ざっくり解説 時々深掘り

三笠フーズの汚染米問題

カテゴリー:

事件の概要

GATTの取り決めにより、日本は外米を買い付ける必要がある。これをミニマム・アクセス米という。この米の中には発がん性のカビ(アフラトキシン)や禁止農薬(メタミドホス)に汚染されたもの含まれている。これらを事故米という。この事故米はノリなどの工業製品に使うことができるので、格安で払い下げられる。

大阪の米国販売加工会社「三笠フーズ」は事故米を買い入れ、二重帳簿を付けてごまかした上で、食用として2003年ごろから転売してきた。事故米は焼酎メーカーや米穀店に卸されていたと見られるのだが、どこの会社が買い入れたか分からない。従って、最終的に誰が食べたのかもよく分かっていない。どうやら、大手航空会社、駅弁会社、すしチェーン、スーパー、ホテル、外食産業、麺類、餃子やシュウマイの皮、レンジ加熱のご飯などに混ぜられていた模様だ。

当初は本社や経営者(冬木三男社長)は関与を否定していたのだが、最終的には指示したことを認めて「国民の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわび申し上げます」と謝罪した。

農林水産省も最初は、どこの会社が事故米を買ったのかを公表しないとしていたのだが、騒ぎが大きくなり、ついに公表に踏み切った。有名焼酎の宝山が含まれている。一部報道では宝山は2億円の被害を受けたという。

テレビは当初「事故米」と報道していたのだが「汚染米」というよりインパクトの強い名前に切り替えた。

三笠フーズ

三笠フーズは多額の利ざやを得たとされる。社長の申告が正しければ10年に渡って、利ざやによって「得をした」と考えられる。この後どうなるか分からないが、会社が小さければ倒産の危険性もある。短期利益と引き換えに経営の存続が危うくなっている。会社には「株主」「経営者」「従業員」などのステイクスホルダーがおり、仕事を失う従業員が仕事を失う可能性があるだろう。実際には三笠フーヅの社員・パートはすべて解雇され、一部が親会社に再雇用されるのだという。「この後、全員を雇用することはできない」としている。社長は国民に謝ったのだが、社員にも謝罪しなければならなかったのではないだろうか。しかし一方で「価格競争に勝ち抜くために工夫をしなければ、経営が立ち行かない」と述べている。仕方なくやった、自分も被害者だと考えているのかもしれない。

農林水産省

工業用の米としては売れ残っていたわけで、この米を売りさばく事ができた。いくらかの損金補填にはなったかもしれない。3トン1万円ということになればほとんど廃棄のための料金といってもよいだろう。(実際、朝日新聞では「利益共同体」というような記事が出ているが利益とまではいかないだろう。保存、廃棄に損金がかかるということなので、安く引き取ってもらいたかっただけなのだと思われる)検査体制が甘かったことは確かなので国民の目は厳しくなるだろうが、すぐに実害はないだろう。一方、食の安全に関わることであり、政争の具として利用されることもあり得る。すると農林水産省にとっては好ましくない事態も予想される。前回1995年に米で問題が起きた時には食管制度が見直され、食糧庁は解体した。官僚不振が叫ばれている昨今あまり目立つのはよくない。担当者は処分される可能性があるので「損」をしたと言えるかもしれない。


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です