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安倍君と麻生君の例え話

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安倍首相が自民党のネットテレビで次のような例え話をした。集団的自衛権について説明したものと思われる。

安倍君(日本)と麻生君(アメリカ)が夜道を歩いている。そこで不良に絡まれた。一緒にいるのだから、麻生君がやられたら、一緒に反撃するのが当たり前だ。

いっけん当然のような例え話なのだが、いろいろ突っ込みどころがある。
もし、安倍君と麻生君がいつも通る道で不良に絡まれたなら、あるいは安倍首相の言い分も通るかもしれない。ところが、よく話を聞いてみると、麻生君はパトロールと称してわざわざ危ない街に遠征している。いままで安倍君はお母さんの言う事を聞いて麻生君のパトロールに付き合わなかったのだ。だが、麻生君の「お前は付き合いが悪いなあ」という言葉がプレッシャーになり、一緒に危ない場所に行く事にしたやさき、喧嘩に巻き込まれたのだった。
次に安倍君の過去が判明する。昔、麻生君と派手な大喧嘩をして負けた経験があったのだ。そこで、麻生君から武器を取り上げられ「もう二度と喧嘩はしない」と約束させられた。そればかりか、道を歩く時にはいつも麻生君が付き添うことになった。「ひとりで大丈夫だもん」と言ってみたものの、麻生君はついてくる。それどころか、なぜか麻生君は安倍君の家に間借りしている。もう喧嘩したのは大昔の話なのだが、なぜか今でも麻生君が付き添っているのである。安倍君はうすうす「不良に絡まれても助けてくれないかもなあ」と思っているのだが、麻生君はなぜか付き添いを止めない。
麻生君は近所で一番強い。だから、いろいろな街でたくさんのやっかいごとに巻き込まれている。ところが、安倍君は麻生君との喧嘩に負けて、麻生君と付き合ううちに、強い麻生君に複雑な憧れを持つようになった。最近は、麻生君とつるんでいると、なんだか自分も強くなったような気がしているのだ。その上、昔喧嘩をして痛い思いをしたことも忘れてしまった。
第一の例えから分かる教訓は簡単だ。危ない場所に出かけていってはいけない。特に「喧嘩はしない」と誓ったのだからなおさらである。
次の話から分かるのは、麻生君は人が良いから守ってくれているわけではないということだ。アメリカが日米安保を維持しているのは「アメリカがめちゃくちゃ気前が良いから」ではないはずで、アメリカなりにメリットがあっての行動だと見るのが自然である。
ここからは、個人主義社会と集団主義社会の違いも見えてくる。日本人は「守ってもらっているから、こっちもなにかしないと悪い」と思いがちだ。義理とか恩といった感情である。ところが、個人主義のアメリカ人が同じ感情を共有しているかどうかは分からない。個人主義の観点からみると「麻生君が安倍君と行動するのはあくまでも麻生君の意思」なのである。
さて、最後の例え話は今まで議論されていない点である。安倍君は、しばらく喧嘩をしていないのに、麻生君と一緒にいるうちに「俺はめちゃくちゃ強いのかも」と勘違いしてしまった状態だ。この状態の安倍君が近所の友達に喧嘩をふっかけたらどうなるだろうか。実はこれは麻生君から見ても、近所の友達(ここでは不良と表現されているのだが)から見ても好ましい状態ではないだろう。
安倍君が今どんな気持ちでいるのかは分からないのだが、もし実力以上の有能感に駆られて、うかうか外に出かけて行けば、ぼこぼこにされてしまうのがオチだろう。


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