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スーダン情勢が混乱するとコーラが飲めなくなる

スーダン情勢が混乱している。日本とはあまり関係がないと思われておりさほど注目されていなかったが、スーダン情勢が年単位で混乱するとコーラが飲めなくなるそうだ。そう聞くと俄に身近なニュースのように感じられてしまう。なぜスーダン情勢次第でコーラが飲めなくなるのか。理由を調べてみた。

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ロイター通信が「焦点:スーダン戦闘、炭酸飲料の世界供給にも影響 重要原料の産地」という記事を配信している。クリックしないと内容がわからない思わせぶりなタイトルだが、炭酸飲料とはコーラのことである。そして重要原料はアラビアガムのことだ。アラビアガムはアカシアの幹を傷つけた時にできる樹脂のことでスーダンの主要な輸出品になっているのだという。

Newsweekはこれを「スーダン戦闘長引けばコーラなど炭酸飲料が飲めなくなる!? 重要原料アラビアガムの供給止まる恐れ」として再配信している。きちんと情報を付け加えており親切な印象である。

アラビアガムはコーラの成分を水の中に留めておく「乳化」という重要な役割を果たしているのだという。つまり、アラビアガムなしにコーラを作ることはできない。このため各社には半年程度の備蓄があるという。だが、この期間を超えて混乱が続けばアラビアガムの供給は行き詰まる。

コカコーラやペプシコなどは、以前から供給難を避けるための備蓄を進めており、3─6カ月分に相当する量を確保している例もある

スーダンの命綱は金などの鉱物なのだろうと漠然と思い込んでいた。だが実際にはアラビアガムのおかげで経済制裁は完璧なものにならなかったのだという。今回のロイターの記事では次のように書かれている。

消費財産業にとってアラビアガムがどれほど重要であるかは、米国による1990年代以来の対スーダン制裁においても、この商品が対象から外されていることからも分かる。必要不可欠なコモディティーであると同時に、闇市場の出現を懸念したためでもある。

2012年のWiredの記事もこれを裏付ける。ICCから刑事訴追を受けていたバシル大統領への制裁はあまり効果がなかった。アメリカ合衆国は自国のさまざまな産業がスーダンのアラビアガムに依存していることがよくわかっている。そしてスーダン政府もそれをよく知っていた。

アメリカ人のコーラ依存はよく知られており、新聞、特に『ワシントン・ポスト』は、スーダンに対する曖昧な外交政策を、「ソーダ・ポップ外交(炭酸飲料外交)」と定義した。通商関係の禁止はすべてのスーダン産の品目に及んでいるが、なんと、アラビアガムは除外されているのだ。

コーラのないアメリカなど考えられない。もちろんアラビアガムはさまざまな製品に使われており、アメリカ人だけでなく日本人の生活も直撃する可能性がある。何が影響を受けるのかはお菓子や化粧品の裏にある成分表を見てみると良いだろう。

スーダンの混乱は民政復帰を控えて軍と準軍事組織のどちらが主導権を握るのかという主導権争いに端を発している。西側にとっては「民主主義を守る戦い」ではないため政治的な関与がなくあまり注目されてこなかった。だが、我々の日常生活に対する影響は意外と大きい。コカコーラにしろペプシにしろコンビニに行けば普通に買える当たり前の商品だが、その「当たり前」は大規模な世界的なサプライチェーンによって支えられている。

スーダン情勢が今後どのように変化するかはわからない。さまざまな国が仲介を試みており、最新情報では南スーダンが7日間の停戦合意を取り付けた。だが、戦闘は散発的に続いており予断を許さない状況だ。すでに難民も出始めており国連はこのままでは80万人程度の難民が出るのではないかと危惧している。

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