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「この旗のために戦っているのだ」ウクライナの代表がロシアの代表に掴みかかる

ある国際会議の議場でウクライナの代表がロシアの代表に掴みかかる場面があった。それぞれCNNとBBCが伝えている。「国を守るとはどういうことか」ということがわかると同時にロシアの誤算が何だったのかということも理解できる。ロシアはおそらく本物の愛国心の持つ力を理解できなかったのだろう。「本物の愛国心」など軽々に使うべき言葉ではないのだろうが、ウクライナの状況を見ていると確かにそういうものが存在するということがよくわかる。

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トルコのアンカラで黒海経済協力機構(BSEC)の会議が開かれている。トルコが主導す流国際スキームで、日本の外務省によるとアルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ブルガリア、ジョージア、ギリシャ、モルドバ、北マケドニア、ルーマニア、ロシア、セルビア、トルコ、ウクライナが加盟しているそうだ。

ロシアとウクライナの間には黒海経由の小麦輸出についての取り決めがなされている、ロシア側は経済制裁が解除されなければ合意は延長しないとしている。代替輸送路がポーランドなどに出来ているが流通管理が適切ではなく地元の穀物価格に影響が出かねない状態になっている。一時ポーランドが禁輸措置を発表するなどしてEU各国に混乱が広がりかねない事態になっていた。小麦などの価格が高騰すれば発展途上国を中心に政変もおきかねない。

トルコが主催する外交通路が持つ意味は極めて大きい。

ロシアの代表がインタビューに応じている最中、ウクライナの代表が国旗をかざすという騒ぎがあった。これに腹を立てたロシア側の代表がウクライナ国旗を乱暴に引き剥がす。

ここで予想外のことが起きた。

ウクライナの代表がロシアの代表に掴みかかったのだ。BBCのビデオによると「ウクライナ側がロシアに一発食らわせている」様子も見える。もちろん暴力は良くないとは思うのだが、国家主権を一方的に蹂躙されているウクライナ側の心情は察して余りあるものがある。

CNNによるとその後もウクライナ側の怒りは収まらず議場でも「ウクライナ、ロシア両国の代表団員が議場などで小突きあったり、殴打を加えたりする混乱」が起きたとのことである。

この問題はおそらくプーチン大統領の市民革命に対する個人的なトラウマとロシアのヨーロッパに対する受動攻撃性が合わさって起きている。皮肉なことにロシアが受動攻撃性を強めれば強めるほど国際社会からの孤立が浮き彫りになりロシアの劣等感が刺激される。トルコや中国はこれを利用して自国のプレゼンスを高めたいとは考えているのだろうが、決して「ロシアの偉大さ」を証明する側には回ってくれるわけではない。つまり中国やトルコの支援も彼らのプライドを満足させてくれるわけではない。

過剰な自己認識と国際的な評価の乖離に悩むロシアが「ウクライナの旗さえなえれば問題は全て解決するのに」と考えても何ら不思議ではない。

おそらく、ロシアにとってももっと誤算だったのはウクライナの愛国心だろう。BBCのビデオの最後でウクライナ代表が「この旗のために戦っているのだ」といっているのが確認できる。この言葉は多くのウクライナ人の行動と血の犠牲で裏打ちされている。つまり極めて説得力のある重たい言葉なのだ。この言葉の持つ意味合いは「愛国心」を鼓舞しつつ実際には国民を使い捨てにしているロシアの政権には理解できないに違いない。

日本でも「愛国心」という言葉はよく使われる。だが、日本がウクライナと同じ状況に置かれた時に彼らのように行動できるものなのだろうかと改めて考えさせられる。「愛国心」という言葉は決して軽々に使われるべきではないと思うのだが、やはり確かに存在はするのだろうと強く感じる。

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