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「フロリダ州知事が岸田総理に何の用だ?」とNHKが指摘

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フロリダ州のデサンティス知事が岸田総理を訪問し日米外交について意見交換した。NHKが面白い2つの記事を書いている。一つ目の記事は極めて穏健だがもう一つはデサンティス氏をミニトランプ呼ばわりし「何しに日本へ?」と書いている。国内政治を扱う部局と国際政治を扱う部局で扱いが分かれたのかもしれない。このブログのタイトルは「何の用だ」にしたが、記事の正確な表現は「何しに」だ。だが、実際にはフロリダ州知事が着たかったわけではなく日本側からの招待だったようだ。さらに記者は安倍政権時代の歴史改竄もやっている。このような数々の矛盾を乗り越えてでもどうにかして違和感を形にしたかったのかもしれない。

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デサンティス知事が岸田総理を表敬訪問した。NHKのサイトではどう言う構成になっているかがよくわからないのだが、Googleで検索すると記事が二つ並列で出てくる。

局内でWEBサイトを作っている側はあまり意識しないのだろうが、検索やランキング経由で訪れる人が多いということは知っておいた方がよさそうだ。書いてあることがあまりにも違うのだ。

一本目の記事には実は矛盾があるのだが何となくサラッとまとまっているので整った印象だ。問題は2本目の記事である。「何しに」と書いているが実は日本側の招待だったと書かれている。つまりこちらはかなり苦労して切り貼りしたのだろうとわかる。

日本政府関係者によりますと、首都ワシントンにある日本大使館は、冨田駐米大使らがデサンティス知事側と接触して関係構築を進めながら日本を早期に訪問するよう水面下で働きかけてきました。

先進国や大国は普通外国からの介入を嫌う。ところが日本人はなぜかアメリカに介入してもらいたがっている。東西冷戦が終わりアメリカの気持ちが日本から離れてしまうことが不安という独特のメンタリティを持っていることがわかる。

このため一介のフロリダ州知事から「日本はよくやってくれている」といわれてニコニコしてしまうのである。

NHKはここで日本側の焦りを表現しようとしたのであろうが結果的に「軽い歴史改竄」を行っている。それがこの一節だ。

日本側の日本訪問の呼びかけの背景には2016年に当時の安倍総理大臣が大統領就任前のトランプ氏といち早く会談し、信頼関係の構築につなげた経緯があります。

当時、外務省は「クリントン氏が大統領になるだろう」と考えていた。トランプ候補はそもそもが泡沫候補であり最終的に消えてしまうだろうと思われていたのだ。だがあれよあれよと言ううちに勝ち進み最終的に大統領になってしまう。

慌てた安倍総理大臣は金のゴルフクラブを持参して「外国に先駆けてトランプ次期大統領に会ったぞ!」と実績を作った。そのときに送られたゴルフクラブはのちに国立公文書館に寄贈されたそうだ。のちに見つかったと書かれていることからおそらくどこかで放置されていたものと思われる。トランプ氏がどの程度この贈り物に感銘を受けたのかは今となってはよくわからないのだが、とにかくアメリカから見放されたくないと言う安倍総理側の焦りは伝わる。

前大統領は、フロリダ州で所有するゴルフ場のロッカーから見つかり「使ったことはない」としている。「大統領就任前に受け取ったもので、報告義務はないと聞いているが、いずれにせよ引き渡す」と書き込んだ。

別に引き渡さなくても構わないが、どうせいらないから公文書館で適当に扱ってほしいと言っている。

つまり関係構築に出遅れた上に信頼関係が構築されたとは言えないのだが、NHKの総括では「いち早く会談した」と記憶が塗り替えられている。

おそらく国際報道アメリカ政治担当者が書きたかったのは次のような記事だろう。実際に記事を読むとそのような断片で構成されている。

  • 外務省はトランプ氏との関係を構築していなかった。だから、安倍総理からの印象は良くなかった。安倍総理が焦って当選後のトランプ氏に会いに行ったのは記憶に新しい。
  • そこで、外務省は岸田総理とデサンティス氏を予め面会させることにした。まだ大統領候補になると正式に表明していないのだが、このまま立候補表明してしまうと面会が難しくなる。
  • デサンティス氏はリベラルを痛烈に批判し存在感を増そうとしている。その勢いはミニトランプと言えるほどだ。
  • だが、その努力も虚しくデサンティス氏は共和党レースではトランプ氏に追いついていない。
  • 一体、この人は何をしに来たのだろう?

つまり「外務省はデサンティス氏を有力候補と見ているようだが実際にはどうなるかわかりませんよ」といいたいのだ。

ただもう一本の報道でわかるように「NHK的な格式」は保たなければならない。そこで色々手を加えているうちにこのような記事が生まれたものと考えられる。現場の苦労の跡が滲んだ力作と捉えるべきなのかもしれない。

おそらくNHKの記者が懸念しているようにこの訪問が日米同盟の将来にどのような影響を与えるのかはよくわからない。日本で例えて言えば、次期総裁を岸田、石破、高市、河野で争っているときに、この中の誰か一人(例えば高市氏)だけがホワイトハウスに招かれたようなものだ。高市氏は日米同盟の将来について語り「存在感を増す」のだが、おそらくライバル候補たちはこれを面白くないと考えるだろう。

外務省はクリントン・トランプの時にも予想を外しているのだから、今回も彼らの想定通りに行くかどうかはわからないということになる。

過去には萩生田光一氏が「安倍総理の名代」として台湾を訪れて蔡英文総統と面会している。あたかも国家元首のような絵を作ったがこの時の時事通信は後ろ盾がなくなり埋没しかねない萩生田氏が訪台を利用して存在感を増そうとしたのだろうと書いている。

当のデサンティス氏は記者たちの問いかけにこう答えている。

デサンティス氏は、ライバルとなるトランプ前大統領に「遅れをとっているが」と報道陣から問われると…

米・フロリダ州 デサンティス知事
「私はまだ候補者じゃないので、状況が変わったらまた考えましょう」

実は微妙な情勢だ。TBSの記事は「日本側がセッティングした」とは書いていないので「なぜ候補でもない人が岸田総理と外交の話をしたのだろう?」という疑問が宙ぶらりんで残る。

アメリカ政治を観察している人ならこの辺りの微妙な空気はよくわかっているはずなのだが、これが国内の記者と共有されていないのかもしれない。

NHKでも官邸記者クラブ体制にどっぷり染まった側は次のように報道している。

デサンティス氏としては来年、秋の大統領選挙を見据え、日本訪問を通じて外交面でもアピールするとともに、日本側との関係構築につなげるねらいもあるとみられます。

よく考えてみると色々と変なところはあるのだが、おそらくテレビでニュースを見ている人がそれに気がつくことはないだろう。何も考えない方がきれいにまとめられて整った印象になる。おそらく組織内で出世するのはあまり何も考えない人なのかもしれないが、何となく苦労して形を作ろうとした人の方を応援したくなる。

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