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バイデン大統領が推進する新しいリベラル用語「環境正義」とは何か?

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バイデン大統領が「環境正義」を実現するためにホワイトハウスが積極的に関与するとの宣言を出した。あまり聞きなれない上に「正義」と言う言葉には何か胡散臭いものを感じる。今回はこの環境正義について調べた上で、なぜ今このような大統領令が出されたのかを短く考える。

ロイターの記事のタイトルは「バイデン氏、「環境正義」の大統領令に署名」である。

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ロイターの記事で「環境正義」は既に定着したワードとして扱われていて特に解説はない。だが、「正義」と言う言葉には若干の胡散臭さを感じる。調べたところ全ての人種や階層がより良い環境を確保できるように働きかけるというような概念のようである。環境保全というと「SDGs」の一環として捉えられがちだが、「正義」と言うことなる文脈の言葉が使われている。

「虐げられた一部の人たちに環境問題が落しつけられている」という被害者意識があるのかもしれない。今回の文章ではリベラルをネガテイブに扱う。被害者意識という感情はかなり厄介なのだ。「弱者」を隠れ蓑に自分の不満を代理でぶつけるということになりかねない。

ただ、この記事を読んだだけでは内容がよくわからない。CNNを調べたところ次のような記事が見つかった。

CNNの記事なのでこのイニシアチブを評価しているのだろうと思った。だが意外なことにそのような記述はいっさい見られない。

重要と思われる項目をいくつか挙げる。

  • 「部族」が入っていることから「環境問題への負担」が先住民に偏っていることが窺える。
  • アラスカで大規模な石油プロジェクトが承認され、バイデン大統領の支持者たちに不満が高まっていたと書かれており、この先住民が我々が普段イメージする「ネイティブアメリカン」とは別のアラスカの人たちであることがわかる。
  • バイデン大統領は大統領選挙への出馬を予定しており今は大切な次期である。
  • この大統領令を出すにあたって環境問題に配慮が足りないとバイデン大統領は改めて議会共和党を非難した。

二期目を目指すバイデン大統領への支援はあまり盛り上がっていない。大統領はリベラルな政策を推進し支持を広げたいと考えている。だが、これは選挙運動の一環と見做されており共和党は債務上限引き上げに抵抗している。バイデン大統領に重要政策を放棄させたい。バイデン大統領は共和党の提案にはいっさい応じない意向だ。バイデン大統領は今回の声明で「共和党はアメリカ経済をデフォルトで脅かしている」と批判している。

アメリカの大統領は時として中間層にアピールできるわかりやすい言葉を選んで使うようになっている。道徳観を前面に押し出した「正義」という表現はわかりやすいのだがこれに抵抗する人たちを「悪徳」と決めつければそれに対する抵抗もまた激しくなる。バイデン大統領は対外的には中国やロシアを「悪」と名指しし国際的な緊張を高めてきた。国内的には共和党が「悪」になっていて、こちらはアメリカ政府のデフォルトが懸念されている。正義という言葉が問題を引き起こすのはこのためである。

ではCNNが伝えるアラスカの石油開発とはどのようなものなのだろうか。日経新聞に関連すると思われる記事を見つけた。石油価格の高騰に苦しんだバイデン大統領は過去に人権問題で対立してきたサウジアラビアに接近して石油の増産を依頼するだけでなく、環境派に配慮して反対してきたアラスカの大規模プロジェクト「ウィロー」を承認した。

アラスカ州は天然資源に大きく依存する州である。その一部は先住民に分配されるため州と先住民はこの動きを歓迎していると言う。CNNの記事を読むと先住民はアラスカの資源開発に反対しているように思えるのだが、実はそうではないようだ。

問題は「外野」である環境保護団体だ。彼らは何らかの理由でこの開発に熱心に抵抗している。環境保護派は何かあったらホッキョクグマやカリブーなどが大変だと動物の心配までしている。

そもそも環境保護派がここまで先住民に肩入れするのはなぜなのか。代理的な受動攻撃性の表れである可能性がある。自分達は崇高な理想を追っているにもかかわらず社会はそれを理解しない。そこでアラスカの油田開発に反対し「先住民がかわいそうだ」と代理主張するのである。あるいは「自分が社会から正当に評価されていない」と言う怒りをすり替えてしまっている可能性すらある。

ただ、このようなリベラル用語は日本のリベラルも好きそうだなと言う気がする。

メンタリティが共通しているからである。原発の持続可能性について考えるのは極めて重要だ。日本の原子力政策に問題は多い。だがこれが代理的な受動攻撃性の対象になると福島県の問題は忘れ去れれ原発反対運動に賛成しない人たちへの単なる攻撃運動になってしまう

。日本の反原発運動は「反アベ運動」という攻撃運動にすり替わり「電気代が高くなるのは困る」と考える一般の日本人に支持を広げることができなくなっている。

真剣に環境問題について懸念する人もいるが、問題点をあげつらって「社会正義の実現に参加しない誰か」を批判したいだけと言う人もいるだろう。つまりリベラル運動そのものが悪いというわけではない。モチベーションを保つのが非常に難しいが、堕落するのは簡単だ。

リベラルのメンタリティはアメリカも日本もあまり変わらないようだ。だから、この「環境正義」と言う言葉もそのうち日本に輸入されてくるのかもしれないと言う気がする。

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