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東京では前面で戦争、大阪では水面下の交渉 公明党の執行部は交渉戦術を使い分ける

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時事通信が今回の自民党の完全敗北について記事を書いている。岸田総理との会談は前もってセッティングされていたと強調し「こうでもしないと維新に接近される恐れがあった」と説明する。選挙区を召し上げられた形になる埼玉と愛知に配慮しだのだろう。石井幹事長が記者団の前で見栄を切ったため「前面での戦争」という印象になった。だが、どっちみち公明党は「維新と交渉するだろう」と言われているそうだ。ただこちらは水面化で交渉するようである。

公明党の政治家たちが組織の結束を権力に売り込むための「凄腕の代理人である」ということがわかる。世襲が増えており担がれ慣れている自民党執行部はこの凄みに負けたのかもしれない。

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時事通信が「「公維接近」自民が警戒 与党党首・幹事長が並行会談」という記事を書いている。

岸田総理との会合は前々からセットされていたという点を協調しつつ

関係者によると、自公のトップとナンバー2が並行して会談したのは「偶然の一致」。ただ、自民側は公明に伝える内容を事前に綿密に擦り合わせた上で会談に臨んだ。

こうでもしないと「公明党が維新に接近してしまう」という危機感があったのだと説明している。

決着を急がなければ、公明が衆院選の関西6議席維持に向けて日本維新の会になりふり構わず接近し、連立政権に深刻な亀裂が生じかねないとの危機感がある。

庶民のレベルでは「自民党が勝とうが負けようが別にどうでもいい」のだが、おそらく自民党にとって体裁は大きな問題なのだろう。背景には愛知と埼玉の反発がある。つまり彼らに対して「維新と接近されるよりは公明党を味方につけておいた方がいいだろう」と説明できるようになっている。

茂木氏が約束した埼玉と愛知での公明支援に自民の地元組織は慎重姿勢を崩していない。埼玉県連の柴山昌彦会長は記者団に「丁寧な説明がなければ『はい、そうですか』と言うのは難しい」と指摘。愛知県連の丹羽秀樹会長も「もっと丁寧に地元と調整していくことが必要だ」と語った。

ただこの「反発」も県連をまとめるためのお芝居である可能性がある。県連トップも「はいわかりました」とは言いにくいだろう。今回は石井幹事長の「石井大歌舞伎」から始まったのだが一連の動きは全てどこか芝居がかってみえる。このあとで見られるのは予定調和的な「茂木歌舞伎」になるかもしれない。ただ、ここで筋書きにないことを話す人が現れるとお芝居はめちゃくちゃになる。

ただこれはどうやら説明のための説明のようだ。「公明党の維新への接近」もまた既定路線とされている。時事通信にこれとは別の独立した記事がある。

公明、関西6選挙区の擁立発表 維新に先手、衆院選駆け引き

勢いのある日本維新の会が対抗馬擁立に意欲を示す中、先手を打った形。今後、維新と水面下で交渉し、妥協点を探ることを視野に入れているとみられる。

維新は「既得権を破壊する」として躍進してきた政党だが実際には水面下で色々な交渉もやっている。選挙区で動員が見込める創価学会票を欲しがっている維新候補者も多いはずだ。そこで「どっちみち住み分けをやるのではないか」と考えられているようだ。

公明党の戦略は創価学会票を固めつつ「その時の政権政党にがっちりとついてゆく」というものだ。大阪では既に維新が与党状態なのだから権力にどれだけ高く組織を売り込めるかが「公明党側」の腕の見せ所なのだろう。維新としても協力関係が表面化さえしなければ有権者にはいかようにも説明ができる。あとは「それでも独自候補を立てるのか」あるいは「別の理由を見つけて候補者擁立を見送るのか」ということになりそうだ。

公明党の政治家はいわば支持母体の「代理人(エージェント)」である。支持母体をできるだけ高く売るためには表に出てきて歌舞伎もやってみせるし、必要とあれば水面化での交渉も行うのだろう。世襲が多く担がれ慣れている自民党の執行部がこれに太刀打ちできないのもやむを得ないのかもしれない。世襲化した「御神輿型」民主主義と権威主義的な色彩の強い組織の実力差といえる。

「それにしても」と思う。なぜこれほどまでに選挙協力の話が出てくるのか。おそらくは与党側は早いうちに選挙がやりたいのだろう。ところが10増10減の混乱があり岸田執行部はサミット後の選挙ができなかった。

少子化対策の財源は結局決められかった。防衛財源と一緒に年末に議論をするようだ。どっちみちこの時に揉めるのだから執行部が争点を隠したというわけではなく選挙に弱い議員たちを説得できなかたのではないかと思う。

また、元日本銀行審議委員の桜井真氏は「日銀が金融政策を見直せば地銀に影響が出る」という理由ですぐには政策が修正できないだろうという予測を出している。桜井氏も「政策が変更できるとしても10月以降であろう」と言っている。つまり、こちらも選挙は早くても秋まではできないだろうと見ていることになる。

ただし、これらの情報を元にすると冬には各種の増税議論がありまた金融政策を通じて一部の地銀に問題が出てくる可能性があるのだろうと予測ができる。選挙に弱い議員たちに配慮して問題を先送りにしても「かろうじて当選した」議員がいなくなるわけではない。今やっていることはおそらくはいつかは処理しなければならない問題の先送りにしか見えない。それは予算や金融政策の問題だけではない。うっすらと降り積もった「国民の政治離れ」もまた問題の一角なのである。

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