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外国人労働者の「需要」が急拡大し「供給」が追いつかない状態に

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TBS系列の放送局が「レタス出荷量全国1位の村で生産者が困惑 産地支える外国人が来ない…何があった? 長野・川上村」という記事を出している。 色々と考えさせられる話だ。まるで外国人労働者を「在庫」のように扱っているからである。おそらくTBSに悪気はないのだろうが、このようなやり方を続けていては地方の困窮はますますひどくなるのだろうなと感じた。あまりにも効率が悪すぎる。

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まずTBSの記事を読んでゆく。技能実習制度が特定技能制度に変わった。技能試験・日本語の試験に合格して特定技能に移行すれば日本に滞在して働くことが可能になるという制度だ。レタスの収穫に人が必要な川上村では外国人労働者が足りていない。在留資格申請に時間がかかっているというのが理由だ。新型コロナ禍が一段落し各地で需要が殺到しているようだ。入管では13万915人が指定されているのだという。

この記事だけを読むと川上村がかわいそうだという気になる。つまり「対応する人を増やして川上村を助けてあげるべきである」という気持ちになる。

だが少し状況を知っている人は「川上村は楽して儲けすぎている」と批判的に見るかもしれない。さらに移民労働者が置かれている過酷な環境を心配する人も出てくるだろう。人権上問題だというわけである。さらにそもそも人材を「モノ」扱いし出し入れできるという発想にはある種のおぞましささえ感じる。

2014年には平均年収が2500万円もあるなどと報道されている。主に中国からの安い「技能実習生」らに過酷な労働を課しているなどとも言われていた。つまり搾取で儲けているという評判があったのだ。この記事の時点では19.5%が外国人技能実習生だった。労働環境は厳しく、他の実習生との交流も禁止されていた。つまり、人権状況を懸念する声があった。

ところが2019年には全く別の記事が出ていた。

「日本一のレタス王国」長野・川上村が外国人に頼りきる農業から脱却できたワケ

無料部分だけを読むと次のような記述がある。農家1件あたりの平均年商は4000万円だったが実際の利益はわずか117万円だった。つまり4000万円規模で働いてもほぼ稼げないということになる。極端な「労働集約型産業」がかろうじて政府の「技能実習生制度」で温存されているだけなのだ。レタス農家に人権配慮などできるはずはない。そのためのお金を出す余裕がない。

政府はこうした基本的な問題が解決できないうちに制度だけを「特定技能制度」に変えようとしている。条件を緩和し人を増やそうという作戦だが、すでに二つの懸念が出ている。

一つは「事実上の移民政策である」という自民党・保守からの批判だ。もう一つはこの程度の改善では移民獲得競争に負けてしまうだろうという懸念である。制度が中途半端なためどちらからも懸念が出る。加えて「人権上の問題」など未解決の課題もある。いずれにせよ、特定技能2号の制度拡大の検討はまだ始まったばかりだ。

これについて「日本の農業政策はどうなっているのか」と書いたところ「日本だけが悪いわけではないのでは?」というレスポンスをもらった。確かにアメリカやドイツについて調べると似たような問題がある。どの国でも収穫は労働集約型だ。不法移民に依存している国が多い。

アメリカではトランプ大統領が移民に厳しい政策をとったせいで農場労働者が不足している。不法な移民がいなくならないのはそこに需要があるからである。2019年の時点では1100万人の不法移民がおり800万人が就労していた。不法移民は農業だけでなく建設や育児などの職場に溢れている。

ドイツにも同じような問題があるそうだ。

ルーマニアからやってきた「透明な人々」と呼ばれる人たちがいちごやアスパラガスの収穫をしている。ブローカーや農場から搾取されていたようだが、新型コロナウイルスの犠牲者が出て初めて露見したそうだ。ルーマニアだけでなくスペインからの労働者も搾取対象になっているという。

確かに日本だけの問題ではないのだが「ドイツやアメリカでも問題になっているから」日本の問題を容認してもいいということにはならない。と同時に海外労働者依存が始まるとそこから抜け出せなくなることもわかる。「中毒性」が極めて高い。

どこの国でも収穫時期には臨時の労働者が必要になる。この時にだけ使える便利で安い労働者がいればいいのにという希望を持つのは何も日本人に限ったことではないのだろう。

多くの国は不法移民に頼ってかろうじて農業を支えているのだが日本は国がお金を出して「労働者の在庫調整」をやろうとしている。いわば国が保障する派遣労働者事業である。日本人非正規雇用の拡大は少子高齢化に直結するという指摘は多いが国は問題に目を背け続けている。さらに海外からも人を入れようとしているというのが現在の特定2号問題である。

国が保障するのだからその「品質」はかなり過剰なもので「日常レベルの日本語を話すことができて、ある程度技能も持っている人」である。さらに管理するのは国家公務員なのだから管理コストも莫大になる。格安の移民労働者が溢れていればそれれもいいのかもしれないのだが、このような厳しい条件をクリアしなおかつ比較的賃金が安い日本を選ぶ労働者がどれくらいいるのかはよくわからない。

そもそも冷静に考えてみれば「安いレタス」が食べたいという理由で国が税金から過剰な支出をしている事になり持続可能な産業構造とはいえそうにない。すでに外国人労働者の「待ち行列」ができており問題が顕在化している。おそらく国が制度を拡充させればさせるほどこれに依存する地域は増えてゆくだろう。

最初から無理のある計画なのだ。国がこの構造を支えきれなくなった時点でゲームオーバーになるのは川上村だけではないだろう。

日本政府は問題解決を先延ばしにすることにより単に問題を拡大させているだけなのだ。人間をモノとしてしか見ない冷たい政治が限界を迎えているのである。

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