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少子化対策は特例公債で決着へ

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少子化対策の費用は「特例公債」で賄われることになった。岸田総理は「先送りではない」と言っているが、すでに「これは先送りである」と言う分析が出ている。背景にはゆっくりと進む公明党の地盤沈下と維新の躍進である。組織票が高齢化するとともに既存政党に対する疑念が蓄積している。このような状態ではとても国民に対して追加負担を求めることなどできない。そこで「しばらくは特例で」と言うことになったようだ。ただ今後も地盤沈下は続くのだからこの「特例」は延長を繰り返す可能性が高いのではないかと思う。

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岸田総理が少子化対策に対して特例的に公債で賄うと言う方針を打ち出した。一部から「問題の先送りでは」と批判が出ているが、総理は「先送りとの批判は当たらない」と反論している。

そもそも公債は国債とどう違うのかを調べてから「これが先送りなのか」について評価しようと考えた。だが、そんな必要はなかった。すでにNRIから見解が出ている。

財源問題で紛糾が続き先送り的要素を強める少子化対策:政府は「こども特例公債」を発行か

国の金庫の財源にすると「国債」になってしまう。そこで「子供金庫」と言う別の財布を作って「公債」を発行すると言う仕組みだ。国債という名前を使わず法的にも破綻させないために一生懸命に知恵を絞ったのだろう。だが、NRIは「つなぎ国債だ」であり先送りだと断定している。

ではどうしてこんなことになったのか。中期的に退潮傾向にある創価学会を支持母体にしている公明党が直近の選挙に焦りを募らせているという点に関してはすでにお伝えした。公明党は「石井歌舞伎」と大阪の水面下での交渉を使い分け党勢の維持に努めている。自民党の支持層は増えていないが、うっすらとした政治に対する反発は強まっており大阪を中心に維新が躍進している。

しかし、今回の件で一つ見逃していた問題があった。実は自民党内にも「おかしな動き」があるそうだ。

デイリー新潮が「二階元幹事長は「総選挙で小池都知事を維新から出馬させたい」 菅前総理の“自民離党”も現実味か」と言う記事を出している。創価学会を毛嫌いする麻生太郎氏が「公明切り」を画策していた。この動きに二階俊博氏と菅義偉氏が反発しているという記事である。

この記事には二つの話が出てくる。

  • 二階俊博氏は選挙に強い維新に接近し小池百合子氏を維新に合流させようとしている。
  • 菅義偉さんが河野太郎・小泉進次郎両氏と共に自民党から袂を分ちたい。

もともと宏池会は官僚派の吉田学校の流れを組んでいる。つまり世襲化した官僚派と言って良い。自民党にはこの他に非世襲系の政治家がいる。「地方議会あがり」で登り詰めた人たちの系統である。つまり、世襲系官僚派の麻生・岸と非世襲系の二階・菅と言う対立構造だ。

デイリー新潮は「菅さんは外に出るのではないか?」と言っているのだが、中にいて党内を分断すると言うやり方も考えられる。非世襲系は「寝業」の世界なのでこの辺りはなんでもありなのではないかと思う。実は中にいて「間をつなぐ」役割に徹した方が非主流というポジションを高く売れるのではないだろうか。

熱狂的な支持基盤のない岸田政権は「自分達を高く売りたい」人たちに支えられたかなり危うい政権である。

岸田総理は現在「保守」とされる清和会を抱えている。力の強い会長はいないが数としては最大という極めて厄介な存在だ。ところがそれ以外にも党内には「世襲系の議員を面白く思っていない」人たちがいる。

これではとても党内をまとめることなどできそうにない。

岸田総理はG7後の勢いがあるうちに選挙を片付けてしまいたかったはずだ。たとえば「今の政治体制を守るために負担を恐れてはいけない」などと力強く宣言することもできたはずだ。だが10増10減の混乱を収めることができず早期解散は叶わなかった。

本音では国債発行を避けたい執行部は最後まで粘ったようだ。彼らが期待したのが「ほんの数百円の負担で済む」という社会保障費だった。だが、読売新聞の「少子化対策財源に社会保険料上乗せ案、与野党から異論…「タコが自らの足を食べるのと同じ」」を読む限り「党の内外から」の異論を抑えることができなかったようだ。とにかくいかなる形でも負担増と見られるようなことは避けたいと考える議員が多い。

結局、党内で「選挙に弱い」議員を多数抱える自民党と公明党は財源論にまでは踏み込めなかった。だから今回の子育て政策の議論では「財源問題は先送り」された。

ただ、国民の負担増は避けられないだろう。負担増には3つのルートがある。1つは税によるもの。1つは社会保障費によるものだ。もう1つは金融政策の行き詰まりによってじわじわとツケを払うというルートである。最初の2つは請求書がくるが、最後の1つは請求書がこない。結局、与党は請求書のないパスを選ぼうとしている。

元日本銀行審議委員の桜井真氏は金融政策の修正の必要性を認識しながらも「選挙が落ち着くまでは無理だろう」と分析している。特に懸念されるのは地銀の崩壊である。地方経済への影響が大きいため政治的な配慮が求められる。しかしながら現在の政治状況を見ているとおそらく政治がこの問題を解決することはできないだろう。選挙が終わっても「ギリギリ当選した議員」が拡大再生産されるだけで状況が改善される見込みはない。

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