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「デジタルフォレンジック」により国交省の人事情報漏洩が発覚し斎藤国土交通大臣が慌てる。

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民間企業「空港施設」の人事に国土交通省のOBらが介入していたという問題がついに国土交通省本体に飛び火した。現役の職員が人事情報をBCCで報告していたことが空港施設側の調査でわかった。BCCとは「宛名を表示しないでメールを回覧する」ことを指している。職員が勝手にやったということは考えにくいのだからこれまで「OBの活動については管理できない」としていた国土交通省の言い逃れは難しくなったといえるだろう。国土交通省の歴代大臣の監督責任問題に発展することは必至である。地方選挙で「全員当選神話」が崩れつつあり連立で揺れる公明党にとっては大きな痛手となるだろう。同時に「デジタルフォレンジック」まで駆使して問題を提起したことから本来共助関係にあった空港施設と国土交通省の間に大きな感情的亀裂が走っていることもわかる。

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「空港施設」は飛行場の施設を管理する民間会社だ。運輸省・国土交通省のOBの天下り先になっていたのだが、最近では経営が航空会社出身者に移っていた。この問題を熱心に取り上げていたのは朝日新聞だがのちに文春が山口勝弘氏の「バックにいる人たちがどう思うか」と発言する音声データを入手したことで騒ぎが拡大していた。

さらに東京メトロの会長に就任している本田勝氏が「国土交通省元事務次官の名代」と名乗り空港施設に圧力をかけていたとも報道されている。読売新聞の記事には元事務次官は小幡政人氏(78)と安富正文氏(75)であると書かれている。つまり名指しで報道されているのだ。

何となく任侠映画を思わせるようなところがあり劇場型の時事ニュースとしては面白い見せものだった。だが、今回国土交通省から空港施設の側に公開前の人事データが渡っていたということになりフェイズが変わったといえそうだ。事前漏洩なのか事後報告なのかはわかっていないがいずれにせよ「国土交通省のご報告リスト」が作られていたことはわかる。つまり他のOBにも情報が行っている可能性があるのだ。

この問題にはさまざまな切り口がある。

一つは上場民間会社のガバナンス問題だ。ガバナンスが揺らげば投資家への信頼が損なわれる。さらに、国が許認可権限を持つ空港敷地内の施設で優先的に一つの会社が業務を行なっていることの是非も検討されるべきだろう。もっとふさわしい会社が事業を展開した方が収益が上がる可能性がある。ただ空港施設側も国土交通省側もこの問題には触れたがらない。経営側が「音声データ」を持っているという点から、空港会社と国土交通省の間のポジションの取り合いという問題もあるだろう。「独立調査委員会」の報告書からも感情的な確執はかなり大きかったようだ。

文春の音声データからどうやら国土交通省には国土交通大臣をトップとする表向きの組織とは別に裏組織とも言えるような組織が存在している可能性が高いことはわかっていた。政府の統制が効いておらず「裏」に別の意思決定機関が作られていたとなれば内閣にとっては大きな問題だろう。特に長年国土交通大臣ポストを利権として持っていた公明党には影響が大きい。

岸田総理はこの問題について「OBの行動までは管理できない」として調査はしない考えだった。確かに国土交通省の直接関与の証拠は見つからなかったのだが、これがかえって問題を大きくしてしまったようだ。空港施設側は徹底抗戦の構えで「独立検証委員会」を作って調査をさせた。空港施設側は4月28日に報告書を受領しPDFにして公開している。「独立」とはいえ空港施設の人たちの聞き取りが主である。

この報告書の内容はなかなか刺激的である。委員会が「デジタルフォレンジック」により山口氏が国交相出身者や職員と連絡を取っていたことが明らかになっている。

デジタルフォレンジックはもともとコンピュータのデータを表沙汰にして「証拠としてみんなに見てもらう」という意味で使われていたのだが、最近では犯罪捜査などで削除されたデータの復元を指すこともある。

今回のデジタルフォレンジックがどちらを意味するのかはわからないのだが、消されていたであろうデータをわざわざ復元して「こんなことをやっていた」と告発する内容だったとしたら「独立」とされる調査委員会を含めた会社側の怨念の深さが窺えるというものだ。

秘書は甲斐甲斐しく山口氏に「本田さんとのアポを取った」とか「電話を受けた」などとメールで報告していたようだ。復元されたとみられる情報の中には添付ファイルがあり「国交省からの人事データ」が入っていたと調査報告書は主張している。つまり、発表前(と思われる)人事データが山口さんにBCCで報告されたことになる。山口さんがどのような権限でこれを受けていたのか、送り手がCCリストの中身を意識していたのかなど細かいことはわかっていない。

調査報告書は表面上は現在の経営体制を正当化しつつ、空港施設に対して役員選出に関するガバメントを強化するように求める内容になっている。だが、おそらく目的の一つは公開されていなかったデータを掘り起こして「国土交通省も関与していますよね、それでも何もしないつもりですか?」と斎藤国土交通大臣とその背後にいる岸田総理に突きつけることであったのではないかと思う。

岸田総理がきちんと対処しますと言っていれば空港施設側もここまではやらなかったかもしれない。そもそも国の許認可権の上に乗って収益を上げている会社である。いわば共存関係にある。

本来であれば、空港施設の管理の効率化について議論が進むべきなのだろう。国の許認可権限を背景に独占的に事業をおこなっている交通系の会社は多い。防衛も子ども子育ても財源が見つかっていないのだから、国民財産が効率的に管理されているのかはきちんと検証した方がいい。

だが、近年の政治言論を見ているとこのような丁寧な議論には発展しないものと思われる。「誰の責任なのだ?」などとして最も弱いリンクが攻撃されることが増えている。この場合の最も弱いリンクは公明党だ。この記事のタイトルも「国民財産の効率的な運用のために議論を尽くすべきである」とするよりも「長年国土交通行政を利権にしてきた歴代の公明党出身大臣の責任が問われる」などとした方が支持が集まるだろう。

だが、今の所この問題はそれほど大きくは報道されていない。マスコミとしては野党が取り上げるのを待っているという段階なのかもしれない。BCCを駆使した「ウラメーリングリスト」がありOBも含めた連絡網が構築されていると考えると背景はかなり根深いのかもしれない。

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