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Forced to Work

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「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を巡って韓国からクレームがついた。関連遺産群のいくつかで強制労働があったことを理由に遺産登録反対を訴えたのだ。当初日本が韓国の主張を全面的に退けたため、韓国は国際的なロビー活動を繰り広げた。その後、国際世論に押された形となった日本は徴用工がいたことを認めざるをえなくなった。外交的な駆け引きの後、日本は「Force to work」(労働を強制した)という表現で、実質的に徴用の事実を認めた。また、情報センターを作って包括的な歴史を後世に伝える努力をすると約束した。
この件に関して、両国政府は自国に都合の良い解釈を行った。岸田外務大臣は国内向けに「これは強制労働(forced labor)を意味するものではない」と説明した。一方、韓国側は「日本は歴史上はじめて強制があったことを認めた」と自国の外交的勝利を宣伝した。
このニュースにツイッター上では落胆の声が広がった。国内メディアを見る限り「韓国側が理不尽に反対しつづけたが、日本政府は強制労働について認めなかった」としか捉えられないのだが、韓国側メディアの「外交的な勝利だ」「日本が強制性を認めた」という主張も同時に入ってくる。韓国で賠償訴訟が起こることを心配する声もある。
外交的には日本の失点といえる。そのため、ツイッター上には「岸田外務大臣は辞任すべきだ」と主張する人もいる。
自民党の支持層の中には、日韓関係について勝ち負けにこだわる人たちがいる。どれくらいの人数がいるかは分からないが、少なくともネット上の存在感は大きいように見える。従って、彼らを落胆させると安倍首相の支持率が若干下がるかもしれない。しかしながら、今回の一件が支持率を大きく下げることはないだろう。この層は政治に強い関心を持っているが、横の連係や周囲への影響力は強くないように思えるからだ。文句が出たとしても一過性のものに終ってしまうのではないかと予想される。
興味深いことに、人権に敏感そうなリベラルな人たちから「朝鮮人に対する非人道的な扱いに抗議すべきだ」という意見は全く聞かれなかった。単にネット上に存在感がないのかもしれないし、自分の身の回りの問題にしか興味がないのかもしれない。
世界遺産は単なる観光名所として捉えられがちだが、負の側面を持つものもある。当然といえば当然なのだが、今回の一件はそのことを改めて思い起こさせることになった。今回の遺産はそのはじめてのケースのように思えるのだが、実際には前例がある。それが原爆ドームだ。
広島市議会が原爆ドームを世界遺産に登録するように請願した際、日本政府はアメリカ・中国・韓国の反対を怖れて登録に消極的な姿勢を示した。その後、日本政府の承認は得られたものの、アメリカは歴史認識の違いを理由に反発した。被害国の日本人は原爆投下を非人道的な行為だと認識するが、アメリカでは第二次世界大戦を終らせた肯定的な行為だと認識しているからだ。この他、中国は最後まで反対し採決を棄権した。
このことから、世界遺産登録の現場に政治的な意図が持ち込まれるのは今回がはじめてではない事がわかる。