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トルコのエルドアン大統領が大統領選挙に勝利宣言

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トルコのエルドアン大統領が勝利宣言を行ったと複数のメディアが伝えている。トルコはNATOの枠内にありながらEUの外にある。この特異なポジションのため、エルドアン大統領はたびたび「親ロシア的」な発言で欧米を振り回してきた。外交政策上、ヨーロッパは親欧米派と見られるクルチダルオール氏が政権を取ることが期待していたはずだが、結果は欧米の期待通りにはならなかったようだ。キーになったのは少数民族クルド人に対する扱いだった。

なおこのエントリーは進行中の出来事について扱っているため場合によっては事後更新を行う場合がある。特に野党のクルチダルオール氏が結果を受け入れるのかがまだ伝わっていない。

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トルコのエルドアン大統領が勝利宣言を行った。日本語では日経新聞が伝えているアルジャジーラなども伝えている。開票率は98%でエルドアン氏の得票は52%と僅差だったようだ。

エルドアン大統領はNATOの枠内にありながら親ロシア的な発言を繰り返し欧米を振り回してきた。最近では揃ってNATO入りを熱望するフィンランドとスウェーデンを分断したことで知られている。拒否の理由はスウェーデンがクルド人勢力を匿っているというものだった。つまり国益のためにNATOのメンバーシップを利用したのである。

大統領は国内でも経済問題を抱えていた。トランプ大統領の制裁によりトルコ経済は苦しい状況に置かれた。これを悪化させたのは「エルドアン経済学」と呼ばれる独自の経済理論だった。このエルドアン経済学のためトルコリラは暴落しトルコは激しいインフレに見舞われた。

今回わかったのは一見めちゃくちゃに見える政策こそがエルドアン氏の人気を支えているということだった。エルドアン経済学は金利を抑え国民が住宅を買いやすくすることなどが目的になっているものと思われる。トルコ、シリアで50,000人以上が犠牲になる大地震が起こり耐震偽装などが問題になった。しかしシリア国境に近い南部はエルドアン氏の「シリアで訓練を受けたクルド人が国をめちゃくちゃにする」という主張を信じる傾向にあったようだ。AKPは耐震偽装は一部の建設会社が引き起こしたと主張しこの危機を乗り越えた。建築業者が多数逮捕された時BBCは「災害全体に対する責任から国民の目をそらすのが狙いだと、多くの人が受け止めることも予想される」と書いていた。だが結果的に国民が信じたのはAKPの側だった。

ジャーナリズムが政権側に支配されており国民は信じたいものを信じるという傾向にあったようだ。外から見ればインフレが進行しているのだが中にいるとあまりそれは感じられない。また不正があっても「国民にとって心地よい説明」が準備されればそれを信じてしまう。メディアが規制される中でトルコの国民は「茹でガエル」のような状態になっているのかもしれない。

親ヨーロッパ派と言われるクルチダルオール氏はクルド系政党の協力を得つつ政権奪還を推進しようとした。得票率第三位だった極右候補が「クルド系と組んでいるクルチダルオール氏は信頼できない」としてエルドアン支持を表明し、結果的にそれらの票はエルドアン氏に流れたようだ。

インフレなどの問題があっても「最終的にはエルドアンさんがなんとかしてくれる」と信じていると考える国民が大勢いることがわかる。メディアは既に政権が抑えてしまっているため、エルドアン氏に批判的な報道は行われない。一時は野党が支持を伸ばしたが2022年冬ににエルドアン氏が年金の拡大や最低賃金の引き上げを行うと支持率が回復している。

エルドアン氏は既に20年トルコを統治している。今回の選挙結果が認められればもう5年間はエルドアン時代が続く。つまりロシアによるウクライナ侵攻などに関してヨーロッパはこの難しいエルドアン大統領と付き合い続けることになる。

アルジャジーラによると次の争点は地方選挙である。野党系クルチダルオール氏が勝利しても議会はエルドアン派が握っているため「親ヨーロッパ的な政策に舵を切るのは難しいだろう」と言われていた。エルドアン氏の政党がイスタンブールやアンカラなどの都市部を野党から奪還できるかが争点になる。

外交的にはトルコがスウェーデンのNATO入りを支持するかどうかが争点になるのだが、これは極めて難しそうだ。大統領選挙は今回初めて決選投票にまでもつれ込んだわけだが民族主義色が濃くなっていったようだ。つまり反クルド色はますます強まっていることが予想される。

スウェーデンはクルドの支援勢力ということになっているため今の状態でスウェーデンのNATO入りをエルドアン大統領が承認する見込みは大きくない。国内にある多数派の差別感情を煽ることで求心力を維持してきたエルドアン大統領にとってスウェーデンは格好の標的なのだ。決選投票キャンペーン中にあらためてスウェーデンのNATO入りを否定したインタビューにもそのことがよく表れている。

今回敗戦したとされるクルチダルオール氏の政党はCHP(共和人民党)という。元々ハケマル・アタチュルクの作った政党を基盤としており「トルコの自民党」と行って良い。エルドアン氏の政党はAKP(公正発展党)という。議会政治家は信頼できないとして大統領権限を徐々に拡大し議会の権限を奪ってきた。AKPはイスラムの伝統擁護や民族主義を前面に押し出し脱イスラム化・欧米化を推進するケマル主義に対抗してきた。

つまり民主主義型の話し合う政治よりも「誰かが決めてくれるわかりやすい政治」を志向した結果、今のような状態になっているのである。

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