日本株がバブル崩壊後最高値を更新したとニュースになっている。Bloombergは「日本がいよいよデフレを脱却しようとしている」と書いているのだが、ロイターはJPモルガンのストラテジストの声を引用し「バフェット氏に影響を受けた個人投資家が参加しているのではないか」と指摘している。バフェット氏の投資方針は誰にでも真似ができそうなところがあり個人投資家に影響力が大きいのだそうだ。この記事は、おそらく投資をやっている人たちには当たり前のことを再確認するだけになると思うのだが投資をあまりしない人向けにあらためてまとめてみたい。
Bloombergがバブル後高値のTOPIX、インフレ定着や株主還元が押し上げという記事を書いている。日本株には割安感があるのだが「長年のデフレから脱却し、賃金の上昇を伴うインフレが定着しつつあることが日本株を押し上げている」と好意的に評価している。
一方でロイターの「アングル:日経3万円、割れる今後の見方 「全員参加型」ではない海外勢」は少し変わった視点からこの最高値を分析する。
CTAはポートフォリオ構築についてアドバイスする人たちなのだそうだが、バフェット氏というキーワードが気になったので調べてみた。「何か極めて特殊なことをしているのではないか」と考えたからである。確かに「バフェット」「日本株」で検索すると実にさまざまな記事が出てくる。
- 日本にしかない”商機”を見出している…伝説の投資家バフェットが今、「5大商社」の株を買い増す本当の狙い(真壁昭夫氏)
- “投資の神様”バフェットが「5大商社」への投資を増やすと宣言するワケ(鈴木貴博氏)
どうやら株式投資をよくやる人には常識となっているようだが、バフェット氏は奇策を避けて「長い間成長ができそうな」「当たり前の企業に」投資をするという方針を貫いているそうだ。解説ではコカコーラの例などが挙げられている。この「当たり前」が成果を生み出しており信奉者が多いのだという。
「誰でも真似ができそう」というのも人気の理由なのかもしれない。
確かに「誰でも真似ができそう」なのだがバフェット氏の「中長期的」とは少なくとも今後10年というようなスパンのようである。「なんとなく不安で株でも持っておきたい」という人ほど株価の上下動に動揺するだろう。実は「真似ができそうでなかなか真似ができない」という難しさがある。
いずれにせよ長年日本は「デフレ状態にある」言われ続けており日本株の評価は低いままだった。おそらく日本人の中にもこの考えに「洗脳されている」人が多いのではないかと思う。
さらに、全体として割安感はあるのだろうが「その中で何を選びますか」と言われ商社という昭和的なスキームを選択できる人は実はそれほど多くないのではないか。例えば日本政府も成長産業として掲げるのは「半導体などのハイテク」や「AIなどのIT産業」である。普段からニュースを見ている人ほど成長産業に注目することが多く昭和的な業態が「実は今後成長余地が大きい」とは思わないのではないだろうか。
ロイターは記事の最後でこう書いている。つまり日本株が全て優良というわけではなくさらにこの動きに全ての投資家が賛同しているわけでもない。このため伸びは一旦止まるのではないかという見方だ。
ただ、日本は「世界の景気敏感株」と位置付けられており、グローバル経済が減速する局面でも、海外勢が消去法的に買い続けてくれるかは不透明感が強い。
個人投資家の一部動員されただけでバブル後最高値を更新したのは確かだ。あるいはバフェット氏の影響は大きかったのかもしれない。だがそれが続くとはみられておらず「ボックス相場化」すると考えられているようだ。つまり一定範囲内に収まりこのまま株式相場が上がり続けるという展開にはなりそうもないという意味になる。
機関投資家も日本株にそれほど魅力を感じていないようだ。顧客のために短期的に成果を出す必要があり「10年超」などと悠長なことは言っていられないのだろう。
それだけに自分の裁量でポートフォリオを差配できるバフェット氏が勝てるチャンスが増えるということになる。今はそこそこ稼ぐことができていて「老後の備え」に向けて自己資金で投資ができる現役世代の個人投資家にとっても今の日本株は魅力的なのかもしれないと感じた。バフェット氏と同じように長期的な視点で投資先を選べるからだ。
だが実はこの「落ち着いた投資環境」を作るのが難しい。今はは消費を控えて出来るだけ将来に備えよということになる。つまり、「当たり前のことができる」投資環境を作るのが実は一番難しいということなのかもしれない。