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植田総裁の慎重な「現状維持宣言」を受け、1ドル136円台、1ユーロ150円台で取引

特に目新しい話はないのだが、昨日から今日にかけて起こったことをおさらいしておきたい。既に経済ニュースを読んでいる人は改めて読まなくていいような情報ばかりである。

植田総裁の元で初めて会合が行われた。これまでの政策について点検するそうだが「点検は政策変更にはつながらない」と強く主張したため株価は維持され円は下落した。

ただし、従前言われているように「突然の政策変更が6月ごろにあるのではないか」と予想する市場関係者もいて予断を許さない状況だ。

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今朝のニュースはこの2つだった。取り立ててニュースにするまでもなくおそらくは「想定された動き」と言ってよいだろう。

原因は植田総裁の発言だ。政策点検は行うが「すぐに政策変更に結びつくことはない」とかなり慎重な発言だったようだ。黒田総裁の発言はいつも強気だったが弱気を隠すかのように「政策点検」として政策変更のプレビューを行うことがあった。これを踏まえて植田日銀では「検証」と「政策」を明確に分離しようとしているのだ。

黒田東彦前総裁の下では2016年に「総括的な検証」、21年に「政策点検」が実施され、いずれのケースでも政策変更につながった。

このため植田さんは政策変更には消極的なのだなというシグナルが伝わった。特に市場のポジションを変える必要はないという人が多い。だがそれでも近々政策変更が行われるのではないかと指摘する人はいる。

実際に事態が動いてから慌てて政策変更すると返って混乱が広がりかねないからというのがその理由だ。だからこそ事前に政策変更をして自由度を高めておくべきだという主張になっている。

(みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは)[中略] また、基調的な2%の物価上昇率の達成、もしくはそれを上回る物価上昇の懸念が意識されてからイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃に動くと、長期金利の急上昇やそれに伴う金融市場の不安定化を招き、植田総裁がかつて述べた市場の「非常に大きな調整」が生じる可能性があると指摘。政策の自由度を確保する観点からも、早ければ6月会合でYCC、特に長期金利の目標を撤廃する可能性があるとしている。

政策変更への疑念は燻りつつ、とりあえず目前では大きな動きはなさそうだということになり日本の株価にとっては好材料になったようである。

日経平均が年初来高値、昨年8月以来の高水準=東京株式市場

おそらく、金融について継続的にフォローしている人には分かりきった話ではあると思うのだが、今回の為替の動きにおいて米ドルとユーロでは状況が違うということはおさらいしておきたい。

アメリカでは景気の減速が観察され、なおかつ金融機関が破綻する恐れがまだ残っている。直近のニュースではファーストリパブリックが「陥落寸前」だ。このため利上げはあと1回で終わるのではないかという観測が根強い。今後、金融機関監査についての政策点検が行われる。

一方でユーロ圏のインフレ圧力は依然高い。このため金融当局の関係者の発言は依然タカ派的なものが多いそうだ。

ただし、アメリカ経済がリセッション入りすれば(ほぼ確実なのではないかと考える人が増えているようである)ヨーロッパ経済も影響を受ける。そもそもヨーロッパ経済はかなり脆弱化しているという見立てがあるようで「一本調子でユーロ高が続くことはないのではないか」という見立てが出ている。特に経済が脆弱な南欧の経済は不安定化する可能性が高いという見立てもある。ヨーロッパには経済の強い中心と経済が脆弱な周縁がある。このため中心のインフレ対策を優先すると周縁の金融や経済が壊滅的な被害を被る可能性がある。

コラム:上昇続くユーロ円に潜むリスク、年後半に一転下落も=尾河眞樹氏

つまり「タカ派政策の終わりや限界」が見えてきたアメリカ金融とまだしばらくはこの状態が続くと考えられているヨーロッパ金融ではフェイズが異なっているのである。

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