嫌いが掘り起こされてしまったようである。

萩生田東京都連が火元になっており、茂木幹事長はこれを鎮火させることができなかった。菅前総理と二階幹事長の「怪しい動き」も気になる。この状態で選挙に突入すれば地方組織はかなり混乱するだろう。

ただ、これは「最も大きな問題」ではない。そもそも解散の理由が見つからない。一部では「どうせ立憲民主党が内閣不信任案を出すだろうからそれを理由に解散しては?」という声もある。内閣不信任案が通れば解散はできるが内閣不信任案を否決しておいて「野党のいうことももっともだから解散します」とはなかなか言い出せないのではないかと思う。

ではなぜ日本テレビは早期解散に固執するのか。

さまざまな記事を読むと理由は二つあるようだ。まず、維新の勢いが増している。潜在的な有権者の不満が高まり2009年前夜に似てきたという認識があるのだろう。一度維新に弾みがつくと「これは政権与党も狙えるのでは」と考える有権者が一時的に選挙に引き寄せられる可能性がある。維新は現在選挙体制を整えている最中だ。彼らの準備が整うまでになんとかしたいと考える人がいるのだろう。

年末に向けて増税の話が出てくるのも気になる。国民が嫌がる議論が出る前に選挙を済ませておかないと「内閣支持率の低下に政権が耐えられなくなるのではないか」という危惧があるようだ。いわゆる「急進力の低下」である。

このため党内にある「早期解散の方がいいかなあ」という声を拾い拡声しつづけている。岸田総理が踏み切れないため「背中を押してあげている」という感覚なのかもしれない。

しかし日本テレビもさすがにニュースを創作するわけにもいかない。会談の結果日本テレビに好ましい結果とはならなかった。

おそらく早期解散を主張する麻生氏に対して「党内がまとまっていない」ということになったのではないかと思うのだが、なぜか「誰が早期解散に固執し誰が押しとどめているのか」についてはぼやかしている。

一方、自民党幹部の1人は5日夜、野党が内閣不信任案を提出するのを受けて岸田総理大臣は解散するとの見方を示しましたが、麻生氏、茂木氏のうちの1人は不信任案を受けての解散には否定的だということです。

やや焦りすぎという気がする。ネットが台頭したことによって世論はテレビの振り付け通りには動かなくなっている。だが、日テレの不安はあたってしまうかもしれない。

政権を手放した麻生政権末期に近い状況は生まれている。麻生政権は「カップラーメンって400円くらい?」や「漢字の読み間違い」などのおとぼけぶりが「この人は大丈夫なのかなあ?」という印象につながった。さらにこれに政党内部のゴタゴタが重なって政権を手放すことになった。

岸田政権ではまた政党内部のゴタゴタは表面化していない。だが岸田翔太郎氏問題をきっかけに「この人は人として大丈夫なんだろうか」というような感覚が生まれている。少子化対策について話し合われているが国民の期待とはどことなくずれているという印象もあるだろう。そこに「自分の息子だけは優遇するのか」という漠然とした不信感が重ね合わされている。

世襲議員には「この人は育ちがいい良い人なのかもしれない」という好ましい印象がつく。ところが「よく話を聞いてみたら単に浮世離れしているだけだった」ということになり「我々の代表者にはふさわしくない」ということになりかねない。麻生総理大臣と岸田総理大臣はこの「育ちの良さ」という共通点があり、どちらもそれがマイナスに働いている。

安倍総理大臣は野党の反論を利用し「だったら総選挙で勝負してやろうじゃないですか」と危機をでっち上げて選挙を乗り切ってきた。選挙に勝ちさえすればゴタゴタは上書きされてしまい求心力が維持される。こうして長期政権になったのが安倍政権だったと言えるだろう。

早期解散ができない理由は3つある。最初の2つは既に列挙した。公明党が反対しておりそもそも解散の大義がない。最後の理由はおそらく岸田総理の性格にある。オーソドックスな手法を好み「大義をでっち上げてまで解散しよう」というようなやぶれかぶれの手法を嫌うところがある。これも「育ちの良さ」からくる性質だ。メリットになることもあるがこと「政局」ではデメリットになる。現在「政局」に強い人菅義偉氏と二階俊博氏が政権中枢から離れており「育ちのいい人たち」だけで喧嘩をやらなければならない。

なお他の局は早期解散論が大きく出ているという伝え方はしておらず「公明党がは反対している」という文脈で紹介することが多い。TBSのタイトルは分かりにくいが「何かあれば解散しないといけないですが、今はそんなものはないですよね」と言っている。公明党が反対したから解散できませんでしたとは思われたくないのであろうということはわかる。このため「解散権を縛るべきではない」と言っている。

この早期解散論に最も焦っているのが立憲民主党の泉代表だろう。もともと内閣不信任案を出せば「ひょっとしたら躍進できるのではないか?」といううっすらとした希望があり内閣不信任案を出し続けてきた。だが党内の立て直しに失敗し「150議席取れなければ代表を降ります」と宣言してしまったため、内閣不信任案を出せば単に代表を降りる時期が早まるだけということになる。

いずれにせよ国民の間に「今すぐ選挙をやってほしい、国民の意見を聞いてほしい」というような熱心な世論の盛り上がりはない。単に一部の人たちが騒いでいるだけと言った感覚になっている。

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