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「岸田総理の中間評価」の衆議院と参議院の補選は自民党がかろうじて逃げ切る

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衆議院と参議院の補選が終わった。

マスコミでは岸田総理の中間評価だなどと言われていた。自民党に勢いがあればそのまま総選挙に突入するのではないかという声もあったが、結果的には自民党の「逃げ切り」に終わった。

背景にあるのは立憲民主党の戦略的失敗だろう。泉代表が全面に出ることもなく岡田幹事長も野党勢力どころか党内をまとめきれなかったようだ。一方で岸田総理に同情票が集まるのではと言われていた和歌山では維新が議席を獲得した。関西での維新の勢いは本物だったようだ。馬場代表は地方議員・首長600人以上の目標を達成した。

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参議院大分は自民党が341票差で逃げ切り

大分県はもともと社会党が強いところだ。だが吉田氏が立憲民主党に移ったことで微妙な空気になっていた。連合の一部は知事選挙に出るために参議院議員を辞職した安達澄さんを応援してきた。一方で吉田さんの支持母体は自治労だ。

自民党の候補は銀座の有名クラブでママをしている白坂亜紀さんだった。県民会で銀座のお店を使うことがあったということだが、地元にもっと適当な人がいなかったのかと感じる。安倍派が強力に推したようだが地元では怪文書が飛び交っていたそうだ。銀座の水商売が悪いとは思わないが「銀座のママに地元のことがわかるんか」という地元議員たちの気持ちもよくわかる。

結果的には341票差で白坂さんが辛勝した。

山口4区は無謀な選挙戦略で惨敗

今回の選挙で唯一ダブルスコアだった。安倍元総理の「弔い」選挙に京都府出身のジャーナリストの有田芳生さんを当てるという無謀で自暴自棄な戦略だったが下馬票通りに全くの不発に終わった。アベ政治批判はもはや政治的な争点になり得ないと改めてわかったことだけが収穫なのかもしれない。

参議院の予算委員会の「争点」も不毛な高市文書問題しかなかったのだから、立憲民主党が争点作りに失敗したと言っても良いのだろう。

山口2区は立憲民主党県連がまとまりきれず議席を逃す

岸家の後継者と元法務大臣という選挙だった。岸氏には世襲批判があったそうだが、スピーチの内容も不安視されていたようだ。ここでも立憲民主党は党内をまとめることができなかった。野党陣営の間からは一本化を望む声があったそうだが、立憲県連の一部が「平岡さんでは支援できない」ということになり、平岡氏は無所属での出馬となった。結果的に岸氏が接戦を制した形になった。

立憲民主党がまとまっていれば勝てたかもしれない。

今回岡田幹事長は各選挙区の敗因を聞かれて「野党候補が一本化できなかった」とあたかも他の政党がまとめられなかったかのように総括している。

実は寄り合い所帯であり足元がまとまっていないことがわかる。労働組合や市民団体などが「党内」に乱立しており細かな村がいくつもあるような状態なのかもしれない。加えて執行部に指導力がなく全体としてまとまりがない印象を与えているのだろう。

和歌山1区は維新の勝利

二階俊博さんと世耕弘成さんの間に軋轢があるのではないかなどと言われていた。途中で岸田総理が襲撃されるという事件があり同情票が集まるのではないかという報道もあったが、結果的には維新が辛勝した。

関西での維新人気が本物であるということがわかったと言えるのかもしれない。維新は地方選挙でも議員・首長で600人以上を獲得する見込みで、関西での維新人気は定着したと言って良さそうだ。馬場代表は進退を賭けるとした目標を達成し胸を撫で下ろしている。次の課題は全国政党化だ。

千葉5区ではバックグラウンドに多様性のある異色議員が誕生

女性でウイグル系日本人という経歴の英利アルフィアさんが勝利した。ネットでは「河野太郎推し(河野太郎氏が熱心に支援している)」などと言われていたようだ。

自民党議員が政治と金の問題で辞職した後の選挙なので、野党には「ここは勝てるかも」と楽観視する声があったようだ。このためかえって野党がまとまらなかった。おそらく国民民主党に流れた票が少しでも集まっていれば立憲民主党が勝てただろう。国民民主党と維新の候補は同じくらいの得票だった。じわじわとではあるが関東でも維新への期待が集まっているとは言えそうだが、まだ小選挙区で勝てるほどの勢いにはなっていない。

英利氏には「二重国籍」デマがあったそうだ。ネットで一部の人たちが言っているだけだろうと思っていたのだが、調べてみるとかなり著名な「保守系知識人」の中にもそのような話を流していた人がいたようだ。一部がネットで過激化すると穏健派が離反するというのがアメリカの教訓なのだが、なぜか自民党候補がターゲットになるという不思議な状況になっている。

眠っている現役世代は目覚めなかった

今回、個人的に最も関心があったのは若年層・現役層の政治参加意識の変化だ。投票率は軒並み低調だった。無党派層が動いたという兆候は見られなかった。実は瞬間的に無党派層が動くと政権にかなり大きなダメージにになる場合がある。シルバー民主主義などと言われているが実は「眠っている現役層」の動向は政権交代に大きな影響を与えるのである。

一般的に日本は高齢者の方が選挙にゆくので高齢者に有利だと言われている。確かにそうなのだが、改めて総務省の資料をを見て驚いた。2009年の政権交代時の投票率が軒並み上がっている。特に変化が大きかったのは20代と30代だ。ところがよく見るとその後で高齢者の投票率が大きく下がっている。60代・50代・40代の意欲低下が顕著だ。

政権交代を通じて政権与党に懲罰を与えようとしたものの政治は特に良くならなかった。そのため政治参加に面白みを感じなくなってしまったのかもしれない。

政治参加意識の底は2014年なのだが、じわじわと投票率が上がっている年代がある。それが40代から20代にまで広がっている。現役世代に漠然とした不安が積み重なっている可能性がある。

では彼らはじわじわと政治参加意識を増しているのか。政権交代には関係がない参議院選挙にはそのような兆候がみられないことから「政権が交代しそうなら選挙にゆく」という人たちが一定数いることがわかる。

国民の政治参加意識は徐々に落ちている。たとえば、町村選挙戦では56%が無当選投票になっている。議員も町村選挙では3割が無投票当選し、定員を満たせない自治体も出てきている。

おそらく漠然とした不安を感じている人たちは選挙に行き始めているが「自民党が落ちてゆくところが見たい」というような懲罰的感情を持っている人たちはまだ目覚めていないようだ。

よく「若者に政治参加してもらおう」とする声を聞く。おそらくは「若者が政治に参加させることで現在の体制を承認してもらえるのではないか」という期待があるのだろうが、最近の維新や旧NHK党の躍進を見ると期待通りにはならない可能性が高いのではないかと思う。

いずれにせよ今回こうした「懲罰感情」で動く人はいなかったようだ。たとえば山口2区などでは「世襲が美味しい思いをするのはけしからん」という人たちがいても不思議ではない。実際には無党派層は岸さんを応援しなかったようだが、かと言って平岡さんへの支援が広がるということもなかった。

「寝ている彼ら」を刺激しないことが自民党の安定につながるのだろう。結果的に組織票に頼る立憲民主党が党内外をまとめきれなかったことで岸田政権の「逃げ切り」ということになった。茂木幹事長は「政権に前向きな結果だった」と総評している。

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