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バフムトにはもうなにもないのです

G7広島サミットではセンターステージに立ったゼレンスキー大統領のある発言が話題になっている。バフムトの状況についての発言が二転三転しているようなのだ。G7広島サミットは「原爆ドーム」を背景にして行われたのだがおそらくこれをきちんとみている人は多くなかった。だがおそらくゼレンスキー大統領は当事者として「その実相」に触れたのだろう。

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ゼレンスキー大統領のバフムトに関する認識が二転三転していると一部メディアで報道されている。

「世界」の人々はロシアとウクライナの間の陣地争いに夢中になっている。バフムトは戦略的にはあまり意味のない土地だがロシア側占領地の最前線としての意味はある。ロシア側にとってここからの撤退は「既に侵略開始前から掌握してきた土地を奪還される」ということになり決して認めるわけにはいかない。西側としても支援している以上は成果を期待したいところだ。

おそらくワグネルには別の思惑がある。プリゴジン氏はもっと「陽の当たるところ」にゆきたいのだろう。バフムトは制圧したからロシア軍に引き渡すと言っている。つまりもうここから出てゆきたいわけだ。彼のバフムトに関する発言は二転三転しているがプーチン氏に振り向いてもらおうとして騒ぎ立てていることだけは一貫している。

プリゴジン氏に戻る場所があるかどうかは不明だ。ロシアには民間軍事会社が乱立しているそうだ。一部プリゴジン氏の影響力を排除しようとしているのだなどという説明もなされているがいずれにせよ「先行者利益」を確保できる状態ではなくなっている。

確かにゼレンスキー大統領はG7の真ん中に向かい入れられて各国からの支援を取り付けた。しかしながら「グローバルサウス」と呼ばれる国々の意見が一致していないことも西側各国が決定的な軍事兵器を供与したがらない事情も十分に理解しているだろう。

さらに今回「広島の実相」にも触れた。広島県知事と市長はそろって記者団に今回のG7について次のように説明している。

被爆の実相に触れたことは非常に大きな意味があった。それぞれの心の中に生じた変化は今後の考え方や取り組みに大きなインパクトを与えていくのではないか

今回のG7の中心にはいつもあの「原爆ドーム」があった。だがそれをみている人たちの視線はどこかそぞろなところがあった。それぞれの思惑が交錯し気持ちが一つにならない。本当に指導者たちは「実相」を見ていただろうかという気がする。

しかしながらこの「実相」の話を読んだ後で改めて「二転三転するゼレンスキー大統領の発言」を読み返すと、ゼレンスキー大統領だけは広島の実相に確かに触れたのかもしれないと思う。

BBCはこう書いている。

「もうあそこには何もない。ただ地面と、大勢の死んだロシア人しかいない」のだとも説明。

ゼレンスキー大統領にはもう一つわかっていることがある。

戦後復興にはおそらく途方もない時間と費用がかかるだろう。それを成し遂げるためには人々が心を一つにすることが大切である。しかし、その一方でウクライナはいまだに政治腐敗とも戦い続けている。国民が一致団結して祖国防衛に立ち上がる一方で裁判を有利に進めるために最高裁判所の判事に賄賂を贈るような人がいるのである。

「当事者」であるゼレンスキー大統領に「実相」を見せるべきだったのかと考え込んでしまう。「本当に見るべき人たち」が一斉に目覚めてくれれば意味はあったのかもしれないのだが、今回の声明にあった「二重メッセージ」の徹底ぶりと岸田総理の最後の記者会見を見る限りは、あまり期待すべきではないのかもしれないと感じる。

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