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菅政権の携帯電話料金引き下げ施策の結果、スマホメーカーFCNTが経営破綻

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FCNTが経営破綻した。「売上は好調だったのになぜ破綻したのだ?」として話題になった。原因は複合的だが、原因の一つとして端末購入価格補助が22,000円に抑えられたことが挙げられている。これは菅政権が打ち出した「携帯電話料金引き下げ」のための施策だったのだから菅政権の政策と稚拙な総務省の運営がメーカーを潰したことになる。

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元々は富士通系のスマホ会社だったFCNTが経営破綻した。直前まで売上は好調だったため「衝撃」が走ったと伝えられている。

スマホに高付加価値を求める人たちはiPhoneなどを選択する。FCNTは薄利多売のセクターに追い詰められていったようだ。特に高齢者はあまりお金を払ってはくれないが対応に非常に手間がかかる。これが「売上は上がっているのに儲からない」という構造を作り出していた。

メーカーやキャリアにはサポートサービスを充実させて収益化するという選択肢もあっただろうが「サービスはメーカーの好意」と考える高齢者にはあまり馴染まなかったのではないだろうか。「失われた30年」などと言われるうちに国民は政府を信じなくなった。高齢者は「自分の身は自分で守らなければならない」と考え支出を控えて現預金を溜め込んでいる。ただしこれは「間接的な影響」である。

今回指摘されているのが改正事業法の影響だ。通信契約に紐づいた割引が規制されたため原価の高騰につながった。

高齢者は端末価格には敏感だがその後でいくら支払っているかにはあまり興味を示さない。またサポートサービスのような付加価値には金を払いたがらない。だが、実は可処分所得はそれほど低くない。この結果市場は「見かけの端末代金を安くして通信費に混ぜ込む」という手法を選択するようになる。

政府はこれを問題視し端末購入価格補助に22,000円という上限を設けた。この結果、回線料金と一緒に端末代金を負担させるという今までの戦略が取れなくなった。

もともとこの方針は菅総理の人気取りの政策だった。おそらく当初の目論見は「格安スマホ会社への乗り換え促進」を通じてキャリア間の競争を加速させることだったのだろう。つまり市場に競争原理を導入しようとした。だが、消費者のブランド志向は根強く格安キャリアへの乗り換えは進まなかった。新規参入組の楽天もなぜかその後苦戦している。自前の通信網を整備するために無理が生じ遂に会社から25億円を詐取するという事件まで起きている。

ただこの「政策」がIT業界から反論されることはなかった。菅政権退陣の時に書かれたこの文章は一見菅政権の政策を肯定しているように見える。

だが実際には次のような文章で結ばれており「政策をディスっている」ことがわかる。

菅政権によって「携帯電話料金の値下げ」が実現したが、結果を急いだため、通信業界に様々な傷跡を残した。この傷が将来的に国民生活に悪影響を与えないか、今後、検証していく必要がありそうだ。

それでもタイトルで高評価してみせざるを得ないのは「政策批判が社会への抵抗」と見られるような風潮があるからだろう。またITライターも総務省に嫌われてまで自分達の主張を展開することはない。睨まれると仕事ができなくなってしまうからである。

だが結果は一目瞭然だった。DoCoMoの発表によると2019年にはハイスペックとスタンダードの割合が拮抗してたが、2021年にはハイスペック機が売れなくなってしまった。

FCNTが海外展開していればこうした政府規制からは逃れることができたのかもしれないのだが、これまでのビジネス上のマインドセットを捨て去ることはできなかったようだ。結局「規制に合わせてできるだけハイスペックなものを作ろう」ということになり政府規制の22,000円に合わせた機種を作った。このため売上に占める原価コストが8割にまで嵩み近年の海外のインフレによるコスト高騰をカバーできなくなってしまった。

この結果「一見好調なのに突然死」してしまったわけだ。

もちろん全て政府が悪いというわけではない。しかしながら政府の見当違いな施策は「複合的な原因」の一つであると言って良い。

政府の規制は結局守られることはなく総務省は携帯5社に行政指導を行っている。

高齢者はお金は持っているのだから一旦契約を結んでしまえば後はあまり嫌がらずにお金を払ってくる。このため「小さな文字で条件を書いておく」などの違反が横行していたようだ。結果的に現状を追認せざるを得なくなり規制緩和の検討を始めている。

結局、SHARPを除くメーカーを退出させてしまった。つまり総務省の規制はAppleやサムソンに市場を献上するだけに終わってしまったのだ。

菅総理大臣は「スマホの料金が安くなれば人気が高まるだろう」とあまり悪気なく総務省に改革を命じたのだろうが結果的に国内のスマホメーカーを破壊しつつある。「壊す」ことができても「次」が作れない。

同じような構造で現在は日本型の雇用体系が破壊されようとしている。もちろん次はない。単に破壊するだけでありあとは「神の見えざる手」にすがろうというのが現在の「政策」だ。

岸田政権はこれを「新しい資本主義」と言っている。その一環として進めら得ているのが退職金への課税強化である。

最初にこの問題を取り扱ったのはBloombergだった。課税強化ではなく「優遇見直し」という説明だ。現在の仕組みでは勤続20年を過ぎると1年当たりの控除額が40万円から70万円に跳ね上がる。つまりこの30万円の控除をなくしてしまえというのが今回の改正の方向性である。

さらにこの方針が骨太の方針に乗ることになった。日経新聞が報道している。

そもそも「日本型雇用慣行」が生まれたのは戦中の労働者不足を改善する必要性があったからである。つまり戦時体制として必然的に終身雇用制度が生まれた。戦後は日本の共産主義化を防ぐために労働者や農業従事者を体制側に「抱き込んでおく」必要があり、労使協調型の慣行が定着していった。確かに時代遅れの制度である。変えてゆくこと自体は悪いことではない。

ただ「日本が成長しないのは労働者が転職に後ろ向きだからである」という課題設定はあまりにも乱暴すぎる。「失業給付制度を見直し自発的に転職がしやすい環境を整備する」と言っており、退職金のインセンティブを下げると同時に失業給付で人を動かそうとしている。このやり方もいかにも乱暴だ。もう一つの対策が「リスキリング」だがそもそもその次の産業が見えていないためせいぜい「社内でITアプリの研修でもやればなんとかなるのではないか」という発想にしかならない。

政治と民間の間に交流が少なくなり世の中がどのような仕組みで動いているのかが政治の側からわかりにくくなっているのかもしれない。また議論しているのはいつも限られたメンバーなので新しいアイディアも生まれてこない。このため「とにかく今ある仕組みを壊してしまおう」という乱暴な議論だけが横行することになった。

とはいえ今回のFCNTの破綻の構造問題を整理して政治的アジェンダに展開するような野党の存在はない。今回もこの破綻から政治が学びを得ることはなく「どうせ日本の製造業はオワコンなのだ」と諦めるしかないという状況になりそうだ。野党を一部の人たちの占有物から解放して国民の生活に目を向けさせるためにはどうしたらいいのかと考えるが妙案は浮かばない。

政治の側は「企業や労働者がだらしないから日本は成長しない」と考えているのだろうが、おそらく国民の側は「政治が何もやらないから日本はこのままなのだろう」と考えている。冷たい対立が今後何を生み出すのか、今はまだ見えない。

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