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岸田総理は事実上のデフォルトに陥ったガーナを救済できるか?

岸田総理がアフリカ歴訪に出発した。東西南北で4つの国を選んだようだがどうにも一貫性が見当たらない。このうち北のエジプトと東のケニアは「大国」という共通点がある。ではなぜ西アフリカでナイジェリアではなくガーナが選ばれたのか。理由は二つある。まず、ガーナは民主主義の国で治安が安定している。もう一つが国の財政問題である。実はガーナはすでに事実上のデフォルトに陥っている。日本のメディアはなんらかの理由であまり触れたがらないのだが、実は「救済」が必要な国なのだ。

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ガーナの経済が事実上破綻したのには明確な理由がある。それが中国だ。ガーナとザンビアは中国からお金を借りていて首が回らなくなりかけているという。カマラ・ハリスアメリカ副大統領もタンザニアとガーナを訪問し財政支援を申し出ている。

このためガーナは既に事実上のデフォルト宣言を出している。2022年末に二国間借入の大半を含む対外債務の支払いが一時停止されIMFによる支援が始まっている。

ガーナはパリクラブ(西側先進国)から19億ドル借りているのだが、中国からの借入は17億ドルになっているという。中国の秘密協定では中国への支払いが優先されるのだが、これをG20が協調介入しようということになっている。中国が取引に応じるかはわからない。

このように報道されている公知の事実だが、今回の報道においてNHKはこの点に全く触れていない。

次に訪れるガーナは、1993年の民政移管後、安定的な民主主義のもとで成長を続け、西アフリカの大国とも呼ばれています。

NHKは嘘は書かない。だが知っていて報じないことはある。聞かれていないことを言わないだけなのだから厳密には嘘ではない。

なぜ日本のメディアはガーナがすでに事実上デフォルトした国だということを一緒に書きたくないのだろうか。

第一の理由はおそらく「官邸の提示した筋書き以外のことを書いて波風を立てたくない」という記者クラブ制度に起因するものだろう。第二の理由は日本人の情報の受け取り方に起因しているものと思われる。

例えば外国から人を入れる場合「難民」と捉えると「厄介なお荷物を背負い込む」として反対する人が多い。一方で「技能労働者」というと「日本人が嫌がる仕事をしてくれるありがたい人たちだ」と感じる。実際には一人の外国人にすぎないのだがどうしても「色」をつけて見てしまうのだ。それぞれ結果は「排除すべき」「ぜひ受け入れるべき」となる。だから一貫した政策が作れない。

今回の訪問も「中国やロシアに対抗して法の支配の重要性を訴える」と書けばポジティブな印象になる。一方で「すでに支払いに困っていて事実上のデフォルトに陥っている国の救済」と聞くとネガティブな印象になってしまう。

このような事情があり、今回の報道にはガーナの経済状態についての情報は出てこない。

日本は同じような事情を抱えたスリランカに対しても「中国に代わる救済国」として期待されている。中国は調子がいい国にはどんどんお金を貸してくれるが、調子が悪くなってもお構いなしに取り立ててゆく。そして取り立てに困ると港などを「借金のカタ」として接収してしまう。日本は中国との融資戦略には負けているのだが、困った時の救いの神としては期待されているため、遅れて地域に入ってゆくのである。

おそらく日本はインドなどの周辺国から期待されて逃げられなくなってしまったのだろう。盛んに「日本のリーダーシップ」を強調する報道がなされている。受け手である日本人が少しでもポジティブに捉えてくれることを期待してのことだろう。「出遅れて損を押し付けられた」のではなく「積極的に主導権を握り救済してあげるべきだ」ということになっている。

岸田総理がガーナでどのように歓待されるのか、またそれがどのように報じられるのか。今後の報道に注目だ。

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