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日本の新しい問題「デジタル赤字」をロイターが紹介

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ロイターが「コラム:日本の新たな外貨流出、デジタル・コンサル・研究開発に弱点=唐鎌大輔氏」というコラムを出している。デジタル赤字という概念を提唱しつつ「研究開発が投資に消極的だったためサービス分野での赤字が膨らみ外貨流出が起きていると言っている。外貨流出について言及しているということは将来的な大規模なキャピタルフライトなども警戒されることになる。だが政府統計がなくそもそも全体像が見えないのが現状である。

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唐鎌大輔さんのコラムの構成はやや分かりに。整理すると次のようになる。これでも分かりにくいと思うので数字は「巨額」に置き換えて読み飛ばしてもらったほうがいいかもしれない。


財務省が5月11日に国際収支統計を発表した。サービス収支の赤字が5兆2765億円に達するという。旅行収支は1兆4303億円の黒字で輸送は9271億円の赤字である。その他のサービス収支が5兆7797億円の赤字と大きく足を引っ張っている。

これまで貿易収支の赤字はそれほど問題視されてこなかった。海外の投資から得られる黒字のためだ。だがこの黒字も2017年をピークにして22兆3995億円から9兆2256億円まで大きく縮小している。

特に目立つのがIT系の赤字である。新聞などでは「デジタル赤字」と表現されることが多い。このほか専門・コンサルティングサービスの赤字も拡大している。専門・経営コンサルティングにはインターネット広告の赤字も含まれている。だが、ただその内訳は明らかになっておらずデジタルの立ち遅れがどの程度の大きさになっているのかはわからない。

ではなぜそのようなことになっているのだろうか。

NISTEPの報告書などを見ると日本の研究者数はほとんど伸びておらず異常な状況にある。研究開発拠点が海外流出している可能性がある。ものづくりは海外でやるが頭脳労働は国内と行うという従来の図式が成り立たなくなりつつあるようだ。この他日本の得意分野だった知財にも状況の変化がある。

日本経済の現状を議論する場合、FRBの金融政策やアメリカの各種統計がよく問題になる。だが頭脳流出などの中長期的な変化に注目が集まることは少ない。中長期的な視座で見通しを検討することが重要なのではないか。


ちなみに「デジタル赤字」で検索すると次のような記事が出てくる。最も大きく取り上げているのは日経新聞の記事なのだが唐鎌さんの名前が出てくる。テレビ東京のYouTubeにもデジタル赤字について扱っているものがあったがこちらにも唐鎌さんの名前が出ていた。

日経新聞の記事は、海外投資の収益の半分がデジタルで取り返されたという意味合いのタイトルであろう。

野口悠紀雄さんもダイヤモンドオンラインで次のようなコラムを書いているが、野口さんは一貫して日本の構造変化について訴えてきた。

つまり唐鎌さんの主張とは異なりデジタル赤字はそれほど注目されていないと言って良い。そもそも政府統計がない。政府も各論にばかり熱心であり全体像を見ようという意欲を持っているとはいえないのではないかと思う。

マスコミはむしろサービス収支赤字問題を軽視している印象もある。貿易収支の記事を読むとエネルギー価格について取り扱われることは多いのだがサービスについて扱われることはほとんどない。徐々に変化が起きておりなかなか気づきにくいこともあるのだろうし、やはり日本は製造業で稼ぐ国だという意識を持っているのかもしれない。

一般の認識を知る上で最も参考になるのがNHKだ。「エネルギー価格の高騰で輸入が膨らんだこと」と「中国の春節の影響」について触れており「落ち込みは一時的なものである」と強調している。さらに日本企業が子会社から受け取った配当や利子などがあるからまだ大丈夫なのだというような認識になっている。

おそらくこの問題は中長期的に日本の稼ぐ力を蝕んでゆくだろう。一部の専門家はその危険性について察知しているが一般にはまだ全く浸透していない。

ではこのままゆくとどうなるのか。ロイターのタイトルには「外貨流出」というキーワードがあった。貿易赤字を経常黒字がカバーできていないのだから当然の帰結である。つまり、将来的に心配されるのは「キャピタルフライト」である。現在の高齢者が貯金を切り崩して海外投資に振り向けることはないだろう。だが次世代は違う。アメリカではデジタルバンクラン(SNS発の取り付け騒ぎ)なども起きているがデジタルネイティブの世代はおそらく違った投資行動をとるはずだ。

つまり、外貨流出が基本路線になるとやがて家計の国外逃亡が起こる。既に2022年あたりにキャピタルフライトについて懸念する記事がいくつか出ている。

おそらく、現在このキャピタルフライトについて本気で心配する人はいないだろう。そもそもデジタルバンクランを引き起こしそうな人たちは資産を持っていない。

さらに、株価が好調でついに「バブル後最高値」を更新した。アメリカの金融状況が不安定なため日本が逃避先として選ばれているという事情がある。さらにバフェット氏が「日本は買い時」と宣言したこともあり日本株には期待が集まっている。NHKのニュースにもどことなく高揚感が漂う。

さまざまな要因が重なり構造的な問題は覆い隠されている。だがおそらくは「病状」は確実に進行しており「気がついた時には手遅れ」ということになりかねない。少なくともデジタル分野の赤字についての統計くらいは取っておくべきだろう。そもそも今の状態では現状すら見えていないからである。これでは対策の立てようがない。

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