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「汚職撲滅」ウクライナ政府が直面するもう一つの戦い

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ウクライナで最高裁判所のトップが逮捕されたというBBCのニュースを見た。ウクライナは現在ロシアの一方的な侵略と戦っているのだがEUに加盟しヨーロッパに迎え入れられるためには国内の汚職とも戦い続けなければならない。つまり、ウクライナは今二正面作戦を戦っていることになる。一方の敵は外からやってくるがもう一つの敵は中から攻撃を仕掛けてくる。共通項は「ソ連の遺産」である。

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拘束されたと見られているのはウクライナの最高裁判所のトップであるフセヴェロド・クニャジエフ主席判事だ。BBCによると300万ドルの賄賂に関する罪で勾留されたという。収賄容疑で逮捕された最高位の当局者となるそうだ。逮捕したのは特別汚職対策検察庁(SAP)という専門の部局だ。

国民が一致団結して外の敵と戦っている最中にも私服を肥やそうとする人がいるのかと暗澹とした気持ちになる。

ロイターの日本語版はこの件について短く伝えているが詳細はよくわからない。事件は次のように要約されている。

賄賂は、著名ビジネスマンのコスチャンティン・ジェバホ氏が所有する金融会社に有利な判決を下すことに対して支払われた。ジェバホ氏は容疑を否定している。

アルジャジーラやロイターによると拘束されたのはクニャジエフ氏ともう一人の合計2名とみられる。「誰が逮捕されたのかは確認されていない」と伝えているが、最高裁判所の会議でクニャジエフ氏の不信任決議が可決されており解任が可決された。まルジャジーラは政府の高官数名が解雇されたと書いている。さらに「270万ドルの収賄」となっておりBBCと数値が異なる。アルジャジーラは最高裁判事の取り分は180万ドルで90万ドルが弁護士の仲介手数料だったと書いている。

ソ連邦から離脱した後もウクライナでは汚職が後を断たなかった。このため、ウクライナの汚職捜査は非常に生々しい。SNS上に札束が並べられ証拠の保全が図られるようだ。ロイターは金庫や札束が入っていた封筒などの写真も掲載している。

ロイターは金融グループを所有するコンスティアン・ジェバゴ氏が自社に有利な取計を求めて賄賂を送ったのではないかと伝えている。日本語にもある通りジェバゴ氏は不正行為を否定しているそうだ。ロイターの英語版は日本語版より詳しくこの件について書いているが容疑について言及した箇所は以下の通りである。

Kryvonos said the bribe was paid for ruling in favour of the Finance and Credit financial group, owned by prominent businessman Konstiantyn Zhevago, and may be part of a broader scheme to pressure the court. Zhevago has denied wrongdoing.

ではなぜウクライナにとって汚職撲滅は重要な課題なのか。「ロシアの挑戦を跳ね除けた後でじっくり腰を据えてやればいいのではないか」とも思えるのだが、実はウクライナの防衛継続と今後の復興にとっては極めて重要な課題になっている。復興も極めて重要なのだが、そもそも軍事支援の横流しなども報告されており欧米議会から厳しい視線が注がれている。

2023年1月には大統領府の副長官が人道支援物資の自動車の私物化疑惑で解任されている。また国防省も食料調達をめぐる汚職疑惑で次官を解任している。汚職疑惑の責任を取って国防大臣が交代になっている。

ロイターの「焦点:ウクライナもう一つの闘い、西側入り目指し汚職対策に本腰」には次のような箇所がある。

ウクライナの反汚職当局の動きに注目している法律の専門家バディム・バルコ氏は、「毎週1つか2つ大きな展開があり、それに加えて、規模は小さくても重要な動きが7ー8件ある」と語る。

SAPのトップは長い間空席であり2022年7月に正式にクリメンコ長官が指名されたばかりだ。長官は長い間放置されていた捜査を再開しさらに新しい案件にも着手している。

G7サミットを直前にして日本ではウクライナに関するネガティブな情報はあまり入ってこない。だが欧米ではウクライナ政府と財界の腐敗ぶりはよく知られている。だからこそ今回のニュースも「ゼレンスキー大統領は本気でヨーロッパ入りを目指そうとしているのだ」と好意的に評価されるものと思われる。一方で朝日新聞は「国内で衝撃が広がりそうだ」と書いている。日本の常識に照らし合わせると確かに最高裁判所の判事が汚職で捕まるなどということがわれば大騒ぎになるだろう。

ただ、その一方で国民が防衛のために一致団結している間も「自分だけがいい思いをしたい」と考える人も大勢いるということがわかる。長年続いている汚職文化は他国から攻撃されたぐらいではなかなか払拭できないのだということがわかる。

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