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ベラルーシのルカシェンコ大統領が新しい核保有国「ロシア・ベラルーシ連合国」構想を明らかに

今日「ルカシェンコ大統領がプーチン大統領と会談した後に倒れた」と言うニュースを伝えた。この記事では反体制派のツェプカロ氏の情報であるため「すぐには飛びつかないほうがいい」と言うようなことを書いた。

だがこれと時を同じくして、ルカシェンコ大統領がロシアのテレビのインタビューに応じ「ロシア・ベラルーシ連合国」構想を明らかにしたと複数のメディアが伝えている。この連合国家の核兵器はおそらくはロシアが管理するのだが「参加国には核の保護が与えられる」とルカシェンコ大統領は主張している。

この2つのニュースを結びつけ「ベラルーシをロシアに併合した後でルカシェンコ氏が消されたのではないか?」可能性が排除できなくなったと考えたのだが、どうやらこれは杞憂だったようだ。

その後、ベラルーシの国営ベルタ通信や大統領府のSNSはルカシェンコ大統領の元気な様子を伝え「ツェプカロ氏の指摘は事実無根だ」と反論した。少なくともオンライン上では健在ぶりが確認された。またベラルーシが即日ロシアに併合されると言うようなことも起こらず、ニュースとしては「いつも通りの」ロシアとベラルーシ情勢ということになった。さらに「連合国」のニュースもルカシェンコ大統領の思いつきであるという形で整理されたようだ。ロイター通信が伝えている。

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まず、最初に前回のエントリーについておさらいしておく。確かにプーチン氏がルカシェンコ氏に手をかけた可能性はあるが、民主化勢力を刺激し西側の介入を招きかねないのだから情報の信憑性は低いのではないかと書いた。

ところがその後になってCNNが新しいニュースを伝えている。

ルカシェンコ大統領は日曜日に国営のロシア1チャンネルでインタビューに応じたとされている。このインタビューの内容がなかなか刺激的だ。ロシアとベラルーシの連合国家構想を明らかにした上で「参加国には核兵器の庇護が与えられる」と主張したそうだ。既に1999年に署名された条約による両国間は既に広範な同盟の法的基盤を確立したとしている。つまり新しい立法手続きは必要ないということだ。

インド系のWIONも同様の記事を書いているためインタビューの内容には間違いがないように思える。

ニュースの順番なのだがNewsweekによると入院のニュースが(5/28/23 AT 7:23 AM EDT)となっておりロシアの同盟国には核兵器が与えられるとするニュースが( 5/28/23 AT 4:25 PM EDT)となっている。ただしNewsweekの記事は木曜日に撮影されたとされる別のフッテージである。

仮に入院と「連合国家」が独立したものでないとすれば「どうやら消息がわからなくなった」ニュースの後で「連合国家」のニュースになると感じた。すでに「噂は信憑性が低い」と書いていたため後追い記事を書かざるを得なくなった。

ロシアとベラルーシの国家統合に関しては2022年3月に記事が出ておりすでに首脳レベルで話し合いが続いていたようだ。最終的にロイターが整理したものを併せて読むと、ルカシェンコ大統領としては既に連合国家が成立しているという認識のようだ。

一部の情報機関は「ルカシェンコ氏はミンスクに戻ったようだ」とこれを否定しており、最終的に時事通信はベルタ通信と大統領府のSNSが「大統領の健在ぶり」を伝えたと報じており、特に何事もなくこちらのニュースは終息しそうだ。

プーチン大統領が「構想」を発表すればベラルーシが併合されたように見えてしまう。だが今回は少なくとも見かけの上ではベラルーシ側から「連合国」を提案したことになっている。また一方的に連合を宣言することで民主化勢力が動き出す前に事態を収束させようとした可能性があるということになる。

G7が将来の核兵器廃絶を訴えながら同時に核の傘の存在を肯定していた。このタイミングでロシア側が「自前の核の傘」計画を作りそれを「恩恵を受ける側」のルカシェンコ大統領に語らせていると言う点に衝撃がある。

最終的にロイター通信はこのニュースを次のようにまとめた。つまり単なる思いつきであり特にニュースとして扱う意味は高くないというニュアンスになっている。

  • カザフスタンも「この連合」に入れば核の傘が提供されるという「ルカシェンコ大統領個人の見解」を披瀝した。
  • カザフスタン側はロシアとはすでに経済協力の枠組みがあるので特にこれ以上の統合は必要ないと表明した。
  • カザフスタンのトカエフ大統領は「彼の冗談にお礼を言う」として真に受けないことにした。カザフスタンは核不拡散条約と包括的核実験禁止条約に加盟しているので必要ないそうだ。

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