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クウェートの議会が解散 2022年9月の選挙はなかった事に

クウェートで議会が解散された。議会と首長の間で緊張が高まっているという。普通「絶対君主が国民をいじめている」という図式になるはずなのだが、どうもクウェートの様子はそうではないようだ。利益誘導と現状維持を図る議会が改革をやりたい首長側に抵抗しているようなのだ。

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時事通信が短く「クウェートの議会が解散された」と報じている。ただ例によってこれを読んでもなんのことかは全くわからない。議会解散が勅令によるものであるというのが唯一の情報だ。一ヶ月ほど前にNHKが「首長と議会の間に緊張が高まっていたようだ」と伝えていた。

この情報だけを読むと、絶対君主が民衆を虐めているのではないかと思える。ただ、クウェートには一般大衆は存在しない。国民の9割が公務員であり外国からの労働者によって支えられているのだそうだ。豊富な石油資源を背景にして安泰に暮らしている人たちの代表がクウェート議会なのである。

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さらにクウェートでは政党が禁止されている。このため候補者との個人的なつながりによって投票する人が多いそうだ。当然これも血縁政治につながる。こうした利益集団がオイルマネーの分配をやっているというのがクウェート議会のようである。

記事を検索すると過去にも金融改革や財政改革に議会が反対しているというような記事がパラパラと見つかる。2012年にはアラブの春の懐柔策として支出が増加し中央銀行総裁が「もうやっていられない」などとして辞任している。その後中央議員公総裁の懸念は的中し石油価格は下落していた。

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形式的には立憲民主主義なのだが実質的には絶対君主制になっており、首長に議会解散など強い権限があるようだ。今回は裁判所が「そもそも前回の議会解散が違憲だった」と判断し選挙そのものを無効とした。当然反対勢力側は「茶番だ」と反発しており、クウェートには緊張が高まっている。

アルジャジーラは、皇太子は前回の解散時には「法令に則った解散である」と宣言していたにもかかわらず、今回は裁判所の「解散手続きには不備があった」という主張を認めて議会を解散したと指摘する野党陣営の声を紹介している。仮に皇太子側が正しいならこのときに選挙を管理していた人が断罪されるべきだというのである。それは確かにその通りかもしれない。

つまり、結果が気に入らなかったから議会選挙を無かった事にするというのは「茶番だ」という主張だ。反首長勢力はこの10年選挙に参加していなかった。つまり、次回選挙が行われたとしても反主張勢力が選挙に参加すれば同じような結果が出るものと予想される。軍事的な要因がないため悲惨な事にはならないのだろうが、産油国クウェートの混乱はしばらく続きそうである。

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