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自民党が公明党に完全平伏宣言し2つの選挙区を「献上」

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自民党と公明党が党首レベル・幹事長レベルで会談した。「埼玉14区と愛知16区で公明党さんの応援に回りますからどうか見放さないでください」という宣言だった。これを記者たちが見守る中でやってみせた。ただ、公明党は東京では非推薦と取り下げないとしており東京都連が「見せしめ」として残されている。結局、岸田執行部はネット世論よりも「今そこにある組織票」を選択したことになる。今後は自民党都連の対応も注目される。

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公明党の石井幹事長は「最終決定なのでもうお会いしません」と茂木幹事長に一方的に宣言していた。5月25日の「信頼は地に落ちた」発言は瞬く間にネットやテレビで取り上げられ永田町は大騒ぎだった。一週間に渡る「石井大歌舞伎」といっても良いのだろうが結果的には自民党の公明党に対する依存ぶりをよりくっきりと際立たせる結果に終わった。

結局、岸田総理が出てきて調整するしかなくなり、茂木幹事長が石井幹事長と会談している時間に岸田総理と山口幹事長が会談し「埼玉14区と愛知16区」は差し上げますということになったようだ。正確には「独自候補者は立てません」という宣言である。

朝日新聞によると埼玉14区は三林裕巳さんが父親から引き継いだ地盤だったようだ。この衆議院議員3世の三林さんは新13区に移るようだ。ここは土屋義彦元埼玉県知事の娘の地盤だったようだが土屋さんは新16区に移る。愛知16区は新設区だという。自民党がまとまる前にいち早く公明党が候補者擁立を決めていた。

自民党は世襲政党化が進んでいる。小選挙区制で区割りの変更が頻発するようになると世襲議員が持っていた地盤が引き裂かれ利害調整が難しくなる。

一方で支持基盤が高齢化しているとはいえ公明党は執行部が「ここに出なさい」と指令すれば候補者を見つけるのに苦労しない。あとは「支持基盤が支持した人」に票が流れるという仕組みだ。その候補者がどんな人なのかはあまり関係がない。

皮肉なことに民主主義を促進するために作られたはずの制度に民主的な候補者選定が追いつかなくなっている。一方で選挙まで時間がない場合は権威主義的な傾向が強い政党に有利だ。自民党が組織として候補者を育成し応援する方法論を獲得していないからこそ起こる現象だといえるだろう。

今回の石井劇場は「公明党に頼らなければ当選できない」と怯える候補者たちを多数動員することに成功した。たとえばFNNは「悲鳴」と表現している。「公明党に頼らないとやってゆけない議員がそんなにたくさんいるのか」と驚いた人も多いのではないだろうか。これも「石井大歌舞伎」の成果であろう。

一方で公明党は関西では部外者化した有権者に負けつつある。維新は「政治家は何をやっているのかわからない」という有権者を取り込み「大阪占拠」を完成させつつある。我が国の小選挙区制度が大きな曲がり角にあることがわかる。有権者は完全に談合型選挙から除外された。だがそれが却って政治の他人事化を招き既存政治に冷淡な有権者を育成している。

今回の件が「平伏」「献上」と報道されるかは微妙である。田崎四郎さんTBSの「ひるおび」で「今回の岸田総理と山口代表の会談は前々から約束していた昼食会である」などと説明していた。慌てて公明党を取りなしたとはみられたくないのかもしれない。今回の報道は岸田総理と山口代表の会談をメインに扱い幹事長会談はサブのような扱いになっているが、今後政権に近いコメンテータたちが今回の件をどうソフトランディングさせるのかにも注目が集まる。「雨降って地固まるでしたね」ということにするのではないかと思う。

一方で今回の件には表に出てこなかった明確な敗者がいる。

1つは萩生田東京都連だ。今回は、萩生田会長が「地元で公明党の候補を応援したくない」という党幹部を抑えきれなかったのが騒動の原点になっている。萩生田光一氏も地元で創価学会との関係があまり良くない。別の宗教団体との関係が指摘されており創価学会との間にパイプがない。。組織内の騒ぎを「全国レベル」に延焼させてしまった上に今回の一連の報道ではいっさい表に出てきていない。だが東京都レベルでは「対応を一任されてた」ままだ。

公明党は東京都に関しては非推薦を維持している。このままの状態が続けば「東京都だけ公明党の指示が得られず惨敗」ということになりかねない。つまり東京・自民党は「叛逆の晒し者」という扱いになってしまうのだから必死で有権者を説得しなければならないだろう。

情勢が回復せずさらに誰も公明党との中を仲介してくれなければ東京都の選挙の弱い議員たちを道連れにすることになる。創価学会の唯一のパイプとされる菅義偉さんが動くのか、あるいは「誰かのクビ」を献上して許しを乞うのかなど今後の動向と幹部の去就が注目される。

また「いわゆるネット保守」と言われる人たちの「リベラル色の目立つ公明党を見限って他の政党と連立を組むべきだ」という意見も執行部には全く全く影響を与えなかった。少なくとも現在の執行部からは「単なる浮動票」としか見なされていない。彼らが今欲しているのは目先の組織票なのである。

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